イギリスの小児におけるう蝕予防について No.6 『フッ化物を最大限に活用する』

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イギリスの小児におけるう蝕予防について No.6 『フッ化物を最大限に活用する』
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2019.10.30

現在日本では、8020運動や健康日本21などといった、さまざまな口腔の健康に対する政策が立てられています。

また、WHOにおいても、2003年に「2020年までの口腔保健に関する国際目標」が提示されるなど、世界中で口腔疾患を予防するための動きがみられます。

他の国ではどういった政策が立てられているのでしょうか?

この連載では、イギリスの保健省のひとつであるPublic Health England(英国公衆衛生庁)から2017年6月14日に発行された、イギリスの「Health matters: child dental health(健康問題:小児の口腔衛生)」というガイダンスについて解説していきます。

この取り組みから、イギリスの歯科事情について一緒に学んでいきましょう♪


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最新のレビューによると、0〜5歳児の口腔衛生を改善させるには、対象地域の子どもたちにフッ化物バーニッシュを塗布する方法が有効であると報告されています。

歯科医院外で行われるフッ化物バーニッシュの塗布は、ハイリスク集団を対象とした場合口腔の健康格差を緩和させるとのこと。

この計画の成功に影響するものとして、以下の4つがあげられています。
 ● 保護者や学校との関わり

 ● 幅広い口腔衛生の改善についてアドバイスする環境の確保

 ● 患者がフッ化物バーニッシュの塗布を受けたかどうかの情報が、確実に歯科医院に提供されるような仕組みづくり

 ● 年に2回のフッ化物塗布
PHEは、この計画にかかる投資額が、5年後には1ポンド毎に2.29ポンドのリターンになり、10年後にはそれが2.74ポンドにまで到達すると推計しました。

また、フッ化物バーニッシュ計画の対象となった地域では、5,000人の子どもたちにつき3,049日の登校日を増やす効果があるといいます。

フッ化物バーニッシュの塗布


フロリデーションについて

フロリデーションとは、水道水にフッ化物を添加し、適切な濃度に調整することをいいます。これは、子どもたちや親の行動を変化させずに、口腔衛生の改善を図ることができる唯一の介入方法です。

本来、すべての水には自然にフッ化物が少量含まれていますが、フロリデーションに最適なフッ化物濃度は1ppmとされています。この濃度は、う蝕罹患率と重症度を低下させるとのこと。

イギリスでは、1964年にバーミンガムではじめてフロリデーション計画が実際に行われました。この計画は、その後数十年のうちに、ほかの数多くの地方自治体や都市、または農村で急速に進められました。

もっとも高いう蝕レベルをもつ地域のひとつであるハルは、フロリデーションの導入がいちばん遅い地域だったようです。

フロリーデーションによる効果
フロリーデーションによる効果

この計画にかかる投資額は、フロリデーションの導入5年後、1ポンド毎に12.71ポンドのリターン、10年後にはそれが21.98ポンドにまで到達します。そして、10,000人の子どもたちにつき1,611日の登校日を増やす効果があるといいます。

フロリデーションは世界中で行われていますが、いまだに導入を検討している地域も存在します。その理由として、フロリデーションがうまく機能しないことや、人体に害を及ぼすおそれがあることが主張されています。

しかし、2014年のイギリスの健康モニタリングレポートでは、フロリデーションは地域社会全体に効果的な公衆衛生介入であるという結論がでたという報告があります。

香港やシンガポールでは、水道水の100%にフロリデーションが行われているなど、現在30ヵ国以上もの国がフロリデーションを導入しています。これからも、導入される国はますます増えていくかもしれません。

フロリデーション計画


まとめ

ガイダンスの最後には、「すべての子どもたちの口腔衛生を良くするには、幅広い社会のサポートや関与が必要である」と述べられています。

このガイダンスを通して、イギリスでは社会全体で「小児う蝕予防」に取り組んでいることがわかりました。
予防方法としては、幼稚園や小学校で毎日ブラッシングを行う計画や、歯ブラシの郵送、清涼飲料水への課税、フロリデーションなど、多岐にわたります。

また、すべての計画にかかる投資額とリターンが細かく計算されており、年々リターンが大きくなるであろうと推察される計画を実行しています。

このすべてを日本で行うことはむずかしいかもしれませんが、両親や保護者が子どもの口腔内への意識を高く持てば、日本でも積極的にう蝕予防を行うことはできるはずです。

歯科医療従事者である私たちは、予防の重要性だけでなく、予防することで「結果的に通院回数が減り、金銭的負担も少なくなる」というようなメリットも併せて伝えていくべきではないでしょうか。

そして来院時には、それぞれの患者さんが知りたいと思うような情報を、できるだけ提供するよう心がける。そのようにして、子どもたちや保護者が、みずから予防したいと思ってもらえるようなアプローチができれば、患者さんとの関係も良好に保てると私は思います。

海外事情に詳しい患者さんや、海外旅行が好きな患者さんには、ぜひこのガイダンスの内容についてもお話ししていただければと思います♪

6回にわたる連載、最後までお読みいただきありがとうございました!


参考文献:GOV.UK Public Health England(2017)「Guidance Health matters: child dental health」


イギリスの小児におけるう蝕予防について

No.5『口腔衛生の改善に効果的な介入』
No.6 『フッ化物を最大限に活用する』
この記事を書いた人
森 寛子 | 歯科衛生士

大阪出身の歯科衛生士歴10年目。歯科医療の社会的価値を高めるビジョンに強く魅力を感じ、WHITE CROSSへ参画。勤務先の歯科医院では、臨床実習生の指導を担当し、約3年間、歯科衛生士学校で非常勤講師を務めた。現在も歯科医院で、スタッフ教育と担当患者のメインテナンス業務を行なっている。



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