職種不問!歯科医療従事者の新しいコミュニティ「六角フェス」が開催

歯科衛生士の鯨岡紀子です。

衛生士歴33年目の現在、歯科医師の主人とともに診療所を経営し、働きやすい環境づくりにつとめています。

11月3日、静岡で開催された六角フェスに参加してきましたので、ご報告させていただきます。

「六角フェス」とは、Twitterで人気の歯科医師 六角先生が主催する、歯科医療従事者向けのセミナーと宴。職種関係なしに交流が可能で、かつ学びがあるのが趣旨だということでした。
(参照:六角フェスとは?

さまざまな職種の歯科医療従事者が集う「六角フェス」
さまざまな職種の歯科医療従事者が集う「六角フェス」

一部の参加者とは実際にお会いしたことがあったり、Twitter上でやり取りがあったりしたものの、どんな方が集まるのかは知らされていなかったのでドキドキ。

新幹線に乗り、会場にたどり着くとまず名札にTwitterで使用している名前を書きます。そして、各自地元をアピールしたお土産を持参し、机に並べました。

初めての方も多い、謎の集団になんとなく気分は高揚。でも日々Twitter上で意見交換を行っているメンバーのため、知らないわけではないという安心感があるのは、通常のセミナーとちょっと違います。

すでにてんこ盛りのおみやげ
すでにてんこ盛りのおみやげ

VMDで売り場を制す/Dental YouTuber翔平さん

最初の講演は、Dental YouTuber翔平さんこと福島翔平さん。

「Hi、teeth!」で始まるYouTuber翔平さんのノリノリで明瞭な声にまず、魅了されました。すごく聞きやすく、説明もわかりやすいのがさすがです。そして待合室が患者さんへのプレゼンテーションの場であるという点が一番、印象的でした。

もともと私自身、モノを買って買ってというよりは、その方にとって何が必要かを提案することが重要で、ネットで求め易い価格で購入するのであれば、それでまったく構わないと考えています。そのため、普段の診療では「こういうものを試してみては?」とさらりとお伝えするにとどめています。

翔平さんの講演は、具体的で人間の心理をついた内容で、なるほどと思うことばかりでした。間違いなく今後、自分が買い物をする際の参考になります。

興味のある方は、ぜひYouTube を。
私から具体的なテクニック、キーワードはあえて記しません。

Dental YouTuber翔平さんのYouTubeはこちら

Dental YouTuber翔平さん
Dental YouTuber翔平さん

開業医として考える障害者歯科/みき先生

お二人目の講師はみき先生こと、みき歯科三越通りクリニックの三木武寛先生。みき先生は障害者歯科を専門とされています。講演は、診療方針の“Tender loving care(どなたにも心を込めてケアする)”という思いが溢れた内容でした。

私は小学校に勤務していた際、特別支援学級の児童と多く関わりました。多くの発達障害児が普段と違う音や雰囲気に敏感で、それを受け入れるためにどんな工夫や支援を行ってきたか。

そして、支援によりどう成長していくかを目の当たりにして感動させられることが多かったので、みき先生がどんな風に診療されているのかという興味が、今回静岡へ足を運ぶことになった大きなきっかけの一つでもありました。

実際にお話を伺い、一番導入しやすいと感じたのは「脱感作」の話です。そこにいたほとんどの方が同じではないかと思います。

「脱感作」とは、口腔内が敏感になったり、感覚の異常がでている患者さんに対して、腕などの口と離れている部分から少しずつ触れていき、緊張を和らげていくこと。

私たちはすぐに口腔内をみようとする。触れようとする。でも、患者さんの恐怖心を考えたら、確かに脱感作の手法が必須・・・納得でした。

また、スタンプラリーやポイントカードといった「トークンエコノミー」についてのみき先生のお考えをなるほど、と思いました。

私はトークンエコノミーという概念がない時代に教育を受けたので、診療に対して報酬を設けることには抵抗があったのですが、確かに障害がある子どもたちへの療法と考えると有効な支援かなという気づきを得ました。そして、それは障害があるから・・・というものでもないように感じました。

みき先生(右)と患者さん
みき先生(右)と患者さん

技工物を理解する/ジュンペエさん

歯科技工士のジュンペエさんは、印象や石膏の扱いを丁寧に教えてくださいました。「この作業はなんのために行うのか」ということまで考えられるようなレクチャーで、歯科衛生士・歯科助手にはありがたい時間だったと思います。

私たちは、もっと技工士さんとコミュニケーションをとるべきです。技工士さんが作成したものが口腔内に装着され、私たちはメインテナンスという形でずっと関わっていくのですから。

なにより患者さんにとっては、食べる・話すことに長く大きく関わるものです。熱心な技工士さんはそれを見据えて作成されているはずですから、歯科衛生士・歯科助手からの情報提供はあったほうがいいのだと思います。

ジュンペエさん
ジュンペエさん

視診と触診から見極める総義歯治療の勘所/六角先生

最後の講演は、六角先生こと岡田歯科医院の岡田真和先生。六角先生と言えば義歯。そして訪問診療。

私は訪問を行っていません。よって診療室で総義歯の患者さんをじっくりみる場面があるとしたら、主にメインテナンス時です。

総義歯でも維持歯があれば、歯をみます。義歯は外して清掃状態を確認、洗浄します。たいてい下顎には歯があるので、そこはもちろんよく観察します。舌と頬粘膜はみます。口蓋もみます。

ん……?

口腔粘膜の経年変化をほんとうに見てる?

そう思った講演でした。たぶん、粘膜に異常がないかをザッとみているだけだったのではないか。つまりみていない。

写真で目に飛び込む切歯乳頭や小帯。じっくり見た記憶があまりないです。

さらには筋肉の動き。介助につけば、筋形成を見てはいます。いや、「見ているだけ」で、あまり考えていなかったかもしれません。

そして、咀嚼嚥下のメカニズムについては、まだまだ理解が甘いかもと思いました。とりわけ筋肉については、まだまだ学びが足りません。

とても吸着のよい下顎総義歯の作業工程をスライドで見せていただきました。超高齢社会にすでに突入している私の診療室では、六角先生の診療室と同様に、義歯の患者さんが多いのですが、都市部に勤務する衛生士にとってはあまり見る機会がなかったかもしれません。

六角先生が、人工歯の摩耗や咬合の不安定さが咀嚼嚥下に影響を及ぼすということを、衛生士も知っておいて欲しいとおっしゃっていたのが印象的です。

六角先生
六角先生

というわけで、次回のフェスは、来年2月23日に高見澤亜衣さんの登壇が決定。

次回のお問い合わせはこちら

今回フェスに参加された高見澤さんが、この学びを受けてどう噛み砕いた話をされるのか楽しみで仕方ないです。

宴も非常に盛り上がりました。みなさん休日であるにも関わらず日本全国から参加。懇親の場ですら、ひたすら仕事の話を熱く語っていたようにも思います。

会うのは初めてでも、旧友のようであり、世代を超えて、いや時空を超えて楽しい時を共有できました。日本のどこかに同じ釜の飯を食った仲間がいるというのは心強いです。

この日の釜の飯(噂のハンバーグ)は、待った甲斐あるだけの幸福感を得られる肉々しさでした。みんなもよほど嬉しいのか無言。そして笑顔に包まれていました。

こうした機会を与えていただき感謝しています。
さらにパワーアップしそうな新しいカタチのコミュニティだと思います。