2018.06.07

岐阜県の土岐市に、日本でも珍しい歯科衛生士さん用のチェアーが置かれた医科のクリニックがあります。

そのクリニックは、神経内科を専門としており、毎月約1,000名の認知症患者さんが来院します。その中の約100名の患者さんが、口腔ケアを受けています。

今日は、そんなクリニックで働く歯科衛生士のKさんに、歯科医院ではない環境でのお仕事についておうかがいしました。



Kさんは、東海地方の歯科衛生士学校を卒業後、岐阜県内の歯科医院にて臨床経験を積みます。
その後、結婚・出産を経て復帰され、現在はフリーランスとして働かれています。

Q.医科のクリニックでの口腔ケアというお仕事、戸惑いはありましたか?
お話をいただいた最初は、「えっ?どういうこと?」となりました。
歯科衛生士の私が、医科のクリニックにどう関わって、何ができて、何をするか、さっぱりでした。具体的なことが思い浮かばなかったので大混乱でしたね。

こちらで働き始めてから4ヶ月が経ちますが、普通の歯医者の延長線上の部分もあるし、そうではない部分もあります。

認知症もそれほどではなくて、割と歯に対する意識も高めの方への対応は、歯科衛生士用のチェアーもあるので歯科医院の延長線上にある感じです。

全く違うのは、口腔ケアの受診が、患者さんご自身の意思によるものではなく、ご家族がお連れいただくので…ご家族主体というか。
歯科医院で行われる歯科医療より、一歩患者さんの生活に踏み込んだ歯科医療というイメージですね。

正直、こちらで向き合う患者さんは、歯科医院でいうところの治療が必要な人ばかりなんです。最初は、欠損放置はよくないよね…とか思っていました。

ここにいてできることは、1ヶ月に1回の口腔ケアと、ホームケアについての指導。

歯科衛生士としては、「早く歯科医院に行ってください」と言いたいけれども、なかなか強く言えないというのが悩みでしたね。経験を積んだ歯科衛生士であればあるほど、最初は無力感を感じるかもしれません。


ただ、口腔ケアにより口を清潔にすることが患者さんに与える価値は、虫歯を全て治して補綴物を入れるという歯科医院での歯科医療とは少し違う物だと感じ始めています。

これから先、認知症の患者さんへの対応や、全身疾患についてなど、いろいろ覚えなければいけないと思っています。

Q.歯科医院の患者層と、認知症クリニックの患者層に違いはありましたか?
最初は、歯科医院の患者さんの口腔内と比べるとビックリでした。
正直申し上げて、相当ひどいです。口腔内が綺麗な人がいれば奇跡というイメージです。

しかし、何回か口腔ケアをさせていただくにつれ、ずいぶん変わられる患者さんもいます。
最初は「歯なんてどうでもいい」という患者さんだったのが、口腔の大切さや、ご自宅で何ができるかということを家族にもご本人にも説明をしました。

そうすると2回目お越しいただい際には、がらっと意識が変わっており、「来る前に2回も歯を磨いてきたのです」という患者さんもいらっしゃいます。

この環境にきて、私の知っている歯科医院という環境は、歯科医療を必要としている患者さんの氷山の一角だったということに気づかされました。出会えさえすれば変われる人がいることを知り、うれしかったです。

Q.今の環境でのやりがいは何ですか?
ご本人や家族さんが変わることが、やりがいですね。
正直なところ、それこそ大きく変わる方もいれば、全く変わらない方もいます。

変わらない方であっても、ご家族のお力添えが得られなくても、少しずつでも話をしていくことで、「今日、歯医者に行ってきたよ」というような言葉をもらったり、すごく頑固な方が変わってきたりします。

ちょっとでも変わってきてくれればうれしいですね。

歯科衛生士にも色々な分野があり、人それぞれに好き好きがあると思います。

歯科衛生士として働き始めて年月が経ち、結婚・出産を終えたその先、どう働いていくかを考えていくと、新卒の子とは違う目線になります。
私たちにとって、医科クリニックでのキャリアは将来を見据えた選択肢の一つとしていいかなと思います。