2018.05.11

経済産業省が後援する「私は自分の仕事が大好き大賞」という取り組みをご存知ですか?

2018年で第6回を迎えるこの大会では、職業を問わず、“アルバイト” “平社員” から “経営者”まで、輝いて働いている大人から「自分の仕事の素晴らしさ」「その仕事をなぜ好きになったか?」「その仕事をどんな価値だと感じているのか?」をそのままストレートに語ってもらい、自分自身が如何にその仕事に生きがいを感じ、自己実現を重ねながら日々を過ごしているかを作文で提出します。

建設業界、飲食業界、紙のリサイクル業、高校教師、料理人…様々な職業からの多数応募がある中で、その第4回大会では大阪のカツべ歯科医院で働く歯科助手の稲浦倫子さんが佳作を受賞されました。


マズローの欲求5段階説

歯科医院の経営セミナーや経営関連の記事では、スタッフのモチベーションを高める際に、”マズローの欲求5段階説”というフレームワークがよく引き合いに出されます。


マズローの欲求5段階説とは、人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が充たされるとより高次の階層の欲求を欲するというものです。

「スタッフさんのモチベーションを高めるためには、”他者から認められたい、尊敬されたい”という尊厳欲求を満たしてあげなさい。その上で、スタッフさんが仕事を通じて自己実現できるように…」とよく言われます。

なるほど・・・と思う反面、それでは具体的に何をすればよいのでしょうか?

今回の金山さんの受賞作文は、その『自己実現』までを歯科助手という仕事に重ねたよいケースです。仕事に自己実現を重ねる歯科助手が、どのような思いで歯科医療に取り組んでいるかを一人でも多くの歯科医療従事者に知ってもらうために、今回ご紹介いたします。


稲浦倫子さんの作文より(抜粋)


私は歯科助手という仕事が大好きです。歯科助手は私にとって天職です。

日本の歯科は世界的にもまだ遅れているところがあります。デンタル IQ の問題や歯科は痛いことや怖いことをされるという昔からのイメージが払拭されていません。虫歯になってからかけこむのが現状です。そうではなく普段から予防をしておけば治療費や治療も軽くて済むのです。予防より良い治療はないのです。歯科助手として、使命としてこの考え方を伝えていきたいです。

よく周りの人に職業は歯科助手だというと、歯科助手は資格がないので「歯科衛生士にはならないの?」と言われます。 歯科衛生士さんのお仕事も魅力的で尊敬もしますが、それでも私は歯科助手という仕事が大好きだからしているのです。

私は逆転の発想で、「資格がないからこそ、仕事の幅が広く、自由に羽ばたける」と思っています。型がないからこそ、嬉しい事に、限界が見えてきません。自分で仕事や枠を作れるということです。歯科助手という枠を飛び越えられるのも歯科助手なんです。


ですが、そのような想いに至るまでは様々な出来事もあり、職場を含め、多くの方に支 えられました。私はカツベ歯科クリニックに 19 歳のときに入局しました。入局するまでは自分に自信がなく、マイナスな思考しかありませんでした。

入局当時は「こんなにモチベーションの高い職場ってあるんだ。ついていけるのかなぁ...」自分との温度差が重荷に感じたり、仕事がうまくできず、無力な自分にイライラして「なんで私が雇って貰えたんだろう。カツベ歯科クリニックの恥でしかない...」と自信がなくて悔しい思いを沢山しました。毎日が失敗だらけで、帰っては、落ち込み、大号泣する日々が続きました。



ですが、ある日、待ち時間に患者様に雑誌をお渡しすると先生が「気が利きますね!」と言って下さいました。失敗ばかりだったので、誉めて頂いたことが、飛び上がる程、嬉しかったです。そして、業務の復習をしているときに院長が傍に来て、「そんなに難しいことじゃないよ。 金山君はいつも一生懸命だね」と言って下さったことが嬉しくて勇気がでました。言葉の影響力は絶大です。言葉はこんなにも人の心を救うパワーがあるのだと感じました。


入社して半年した頃、歯科助手サミットという歯科助手のセミナーに参加しました。



歯科助手サミットに出会うまでは「歯科助手は先生の指示されたことだけしていればよい」「資格がないから自信がない、自信がないから疑問に思ったことも発言し辛い」と思っていました。けれど、歯科助手サミットに参加して、この概念を覆されました。資格のない歯科助手だからこそ、歯科助手にしかできないことがあるとお聴きして、歯科助手の可能性は無限大なのだと考えが180度変わりました。先生や衛生士さんは患者さんと向き合うことに力を注いで頂いて、歯科助手にしか気を配れないことをサポートしてあげること が大切とお聴きしました。 そこから可能性が開いていき、少しずつ自信がつき、仕事が楽しいと思えるようになりました。


