イギリスの小児におけるう蝕予防について No.2『小児う蝕がもたらす影響』

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イギリスの小児におけるう蝕予防について No.2『小児う蝕がもたらす影響』
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2019.06.24

現在日本では、8020運動や健康日本21などといった、さまざまな口腔の健康に対する政策が立てられています。

また、WHOにおいても、2003年に「2020年までの口腔保健に関する国際目標」が提示されるなど、世界中で口腔疾患を予防するための動きがみられます。

他の国ではどういった政策が立てられているのでしょうか?

この連載では、イギリスの保健省のひとつであるPublic Health England(英国公衆衛生庁)から2017年6月14日に発行された、イギリスの「Health matters: child dental health(健康問題:小児の口腔衛生)」というガイダンスについて解説していきます。

この取り組みから、イギリスの歯科事情について一緒に学んでいきましょう♪
(前回はこちら:イギリスの小児におけるう蝕予防について No.1『小児のう蝕罹患率』

イギリスの歯科事情


不十分な口腔衛生が子どもと家族に与える影響

このガイダンスでは、「不十分な口腔衛生は、子どもの健康だけでなく、子どもたちや家族の幸せにも影響する」といわれています。

歯に痛みがある子どもは、食事や睡眠だけでなく、人とのコミュニケーションもむずかしくなる可能性があるとのこと。

また、イギリスでは、5歳児の4分の1がう蝕に罹患しています。そのため、歯の治療が必要な子どもは小学校へ入学しても、学校を欠席しなければいけないかもしれません。そうすると、親は子どもを歯科医院や病院に連れていくため、仕事を休む必要が出てきます。

したがって、口腔衛生環境を整えることは、子どもの全身的な健康につながるだけでなく、小学校への入学準備においても重要であると考えられているようです。

イギリス政府のホームページより dStyle編集部改変
イギリス政府のホームページより dStyle編集部改変

多くの子どもたちは、病院に行き、回復するまでの間、学校を欠席することになります。結果的に子どもたちのほとんどは少なくとも2日間、一部の子どもでは15日間も学校を欠席したとのこと。

学校を欠席した日は、子どもだけではなく、その家族にも影響が出ます。子どものう蝕による影響で、41%の保護者が何日も仕事を休むことになったといいます。


健康や社会問題のマーカーとなる口腔衛生

イギリスにおいて口腔衛生は、肥満や栄養不足といった、健康または社会問題のマーカーとしてみられています。

肥満や貧困と、う蝕の関連は明らかになっていません。しかし、貧困および糖類の大量摂取は、う蝕や肥満のリスクファクターとなることが知られています。

そのため、糖摂取を減らす取り組みは、どちらにも影響をあたえる可能性があると考えられています。

また、文献によると、口腔衛生が悪い子どもは、「歯科医療ネグレクト」などの問題を抱えていることを示唆しているとのこと。

「歯科医療ネグレクト」とは、やむを得ない事情があるわけではないのに、保護者が被保護者に(たとえば親が子に)適切な歯科医療を受けさせないことをいいます。歯科医療ネグレクトは、「子どもの口腔内および全身的な健康、または成長に、重篤な障害をもたらす可能性が高い」といわれています。


小児う蝕の患者さんがもつリスク

乳歯に大きなう蝕をもつ子どもは、永久歯のう蝕リスクも増加します。そして、治療を受けた歯は、一生を通してメインテナンスが必要となります。

また、全身麻酔下での歯科治療については、症例数としては少ないものの、子どもの命に関わる合併症や、死にいたる可能性をもち合わせています。

2010年にThe Global Burden of Disease studyで発表されたデータでは、イギリスにおける5〜9歳児の能力障害は、口腔衛生状態の悪さによって起こっていることが判明したとのこと。

このデータによると、口腔衛生状態が悪いために、5〜9歳の子どもの健康的な生活が平均2.24時間失われたとのこと。これは、視力喪失(1.64時間)、聴力喪失(1.77時間)、およびII型糖尿病(1.54時間)のレベルを優に超えています。

小児う蝕の治療


まとめ

本ガイダンスには、小児う蝕がおよぼす影響や、患者さんがもつリスクについて、たくさんのことが書かれています。

人間の五感である視力や聴力の喪失よりも、口腔衛生状態の悪さによって、子どもの健康的な生活は失われます。それにともなって、子どもだけでなく、家族全体の幸せにも影響がおよんでしまうようです。

一方で、保護者による歯科医療ネグレクトが原因で、口腔衛生状態が悪くなってしまう子どもがいるのも事実。

歯科衛生士にとっては、患者さんの背景をどこまで理解できるかが、メインテナンスへつなげるポイントになるのではないでしょうか。

一人でも多くの小児う蝕を予防するには、子どもだけでなく、保護者に対する口腔衛生指導も必要不可欠なのかもしれません。

次回は、イギリスが小児う蝕の予防をすすめる理由についてお伝えします♪


参考文献:GOV.UK Public Health England(2017)「Guidance Health matters: child dental health」


イギリスの小児におけるう蝕予防について

No.1『小児のう蝕罹患率』
No.2『小児う蝕がもたらす影響』
この記事を書いた人
森 寛子 | 歯科衛生士

大阪出身の歯科衛生士歴10年目。歯科医療の社会的価値を高めるビジョンに強く魅力を感じ、WHITE CROSSへ参画。勤務先の歯科医院では、臨床実習生の指導を担当し、約3年間、歯科衛生士学校で非常勤講師を務めた。現在も歯科医院で、スタッフ教育と担当患者のメインテナンス業務を行なっている。



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