2018.07.13

歯科医療は社会的価値の高い大切な医療であり、歯科医療で働く人々はこの社会になくてはならない存在です。

それでは、実際に歯科医療の中で働いている人々は、どのような想いを持ち、やりがいを感じて日々の仕事に向き合っているのでしょうか?

そこでd.Styleでは、今まさに歯科医療で輝いている方にスポットライトを当てて、今の仕事についてとことん本音を語っていただきました。


今回は日本顕微鏡歯科学会の認定衛生士で、吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック(東京・銀座)にて15年勤務している和田莉那さん。

やりたいことを探し求めた結果、尊敬する院長のもとでマイクロスコープとともに衛生士人生を歩んでいる、向上心にあふれた衛生士さんでした。



いまの働き方を教えてください

このクリニックでの勤務が丸15年になり、マイクロスコープを使い始めてからは10年以上になります。

吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニックでは、衛生士にメインテナンス専用の個室を与えていただいています。

メインテナンスの際には随時ドクターのチェックを受けることは少なく、衛生士が責任を持って処置にあたっています。

ただ、いくらマイクロといえど同じ人間が見続けると癖があるものですので、患者さんの同意が得られたら他の衛生士にも見てもらい、本当にカリエスはないのか、Pの状態はどうなのかを確かめ合いながら、おごることなく日々のメインテナンスにあたっています。


クリニックは自費診療のみなのですか

はい、保険診療は扱っていません。

自費はよくて当たり前ですので、患者さまにとって“プラスα の何か”があってこそ自己投資していただけるものなので難しい点もあります。

もちろん患者さまのご予算もありますし、院長の吉田(吉田格先生)は金儲け主義ではなく医療人ですので、いい悪いは置いておいて、保険である程度の治療をしてできないところだけをうちでやりましょうという考えも持っています。

保険診療を行うクリニックと役割分担をしているのがこのクリニックの立ち位置です。


マイクロスコープの最初の練習のコツはありますか

印刷された紙を覗いてみて、文字のピントなど、動かないものに対してピントを合わせる練習をしたり、文字を見ながらその文字をなぞる練習をしてみるといいかもしれません。

それによって距離感をつかむことができるようになります。あとは姿勢を正すことがとても大事だと思います。 

他には、ユニットに模型を噛ませて、動かないものに対していかに素早くピントを合わせられるかという練習をしました。

マイクロスコープには幾つか倍率がありますが、最初から拡大した倍率で始めてみるのもとてもいいと思います。

倍率が小さいと、患者さまにお見せする時に結局画像を拡大しなければならないんですよね。



和田さんのメインテナンスの流れを教えてください

アポイントは基本的には月に1回、毎回1時間をおとりしています。
毎回1時間とるわけではなく、口腔内の状況によって30分で終わることもあります。

まず始めに問診、日常でお変わりがないかのお話を伺います。いらっしゃる担当患者さまの年齢層はちょうど介護をされている層が多いので、生活環境の変化やご本人様のストレスを見るようにしています。

以前伺った内容メモに残して次回反復してお話すると「覚えていてくれているのね」と信頼にもつながりますから、その時間を5分から10分とります。

その後口腔内のチェックに移りますが、5分から7分ほどかけてヘッドマウントディスプレイでお見せしながら状況をご説明し、実際は主に録画機能を使用し、チェック後すぐに今回のブラッシング評価と改善点をポイント用紙に記入しつつ説明をおこなっております。

必要に応じてPMTC、TBI、ポケット内の洗浄などを行います。
1時間のアポイントのうちのケアの時間は20-30分ほどで、毎回のメインテナンスですべての歯に対してブラシをかけるということはほとんど行いませんね。

オーバーインスツルメンテーションにならぬよう、同一歯を毎回ケアする際には気遣っております。

毎回必ず顕微鏡をつかった処置中の撮影をしております。そのデータ自体をお渡しするということはしておりませんが、最後にポイントをまとめたものを書いてお渡しできるように準備します。 

お話をしたくて来ていただく方も多いですし、患者様にとってこのクリニックに来ることが、介護をおやすみする理由にしてもらったり、場所が銀座ですのでおめかしして来ていただける楽しみのひとつにもなればいいなと思っています。


