歯科衛生士がスケーリングを行う上で欠かせない「超音波スケーラー」。
超音波スケーラーは、約20,000〜60,000ヘルツの振動数で動作することで、歯肉縁上および縁下に沈着した歯石を簡単に除去することができます。
しかし、チップの当て方やチップの使い分けを適切に行わなければ、歯石の除去効率が下がってしまうのも事実です。
そんな超音波スケーラーの使い方をわかりやすく解説しているのが、昨年11月に発売された『土屋和子の超音波スケーリング』。
著者の土屋和子さんは、フリーランス歯科衛生士の第一人者といわれ、現在も臨床の現場に立ち、超音波スケーラーを日々使いこなしています。そんな土屋さんのテクニックを学べる貴重な書籍です。
dStyleおすすめ書籍レビュー『土屋和子の超音波スケーリング』
こっちの思い通りにならない患者さんって苦手ですよね。でも、それは「こっち」側を中心に考えるからですよね。患者さんを中心に考えると別の景色が見えてくるんですよ。
(「患者さんと私…土屋和子さんに聞く」より)
冒頭のインタビューでは、ある患者さんとの信頼関係が構築されるまでに苦労したことや、どのようなアプローチを行ったかについて、詳しく語られています。
ほかにも、普段スケーリングを行う上で意識していることや、患者さんへの声掛けのポイントなども紹介し、患者さんの気持ちに寄り添う大切さを伝えています。
本編では、まずはじめにSRPを行う理由について、歯周炎の病因論を元に解説。歯周炎の発症に関わる因子や、健康な歯周組織や歯肉辺縁の形状については、図やイラストを使ってわかりやすく説明されています。
つづいて、超音波スケーラーを用いたパワースケーリングと、手用スケーラーを用いたハンドスケーリングについての説明です。
超音波スケーラーは適切に使用することで、歯面への損傷を最小限におさえ、ハンドスケーリングにかかる半分の時間で、スケーリングができるとのこと。
そして、効率的なスケーリングを行うために重要な、超音波スケーラーチップの使い分けについても解説されています。
土屋さんが愛用している超音波スケーラー「Variosシリーズ(株式会社ナカニシ)」には、32種類ものチップがあるようです。同じような形状に見えても、断面形態の違いによって用途が異なるため、使用するチップの特徴をしっかりと理解しておくことが必要です。
この本では、チップの「材質」「形状」「表面加工」の違いが詳しく説明されており、さらにチップの角度や当て方、ストロークについても解説もされているため、超音波スケーラーへの理解を深めることができます。
とくに使用頻度の高いチップについては、解説とあわせて症例写真が掲載されているので、チップの選択で悩んでいる方は必見です!
ほかにも、歯の解剖学的形態についての解説や、空き缶やうずら卵を使用したトレーニング方法の紹介など、スケーリングのスキルアップに関する知識が盛りだくさんです。
充実した内容で、歯科衛生士さんが知っておくべき知識がつまっている本書ですが、とてもコンパクトで、通勤バッグにに入れて持ち運びしやすいサイズなのも、土屋さんのこだわりポイントのひとつなんです。
歯周組織の基本的な知識をおさらいしたい、スケーリングの技術を上げたいと思っている歯科衛生士さんに、ぜひ読んでもらいたい一冊です。
姉妹サイトのWHITE CROSSでは、土屋さんへインタビューを行い、現在までの軌跡を語っていただいています。ぜひ本書とあわせてご覧ください!