感染管理アドバイザーの視点から 第1回 『洗浄・消毒』の種類を知っていますか?

はじめまして。L.clare(ラ・クレア)の高野と申します。

現在は歯科衛生士として歯科医院に勤務しながら、感染管理アドバイザーとしてセミナー講師や院内研修のお仕事をしています。

院内研修では、新規開業時の器具機材の準備や、消毒滅菌の正しい方法をお伝えしたり、昔からのやり方を改善したいなどといった、クリニックにおける感染管理の問題点を解決するお手伝いをしています。

今月から感染管理のことをメインにゆるりと連載をさせていただくことになりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。

第1回目は、器具の『洗浄・消毒』についてです。

院内研修で機材整備を行ったクリニックの消毒コーナー
院内研修で機材整備を行なったクリニックの消毒コーナー

『洗浄・消毒』の種類を知っていますか?

みなさんは普段どのように器具の洗浄消毒を行なっていますか?

私たちが患者さんに使用した器具を滅菌して再び使用する上では、まず正しく洗浄・消毒ができているかということが非常に重要です。

どんなに最新の滅菌器を使用しても、滅菌をかける前に正しい洗浄・消毒ができていなければ、器具はきちんと滅菌されません。

洗浄の際に取りきれなかった血液、タンパク質などの有機物、使用した洗浄剤が器具に残ったまま滅菌をかけてしまうと、それらが器具に焼き付いてしまい、その汚染物を取りきるのがさらに困難になってしまいます。

そして、洗浄・消毒を行なう方法にはいくつか種類があり、それぞれ注意する点が異なります。

洗浄の種類と選択方法

まず『洗浄』は、「用手洗浄」・「浸漬洗浄」・「超音波洗浄」・「ウォッシャーディスインフェクター(以下、WD)」の4種類に分けられます。

用手洗浄」は皆さんが最も多く行なっている洗浄方法ではないでしょうか。

この方法は目視できる汚染の除去がメインですが、鋭利な器具や複雑な形状の機材は困難です。

また、手作業による洗浄方法のため、刺し傷のリスク、手技のバラつきがありますし、器具のすすぎ、乾燥などを含め作業時間の捻出が必要です。

次に「浸漬洗浄」は、洗浄液の入った容器に器具を浸漬して洗浄を行なう方法です。

この方法は血液や体液などの目視できない付着物の除去が可能ですが、浸漬不可能な器具もあるので、あらかじめ確認をしましょう。

浸漬洗浄に使用する洗浄液は、適切な濃度、温度、時間管理が重要で、洗浄液の管理と処分にも留意が必要です。こちらも用手洗浄と同様に、作業者による手技のバラつきが起きやすい方法です。

超音波洗浄」は凝固した血液、体液、目視できない付着物や微細な器具の洗浄に適しており、キャビテーション効果で得られた微細な気泡により、洗浄効果を発揮します。

そのため、ゴムやシリコーンなどの軟性のものはキャビテーション効果を吸収してしまうため、超音波洗浄には適しません。

そして、空気中のちりやゴミ(=エアロゾル)により、汚染が拡散する可能性があるので、必ず超音波洗浄器の蓋は閉めて洗浄を行ないましょう

「超音波洗浄」の場合、機器によって一定の効果が得られますが、こちらも洗浄液を用いる場合は濃度と温度、そして時間の管理が必要です。新しい水や洗浄液を入れた際は、液体中の空気を除去するために器具を入れる前に一度、作動させましょう。

最後に「WD」です。こちらは基本的には器材全般に対応しており、目視できない付着物の洗浄が可能です。

また、洗浄液の用意も必要なく、洗浄・すすぎ・熱水消毒・乾燥までを全自動で行なうことができるので、機器による一定の効果が得られます。

そのため、ランニングコストを抑えることができ、作業者の刺し傷が起こるリスクも軽減されます。

メーカーや機種にもよりますが、おおよそ80〜90度前後の熱水で消毒を行なうため、高温に耐えられない器具機材には使用できません。また、金属製の歯科用ハンドピースであっても、使用不可能なものがあります。

写真にあるように、洗浄可能マークのあるものはWDに入れることができますが、このマークのないハンドピースは、高温には耐えられても水洗ができませんので、確認が必要です。

洗浄可能マークのついたハンドピース
洗浄可能マークのついたハンドピース

どういった洗浄消毒を行なっているかはクリニックの設備環境によって違いがあると思いますが、これらの方法をどう選択するかは、『スポルディングの分類』を目安に決めるのが良いと思います。

スポルディングの分類については、2019年11月12日に掲載されているdStyle編集部 森寛子さんの記事に詳しく紹介されていますので是非ご参考になさってください。
(参照:洗浄・消毒・滅菌の基準『スポルディングの分類』って何?

