2018.10.30

読者の皆さま、はじめまして。歯科衛生士の長内香織と申します。

歯科衛生士のみなさんは、日々の臨床の中でこのようなことに悩んだ経験はありませんか。

患者さんに真剣に指導したいのに、なかなか聞く耳を持ってもらえない。
仕事は続けたいけれど、患者さんやスタッフとの人間関係が…

実は、歯科衛生士に必要な知識や情報、歯科衛生士の役割を、医師の立場から発信している先生方がいらっしゃいます。

この記事では、様々な専門の医師の先生方に、普段聞けない知識や情報を対談形式でお聞きします。

日常の臨床に活かせるヒントや、みなさんが持つ悩み解決のきっかけを見つけていただければ嬉しいです。

第2回は精神科医の西大輔先生


うつ病の“予防”をテーマに数多くの出版や講演会をされている西先生。

社会人としてはたらく上で、切っても切り離せないのが人間関係。特に少人数で運営している歯科医院では、人間関係が大きな悩みのタネになることも少なくありません。

今回の対談では、歯科でイキイキとはたらくコツについてうかがいました。

時代の流れと歯科ではたらくこと

長内:現在歯科業界は人手不足なんです。歯科衛生士学校を卒業して、就職する人が6,481名*
求人人数は136,418名もいるので、有効求人倍率が約21倍。それにもかかわらず、離職率が50%なんです。

西先生(以下敬称略):えー!かなり人材不足ですね…

離職率が高いというのは、どういったことが原因なんですか?

長内:離職の理由は、結婚や子育てなどのライフイベントによるものもあります。しかし、人間関係やはたらく環境の問題だったり、やりがいをもてないといった悩みを抱えている歯科衛生士が離職してしまっています。

また、時代の風潮として、“悩みを乗り越えて頑張る”といったことよりも、“ワイワイ楽しく仕事をする”といったことを重視する人が多いことも関係があるのではと思います。
* 全国歯科衛生士教育協議会資料


“楽しく仕事をする”という話

西:仕事には「Job(経済的な報酬)」「Career(自分の進歩)」「Calling(やりがい、使命感)」といった意味があります。この3つのどれが、今の自分にとって大きな割合を占めているのか、ということを知っておくことが重要です。

たとえば、もしCareerを重視する人であれば、ワイワイと楽しむことよりも、昨日できなかったことが今日できる、ということが喜びにつながるでしょう。そこにやりがいを感じ、楽しみに感じると思います。

長内:本当にその通りだと思います。私の場合、お給料(Job)だけの問題ではなくて、患者さんからいただく感謝の言葉だったり、院長からの励ましの言葉が活力源になっています。

ただ、そんな中でも悩むことはあると思うのですが、その対処法や予防法はあるのでしょうか。

西:悩みについて、人間のストレスに焦点をあてると、“何を報酬と感じるのか?”というのが人によって変わってきます。

もちろん給料が上がれば嬉しいですが、不満があるたびに上げてもらえるというのは現実的ではないですよね。そうすると多くは“心理的報酬”というものを得られるかどうかで、はたらきやすいかどうか、続けられるかどうかかが変わってくるんです。

たとえば一般企業の場合、上司の方から「おはようございます」「ありがとう」といった挨拶をもらえるということで、はたらきやすさは随分違ってきます。

歯科衛生士さんの場合、“心理的報酬”には患者さんから得られる部分と、上司や同僚から得られる部分があるでしょう。

長内:すごくそれ感じます!心のこもった挨拶は、本当にパワーをもらえます。ただの挨拶ではなく、おたがいに元気づけ合うという気持ちをこめた挨拶をし合える職場って素敵ですよね。

今の職場は幸い院長がそういう考えを持っていますが、必ずしもそうでない歯科医院も多いと思います。スタッフからでも、共有して意識していくことが重要なのではと思います。





ディズニーでも行われるジョブクラフティング

西:確かに、院長先生(他人)を変えるというのは難しいですからね。
しかし、他人を変えなくても自分の意識を変えることはとても大切で、その一つにジョブクラフティングという方法があります。

たとえば、ディズニーリゾートのカストーディアルキャストは、清掃以外にもゲストに道を案内したり、写真をとってあげたりします。それは本来業務ではないけれど、本人のやりがいやモチベーションを上げる要因になるのです。

歯科衛生士さんであれば、たとえば診療が終わった患者さんにマッサージをしてあげたり。
マッサージを覚えるひと手間、してあげるひと手間はあるけれど、それ以上に患者さんからのフィードバックがあることで、自分のやりがいにつながります。

