歯科衛生士向けおすすめ論文 No.7「う蝕予防に効果がある歯磨剤のフッ化物濃度は?」

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歯科衛生士向けおすすめ論文 No.7「う蝕予防に効果がある歯磨剤のフッ化物濃度は?」
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2019.09.10

歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?

歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。

ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?

「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。

このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!

歯科衛生士向けおすすめ論文


さまざまなフッ化物濃度の歯磨剤を比較した論文

今回解説するのはこちらの論文です。
う蝕予防のためのさまざまなフッ化物濃度の歯磨剤
『Cochrane Database of Systematic Reviews』
こちらの論文は、イギリスに本部をおく「コクラン」という団体がもつ膨大なデータベースの中で、とくに信頼性が高い論文を集めて研究したシステマティックレビューです。

*システマティックレビューについては、こちらの記事で説明しています。
(参照:歯科衛生士さん向けおすすめ論文 No.5「歯磨剤の使用はプラーク除去に本当に効果的なの?」

この研究は、2018年までに発表された、さまざまな濃度のフッ化物含有歯磨剤における効果を比較した研究を集め、信頼性の高いものだけを抽出し、その結果を分析したものです。


どんな方法で調べている?

この論文では、コクランがもつデーターベースをはじめ、さまざまなデータベースを調査しました。その中でも、フッ化物含有歯磨剤を用いたブラッシングと、フッ化物含有なし、または異なる濃度のフッ化物含有歯磨剤を用いたブラッシングを、最低1年フォローアップした信頼性の高い分析を行っている96本の研究結果を選択。

ほとんどの研究では、被験者が3年にわたって同じ歯磨剤を使用した後の状況を評価していました。

フッ化物含有歯磨剤を用いたブラッシング


フッ化物含有歯磨剤の効果がでる濃度は○○○○ppm?!

あらゆる年代における、さまざまなフッ化物濃度の効果について紹介します。


幼児の乳歯における研究

フッ化物含有なしの歯磨剤より、1,500ppmのフッ化物含有歯磨剤を使用してブラッシングを行った方が、う歯の数は減少していました。しかし、1,055 ppmと550 ppmのフッ化物含有歯磨剤では結果が変わらず、1,450ppmと440ppmのフッ化物含有歯磨剤を比較すると、1,450ppmの方が、う歯の数はわずかに減少していたようです。


小児と成人の永久歯における研究

フッ化物含有なしの歯磨剤より、1,000〜1,250ppm、または1,450〜1,500ppmのフッ化物含有歯磨剤を使用してブラッシングを行った方が、う歯の数は減少していました。また、1,450〜1,500ppmの歯磨剤は、1,000〜1,250ppmの歯磨剤よりもさらに、う歯の数を減少させることがわかったようです。

さらに、1,700〜2,200ppm、または2,400〜2,800ppmのフッ化物含有歯磨剤と、1,450〜1,500ppmの歯磨剤では、う歯の数は変わりませんでした。また、その他の濃度の歯磨剤における効果についてのエビデンスは、あまり正確ではなかったようです。


成人の永久歯における研究

フッ化物含有なしの歯磨剤より、1,000または1,100ppmのフッ化物含有歯磨剤を使用してブラッシングを行った方が、う蝕面の数は減少していました。

このように年代によって結果はバラバラですが、上記の結果をまとめると、以下のことがいえます。
 ● フッ化物含有歯磨剤は、う蝕予防効果がある。

 ● 1,450〜1.500ppmのフッ化物含有歯磨剤は、それ以下の濃度よりもう蝕予防の効果が高く、それ以上の濃度になっても結果は変わらない。

この研究に対する考察

フッ化物がう蝕予防に効果的であることは周知の事実ですが、適切な濃度についてまで知る機会は少ないのではないでしょうか。

現在、日本で販売されている歯磨剤の中では、1,450ppmがもっとも高いフッ化物濃度であり、6歳以上であれば使用可能とされています。

しかし、日本口腔衛生学会のフッ化物応用委員会が提唱している「フッ化物配合歯磨剤に関する日本口腔衛生学会の考え方」の中では、15歳未満の場合、1,000ppmの歯磨剤の使用が推奨されています。

また、この論文でも、さまざまな濃度のフッ化物含有歯磨剤の効果について検証する一方で、最後は「幼児のためのフッ化物含有歯磨剤の選択は、フッ素症のリスクを考慮するべきである」としめくくられています。

幼児の乳歯における研究では、1,450ppmのフッ化物含有歯磨剤が、440ppmの歯磨剤よりわずかに高い効果がみられただけで、あまり濃度間で結果の差はなかったと考えられます。フッ素症のリスクをあわせて考えれば、幼児にとっては500ppm程度のフッ化物含有歯磨剤を使用するだけでも、十分なう蝕予防になるのかもしれません

そう考えると、日本口腔衛生学会が推奨する指標は、世界中の論文を集めたシステマティックレビューの結論にそった内容といえるでしょう。

歯科衛生士としては、信頼性の高い情報を得た上で、患者さんの年齢にあわせた適切なフッ化物濃度の歯磨剤を提案できるといいですね!


***


いかがでしたか?

毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。

自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです!


参考文献:Walsh T, Worthington HV, Glenny AM, Marinho VC, Jeroncic A.(2019)「Fluoride toothpastes of different concentrations for preventing dental caries」『Cochrane Database of Systematic Reviews』2019 Mar; Cochrane Review Group


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この記事を書いた人
森 寛子 | 歯科衛生士

大阪出身の歯科衛生士歴10年目。歯科医療の社会的価値を高めるビジョンに強く魅力を感じ、WHITE CROSSへ参画。勤務先の歯科医院では、臨床実習生の指導を担当し、約3年間、歯科衛生士学校で非常勤講師を務めた。現在も歯科医院で、スタッフ教育と担当患者のメインテナンス業務を行なっている。



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