 それから、月日が経ち、私に可愛い後輩が数名できました。そして、私にアシスタントリーダーを任せて頂きました。後輩は私の入って間もない頃と比べると吸収が早く、淡々とこなす姿が本当に凄いと思いました。

そんな後輩のお手本になるようにリーダーとして、もっと頑張らないといけない。皆を引っ張っていかないといけない。完璧でないといけない。誰かから言われた訳でもないのに、そんな固定観念で頭はいっぱいになっていました。自分にムチを打っては、慣れないことに沢山チャレンジしていきました。


その時期の私は、自分への義務感や固定観念が強く、自分で自分をコントロールしようとし過ぎていました。些細なことが気になったり、人の言葉を深読みし過ぎていちいち傷付いたり、浮き沈みがかなり激しかったです。自分に期待を抱き過ぎて思考と目標が一致していませんでした。プライドばかりが高くなっていきました。失敗すると 「全て、自分の責任だ」「あの時こうしておけば起きなかったミスなのに...」「あの人ならもっとできるのに」と過去のネガティブな思考の癖がついつい出てしまいました。人と比べては落ち込み、比較の世界の住人でした。

それでも、「リーダーは期待されているんだから、もっと頑張らないと。」と誰かに言われている気がしました。自分にムチ打って、頑張り続けるしか方法が分からず、そのまま突っ走っていました。自分への期待と自己否定の繰り返しが続きました。空回りも多くなっていきました。


やがては、20 歳の頃に、心と体のバランスが崩れてしまい、燃え尽き症候群という名の鬱と睡眠障害を経験しました。その間もスタッフが親身になって話を聴いてくれ、支えてくれました。とても感謝しております。その後にストレスとの上手な付き合い方を勉強して からはストレスや感情をコントロールできるようになって無駄な力が抜け、自分の力を最 大限に発揮できるようになりました。そして、頑張ることを辞め、楽しむことにシフトしていきました。ストレスは人を成長させてくれるということを学びました。起きた全ての出来事に意味があって「過去があるからこそ今の自分がある」と心から自己肯定が出来るようになりました。

それからは、固定観念が外れ、頭のネジも外れ、心臓に毛が生え、潜在意識が開きまくってしまいました。ネガティブな自分とはおさらばし、ポジティブな自分に生まれ変わりました。

生きながら新しい自分に生まれ変わってしまいました。 カツベ歯科クリニックは天国の様な職場です。とても風通しがよく、上下関係を気にせず 発言しやすく、お互いを尊重、感謝し合える職場です。やりがいのある仕事はもちろんですが、やりがいのある職場です。ここで、人間関係や環境の大切さとありがたさを身に沁みて感じました。


歯科助手の最大限の魅力は患者さん、先生、衛生士さん、技工士さんの中立な立場であり、常に客観的な視点を養えることです。そして、先読みする能力や創造力も養われます。 患者さんや術者が何を考え、どういう想いで治療をしているのか歯科医院の中で最も人の気持ちに寄り添える立場です。歯科助手はコミュニケ―タ―なんです。スタッフ一人一人の性格を理解し、治療に対する想いやこだわりを汲み取ります。それぞれの視点を考えながらアシストをしています。そうすると、人の気持ちや価値観について考えられるように なりました。人として大切なことを養えたのではないかと思います。相手の視点になって、物事を考えられるようになるのでイライラすることがなくなったのです。これは、私にとって財産です。 そして、先生、衛生士さん、技工士さんはプライドを持ってお仕事をしています。そこで パフォーマンスを最大限に引き出すために環境を整えたり、術者目線になって、導線を円滑にするのも歯科助手の役目です。

そして、他院でメンタ―でもある歯科助手の先輩は副院長となり、歯科医院経営やマネジメントに携わっておられる方もいます。チーフとして医院のスタッフを引っ張ったり、育成している歯科助手の仲間もいます。そんな先輩や仲間がいることも誇りです。もし「歯科助手って資格がない職業じゃん」と思われたのならこのことを知って、歯科助手に可能性を感じませんか?



私はカツベ歯科クリニックで教えて頂いたこと、フォローして下さったことに感謝しております。この恩をスタッフ、後輩に受け渡してやっと感謝という言葉になると思います。 私は院長もカツベ歯科クリニックも大好きです。ネガティブで自信のない私を変えてくれ たのが歯科助手でもあり、今の職場です。

私は今、歯科助手の認定講師を目指して、学んでいます。講師になって、地元の大阪で歯科助手のプロの学校を開校し、キラキラ輝く歯科助手を増やします!出会った全ての人を輝かせ、幸せにします。

私は歯科助手という大好きなお仕事に出会えて最高に幸せです。

ここまで抜粋