自分に任された裁量の範囲内で、仕事のやり方や進め方を自分で作り出していく

これは一見大変そうに見えるけれど、裁量権がない仕事というのはかなりストレスになります。自分で仕事をクリエイトする方がやりがいも高まり、楽しみも生まれてストレスが下がります。




“柔軟さ”をもってはたらくこと

長内:歯科衛生士の仕事は医療なので、医院によって期間は違いますが、自由にやっていいよと裁量権を得られるまで、ある程度の経験が必要になります。

しかし、アシスト業務や受付業務ではなく、歯周治療やメインテナンス業務だけを希望する歯科衛生士さんも少なくないと思います。

ジョブクラフトの考えでどの仕事にも楽しくやりがいを感じられるような“柔軟性”を持てると、ストレスととらえなくなりそうですよね。

西:“柔軟さ”、って本当にキーワードです。ではなぜアシストはいやだ、と思う歯科衛生士さんが多いんでしょう?

長内:欧米では、診療補助業務は別の職種であるデンタルアシスタントの仕事なんです。そのため、歯科衛生士は歯周治療とクリーニングしか行いません。しかし、日本では歯科衛生士の業務の一つに入っています。

日本もそのような体制になることが理想だと思うのですが、法律で歯科助手は直接患者の口腔に触ることができないことになっています。

それゆえ、残念ながら歯科衛生士が歯周治療とメインテナンス業務だけに集中できる医院はまだまだ少ないです。私は自分の担当する患者さんにどのような治療が行われているのかを知り、メインテナンスに活かそうという気持ちでアシスタントにつかせてもらっています。

西:なぜ診療補助業務に関心が持てない歯科衛生士さんが多いんでしょう。

もしかしたら、自分に対して直接的に感謝をもらえないとやりがいを感じられないのかも。必要以上に自己評価が低いのかもしれません。

これはすべてのことに言えるのですが、ストレスは自分を映す鏡です。同じことが起こっても、それに対して全員がストレスに感じるわけではないし、どういう風に感じるかも人それぞれです。

それを深掘りしていくと、自分の特性が見えてきます。固定した考えを持っていたからストレスに感じていたんだと気付いて、柔軟性につながります。




自分と上手に向き合う方法

長内:結局は自分を知る、向き合うということが大切なんですね。

西:そうです。私はよく、「自分の専門家になりましょう」と言うのですが、自分のことって皆さん結構わかっていない。

たとえば、電車が遅れた時にイライラする時というのは、遅れた電車のせいにしている時です。電車がこないから悪いと。しかし、そのプラットフォームにいる人全員がイライラしているかと言われればそうではない。

電車が遅れたというのは“きっかけ”であって、そういう方は、きっと他の“きっかけ”でもイライラしてしまっていると思います。

もしかしたら、○時までに着かないといけないのに、相手を待たせてしまったら…と思ってイライラしてしまっているのかもしれません。それではなぜそう思ってイライラしてしまうのか…と考えると、完璧主義な自分がみえてきます。

アシスト業務が「いやに決まってる」と思うのはなぜなのか?そういう部分に気づいていれば、他の選択肢が見えてくる。まずは自分を見ることが重要です。

長内:自分を知るために自分を見るのですね。自分を知って自分を活かす。気づきが得られると、さらなる成長が見られる気がしますね。


やりがいを持って働くということ、そうなれれば楽しいのだけれど、その「やりがい」をどう見つけていいかわからないとモヤモヤ過ごしてしまっている歯科衛生士も少なくないと感じます。 

ストレスや困難にぶつかってしまった時、自分は何故この出来事をストレスと感じてしまうのか、どのような結果を求めているのか、まずは自分と向き合うということを行なってみてはいかがでしょうか。 

先日、クインテッセンス社の日本国際歯科大会に参加しました。歯科衛生士の会場はどこも立ち見で、熱心な歯科衛生士さんが多く、素晴らしい会場の雰囲気でした。熱量の高い歯科衛生士がこんなにもいるのです。 

一方で、歯科衛生士の仕事の素晴らしさを気づく前に離職してしまうのは、非常に残念なことです。 何か悩みがあれば、少し立ち止まって自身と向き合い、柔軟に考えるという方法を身につけてみましょう。

西先生のおっしゃる「自分の専門家」になることで思考の修正ができそうですね。

まずは、少しずつでも心理的報酬を得られるよう、そして与えられるようになりたいものです。私自身も西先生に学んだことを、医院のスタッフ全員で共有し、反映できることから始めてみたいと思います。


西大輔先生プロフィール


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