1ヶ月ごとにメインテナンスを行うのに理由はありますか

はい、基本的にメインテナンスを任せていただいているのですが、以前院長に「なんでメンテナンスは3ヶ月なの?」と言われたことがありました。

考え直してみると、私が考える3ヶ月は、保険請求が3ヶ月おきというだけの理由なのではないかと気づいたんです。初診に戻すための、3ヶ月。

お口の中は毎日のように変わりますから、3ヶ月も待っていると何か起こった時に、なぜ起こってしまったのかその原因を判断しにくく、追求が難しいんですよね。

マイクロスコープを使っていると、本当によく見えるんです。例えばですが拡大して排膿しているのが見えてしまうと特に、3ヶ月も放っておけません。

そして何よりもそれを動画で実際に見ていただくと患者さんご自身が危機意識をもたれることが多いですね。その説明のツールとしても、顕微鏡は非常に有効だと思います。




マイクロスコープは後輩教育が難しそうですね

いまこのクリニックには、卒後15年でマイクロ歴10年の私と、卒後7年マイクロ歴10ヶ月の衛生士、卒後1年マイクロ歴がない衛生士、この3名の衛生士で診療にあたっております。

以前は衛生士学校卒後からすぐ勤務していた衛生士もおりましたが、一通り認定資格もとり、先述の通りこのクリニックには重度の歯周病の方は少ないので、歯周病を学び直したいということで昨年一般診療へと卒業しました。

このようにベテラン・中堅・新人の層で働いていますと、当然仕事量の差も歴然ですが担当衛生士によってやり方が違うのに同じ金額をいただくと患者満足度も下がります。

かつ、基本的には口腔内に意識が高い方が多いので、正直衛生士がして差し上げられることがないような患者様も多いですから、私たち衛生士の存在価値に迷いが生じることが出てくることもあります。

教育は理屈がわかっていないと教えられないことが多いので、あえて中堅の衛生士に新人教育をお願いするようにしています。

後輩の衛生士には漠然と与えられたものをしてもらうことに加えて、ある程度の目標を持ってもらうことで、このクリニックでしっかりと勤められる衛生士レベルにもっていってやるのが私の勤めですね。


「雇ってもらっている」という感覚

あくまでも私たちは経営者に雇われている身です。
なのに衛生士や看護師は「働いてあげている」と上から目線で思い込んでいる人が多いと思います。

私も28.9歳の頃そのような考えになって院長とぶつかりました。誰しもが通る道なのかもしれませんが、そこで挫折して辞めてしまうのは衛生士という資格がもったいないですから、「勤めさせてもらっている」「患者さんを担当させてもらっている」という考えだけは徹底して若い子には教えていきたいと思っています。


認定歯科衛生士について教えてください

このクリニックでは、院長のみではなく資格を持つ衛生士全員の賞状を掲示しています。

私は日本顕微鏡歯科学会に認定制度がない頃からマイクロを使っていましたので、実際に衛生士の認定制度が立ち上がってからすぐに症例を提出し資格を取得しました。

日本顕微鏡歯科学会での発表の様子


ただ、先ほどの衛生士は衛生士になってすぐにこのクリニックでの勤務を始めましたので、マイクロを使いこなすほうが早く(エントリーするのに卒後臨床経験3年以上という縛りがあった)なかなか認定資格をとれなかったんです。

すると患者様のほうから「◯◯さんもとても上手なのにどうして資格(賞状)がないの?」と聞かれるようになりました。
つまり、私たちが認定資格を持っているということ自体が、患者様にとっての安心になるということに気がつきました。

また、この衛生士は歯周病治療に携わるためこのクリニックを卒業しましたが、新しい勤め先の院長先生が、彼女が入ったことによってマイクロスコープの導入を決めていただいたそうです。

認定を持っているから雇っていただいたのか、たまたま雇った彼女がマイクロの認定衛生士だったからマイクロの導入を決めたのかはわかりかねますが、認定衛生士として素晴らしいことだと思います。

院長の吉田格先生と


向上心が強いですね

院長が向上心の塊のような先生なんです。いつまでも年齢に限らず新しいものにチャレンジする人って多くないと思うんですが、その刺激を与えてくれることがとても嬉しいです。

そして誰よりも健康オタクでぶれることなく、誰よりも女子力が高いと思っています。
栄養医学というものに出会って、栄養から改善すれば歯周病がよくなるかもしれないとか、歯科という狭く見えるジャンルの中でとても多くの可能性を広げられるということを教えてもらいました。

院長は暇さえあれば勉強しているので、私も患者さんから聞かれた時にしっかり応えられるように栄養医学についても勉強中です。全身まで目を届かせなければならず非常に難しいところではありますが。

私たちが目標を持てばアドバイスをいただきますし、病院としての補助もいただいて自分を高められるのはとてもありがたいと思っています。

あとは遊びもプライベートも大事にするという信念を持っています。遊びの中で得られるものがあるから、先々で受けたサービスや対応をよく見ているようにとこれも院長から教わりました。私にとって吉田先生と出会えたことが人生においてとても大きいです。


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