イギリスの小児におけるう蝕予防について No.5 『口腔衛生の改善に効果的な介入』

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イギリスの小児におけるう蝕予防について No.5 『口腔衛生の改善に効果的な介入』
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2019.09.24

現在日本では、8020運動や健康日本21などといった、さまざまな口腔の健康に対する政策が立てられています。

また、WHOにおいても、2003年に「2020年までの口腔保健に関する国際目標」が提示されるなど、世界中で口腔疾患を予防するための動きがみられます。

他の国ではどういった政策が立てられているのでしょうか?

この連載では、イギリスの保健省のひとつであるPublic Health England(英国公衆衛生庁)から2017年6月14日に発行された、イギリスの「Health matters: child dental health(健康問題:小児の口腔衛生)」というガイダンスについて解説していきます。

この取り組みから、イギリスの歯科事情について一緒に学んでいきましょう♪


これまでの記事はこちら
No.4『う蝕予防の方法』

イギリスの小児におけるう蝕予防について


口腔衛生の改善に効果的な介入

多くの論文で、口腔衛生を改善するための介入が報告されています。

その中でも、PHEは、臨床的な効果と費用対効果をあわせもつ、5歳児のう蝕レベルを減少させる計画に注目しました。


幼稚園や学校でのブラッシング計画

1日2回のブラッシングの際にフッ化物入りの歯磨剤を使用することは、子どもたちのう蝕発生率と重症度を低下させることにつながります。

しかし、貧困地域に住む子どもたちは、ブラッシングを1日に2回しないこともあるとのこと。

そこで考えられたのが、子どもたちにとって適切な支援ができる環境を提供するということです。それは、幼稚園や小学校で、子どもたちが歯磨きプログラムに参加することや、歯のブラッシング方法について指導を受けるといった内容です。

イギリスでは、ブラッシング後、うがいせずに唾を吐くだけにすることが推奨されています。

幼児や小学生の集団において、2年間毎日学校でブラッシングを行うことは、う蝕予防に効果的であり、口腔の健康を保つための習慣を確立することができます

幼稚園や学校でのブラッシング計画


さらに、ブラッシング活動を実施している学校は、子どもたちのホームケアについてもサポートするべきといいます。

このようなブラッシング計画は、口腔衛生レベルが低い子どもたちが住む地域の保育園や小学校のためにあると考えられています。とくに、幼児期におけるブラッシング計画は、“簡単に導入可能”と報告している研究もあるようです。

PHEは、この計画にかかる投資額が、5年後には1ポンド毎に3.06ポンドのリターンになり、10年後にはそれが3.66ポンドにまで到達すると推計しました。

そして、5,000人の子どもたちにつき2,666日分の登校日を増やす効果があるといいます。

口腔衛生の改善に効果的な介入
口腔衛生の改善に効果的な介入


郵送による歯ブラシと歯磨剤の提供

イギリスでは、郵送で歯ブラシと歯磨剤を提供することは、貧困による不平等さを改善できる介入のひとつと考えられています。親がブラッシングの習慣を正しく身につけることで、子どもの乳歯についても、萌出後すぐにブラッシングをはじめるという行動につながります。

さらに、地域医療保健士の参加によって、一貫性のある指導ができるようになると、この計画の確実性が高まります。

ほかにも、高いう蝕レベルをもつ子どもを対象にすることや、フッ化物入り歯磨剤の使用をすることで、効果を高めることができます。
計画を実行するときに考慮すべき事項

 ● 計画を実施する期間
 ● 郵便配達の頻度
 ● 開始時期と口腔衛生についての情報やアドバイスの提供
PHEは、この計画にかかる投資額が、5年後には1ポンド毎に1.03ポンドのリターンになり、10年後にはそれが1.54ポンドにまで到達することを推計しています。

そして、5,000人の子どもたちにつき1,025日の登校日を増やす効果があるといいます。

さらに、地域医療保健士の参加があった場合は、5年後には1ポンド毎に4.89ポンド、10年後には7.34ポンドのリターンがあるとのこと。

また、5,000人の子どもたちにつき2,566日の登校日を増やす効果があるといい、地域医療保健士の参加は、この計画の費用対効果を向上させるといわれています。




まとめ

日本の幼稚園や小学校でも、1年に1回程度の頻度で、子どもたちに向けた歯科保健指導が行われます。しかし、昼食後のブラッシングについては、毎日できていない子どもたちがいるのが現状です。

2年間、毎日通っている幼稚園や小学校でブラッシングを行っていれば、自然に子どもたちの生活にブラッシングが定着します。また、ホームケアについてのサポートが適宜行われることで、自宅で仕上げ磨きをしてもらえない子どもたちでも、自分の口腔内を守ることができます。

また、郵送によって無料で歯ブラシと歯磨剤を提供するというサービスも魅力的です。

貧困レベルに関係なく、すべての子どもたちが健康な口腔内でいられる環境をつくることも、私たち歯科医療従事者の大切な仕事のひとつかもしれません。


参考文献:GOV.UK Public Health England(2017)「Guidance Health matters: child dental health」


イギリスの小児におけるう蝕予防について

No.5『口腔衛生の改善に効果的な介入』
この記事を書いた人
森 寛子 | 歯科衛生士

大阪出身の歯科衛生士歴10年目。歯科医療の社会的価値を高めるビジョンに強く魅力を感じ、WHITE CROSSへ参画。勤務先の歯科医院では、臨床実習生の指導を担当し、約3年間、歯科衛生士学校で非常勤講師を務めた。現在も歯科医院で、スタッフ教育と担当患者のメインテナンス業務を行なっている。



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