いずれの方法も使用済みの器具が乾燥してしまうと、汚染物の除去が困難になる場合があるので、乾燥させないうちに洗浄工程に進めるように工夫をしましょう。

消毒の種類

そして、『消毒』には、熱や紫外線を使用して微生物を殺滅する「物理的消毒方法」と、消毒剤を使用した「化学的消毒方法」の2種類があります。

施術にあたり、器具の先端をアルコールガーゼなどで拭き取ることがあるかもしれませんが、アルコール成分はタンパク質や血液を凝固させ微生物を封じ込めてしまうはたらきがあるので、オススメできません。

私がクリニックで使用している洗浄液は、アメリカのCantel Medicalグループによって医療器具のバイオフィルムを取り除くために開発された、次世代前処理専用洗剤「インターセプト」です。優れた除去効果とコストパフォーマンスが期待でき、重宝しています。

インターセプト
インターセプト

どんな洗浄液や消毒液を使用する場合でも、必ず開封日の記入をし、希釈濃度を守り、指定がなければ必ず常温のお水を使用して洗浄液を作るようにしましょう。また、それぞれの製品に記入されている決められた保管場所を守ることも大切です。

洗浄消毒に必要な防護

最後に、洗浄消毒を行なう際は、作業者の曝露を防ぐために、可能なかぎりの防護をして安全に行ないましょう。

防護して洗浄する様子
防護して消毒を行なう様子

防護のポイントは以下の通りです。

髪型

第一印象の大半を占める身だしなみ。特に医療に携わる場合には、清潔で安全であることが大切で、動きやすく、落ち着きがあることが要求されると思います。

  • 長い髪は束ね、まとめてアップにする
  • お辞儀や診療でかがんだ際に落ちてくる髪は留める
  • 髪留めはシンプルなものを選び、黒や茶色などの落ち着いた色を選ぶ
  • 前髪を上げると明るい印象を与える

防護メガネ

防護メガネは診療の際に使用しているもので良いと思いますが、最近では、ディスポーザブルで安価なフェイスシールドが多数販売されています。中でも、3Mのマスクにくっつくアイガードや、ホギーズ・アイガードがお勧めです。

グローブ

グローブは、ラテックスアレルギーを考慮して合成ゴムのニトリルグローブを使用しています。しかし、ニトリルグローブはアレルギーを起こしませんが、ラテックスに比較して伸縮性に欠ける点があるので鋭利な器具を洗浄する際には注意が必要です。

穴が空くとわかりやすいので、すぐに交換することをお勧めします。すぐに穴が空いてしまう点やコストを考慮するならば、市販の厚手ゴム手袋も良いかもしれません。

防護のポイント
防護のポイント

外し方

洗浄・消毒を行なう際、安全な外し方も重要です。以下のポイントに注意して行ないましょう。

  1. きき手で反対側のグローブの袖3〜5 cmの部分を掴む
  2. 外身が内側にくるように、グローブをひっくり返して抜いていく
  3. 抜いたあとのグローブを、きき手のグローブの中に丸める
  4. グローブを外した方の手を、きき手のグローブの袖口の中に入れてひっくり返す
  5. きき手のグローブを下に向けて外し、廃棄する

患者さん、歯科医療従事者の双方が安心安全な医療の場であるよう、スタッフのみなさんで考える場を作るのも良いかもしれませんね。

歯科衛生士
感染管理アドバイザー
日本医療機器学会 第2種滅菌技士
JOAS 第二種歯科感染管理者
日本歯周病学会 会員
L.clare 代表 高野伸枝