全体の1%未満、企業で働く歯科衛生士について解説します!

令和2年度に厚生労働省が発表した、「衛生行政報告例」によると、歯科衛生士はその90.9%が歯科クリニックで勤務しています。
(参照:衛生行政報告例-厚生労働省

そのうち、企業(事業所)で働く歯科衛生士は、わずか0.2%

今回は、「企業に勤めるDHの働き方」「歯科クリニック勤務との違い」についてご紹介します。お仕事選びの参考に、ぜひご一読ください!

* この記事は2022年5月18日に更新しました

[目次]
1.具体的な役割と仕事内容について
2.就業条件などから、メリットとデメリットを考える
3.採用枠や求められるスキルについて
さいごに

1.具体的な役割と仕事内容について

求められる役割

企業で働く歯科衛生士は、患者さんを診るわけではありません。相手は勤務先の顧客であり、医療関連企業で働く場合、顧客は医療従事者となります。
つまり歯科医師や、歯科衛生士が相手となるわけです。

① 営業

メーカーで働く歯科衛生士の場合、自社製品の顧客を増やすことが求められます。

営業先は、歯科医院や病院、大学や歯科衛生士・歯科技工士専門学校が中心となります。

また、自分自身で営業活動をするのではなく、営業マンに同行し歯科のプロとして機器の使い方やアフターフォローを担当する場合もあります。

② 商品開発

歯科衛生士が中心となり、歯ブラシや歯間ブラシなどの予防歯科関連商品や、スケーラーなどの歯石除去に用いる器具機材、ディスポーザブル製品の開発などに従事します。

また、製品開発のための研究や他社製品のリサーチ、さらには市場のリサーチなどを求められることもあります。

③ セミナーの講師

所属する企業のセミナー講師を行います。顧客となる歯科医師や歯科衛生士を対象として、自社の製品のPRや使用法についての研修などを行います。

ときには、商品を持って各医療機関や歯科大学、衛生士学校などを訪問して、指導や授業を行う中で製品紹介をすることもあります。

④ その他サービス業

まだまだ多くはありませんが、医院の経営をサポートする会社や、医科・歯科専門領域で採用ビジネスをしている会社でも歯科衛生士のニーズがあります。

具体的にはホームページ作成会社、歯科医師や歯科衛生士向けのメディアを作っている会社、人材紹介会社、人材派遣会社などです。

会社によって求められることはさまざまですが、やはり顧客は歯科医師や歯科衛生士、歯科助手といった歯科医療従事者になることが多いです。

2.就業条件などから、メリットとデメリットを考える

では企業で働くことは、歯科クリニック勤務と比べてどんな違いがあるのでしょうか?

一般的に考えられるメリット・デメリットをご紹介します。

勤務日数

メリット

企業で働く場合、一般的には完全週休2日(土日祝)であることが多いです。

デメリット

セミナーやデンタルショーの対応を任される職種だと、歯科医院や病院の休診日である日曜日に開催されることが多いため、週末が仕事になることも。

その場合、平日に代休を取ることになります。

勤務時間

メリット

一般的に企業の就業時間は9時〜18時が多いです。最近は特に、リモートワークが可能な職場もあり、ワークライフバランスがとりやすいです。

デメリット

仕事内容によって異なりますが、製品のアフターフォローを担当する仕事の場合、歯科医院の診療時間が終わったあとに医院へ伺うことや、就業時間外に急な顧客対応が発生することも。

セミナーやデンタルショー、学会などの準備があれば、早朝に出勤することもあります。

給与・福利厚生

メリット

企業によって異なりますが、年収は350万~500万円であることが多いです。加えて出張費や休日出勤などの手当てがつくことがあります。

歯科クリニックと比較して、特に大企業の場合は、賞与や福利厚生が充実しているともいわれています。

デメリット

仕事内容によってはノルマがある企業もあり、臨床現場とは異なるプレッシャーを感じることもあります。

やりがい

メリット

現場で働く人たちを手助けする仕事なので、より広く影響を与えることができます。またパソコンスキルやビジネス文書など、いわゆるビジネススキルを身につけることもできます。

デメリット

患者さんとの1対1のコミュニケーションはなくなります。

3.採用枠や求められるスキルについて

採用枠

1名や2名など、ごく少数であることがほとんどです。そもそも企業勤務の歯科衛生士の数は全体の1%以下ですので、非常に狭き門です。

また企業によって求めるスキルにも幅がありますので、歯科衛生士の資格だけでなく、今まで積み重ねてきた経験と企業側のニーズが一致している必要があります。

求められるスキル

とはいえ、企業勤務を目指すにあたり身につけると有利なスキルはあります。

以下のことを意識して日々経験を積んでいくと、縁がある可能性が上がっていくと考えて間違いないでしょう。

① 衛生士としてのスキル

  • 歯科衛生士の実務経験
  • 歯科関連の基礎知識や専門知識

② ビジネスパーソンとしてのスキル

  • パソコンの操作スキル(Word、Excel、PowerPoint)
  • 幅広い年齢層とのコミュニケーション能力
  • 目標を達成する意欲
  • スタッフや医院全体のマネジメント能力
  • マーケティング能力(これからの医療業界・歯科業界に対しての視座)

さいごに

いかがでしたでしょうか。

企業と臨床現場では大きく仕事内容が異なります。条件で比較することも大切ですが、それだけだと違いがありすぎて判断が難しいのではないでしょうか。

いちばん大切な判断基準は、患者さん一人ひとりと向き合って歯科医療や口腔ケアを提供したいか、歯科医療に携わる幅広い層に影響を及ぼしたいか、だと思います。

歯科医療をより良いものにするという根本はどちらも同じですので、どちらを選択しても自分次第でやりがいを見出せるのではないでしょうか。

dStyleでは、企業で働く歯科衛生士の方々へのインタビューを行っています。

インタビュー企画「企業で働く歯科衛生士」はこちら

ぜひ参考にしてくださいね。