活用できてる?TCの資格 第1回 令和のTCに求められること

はじめまして、長田弘美です。

トリートメントコーディネーター(TC)として、とくだ歯科医院に勤務して7年目になります。

突然ですが皆さんは、TCについてどのようなイメージをお持ちでしょうか。

自費治療の契約をとる人?
コミュニケーションスキルが高い?

これらもTCの役割の一部だと思います。

しかし、欧米をはじめとする諸外国ではTCという職種が確立されおり、その役割は多岐に渡ります。

この連載では、医院に求められている「プロフェッショナルなTC」について、お伝えしていきます。

筆者の長田弘美
筆者 長田弘美

海外のTC事情

私はこれまで、海外のTCについて触れる機会が多々ありました。

たとえばアリゾナの歯科医院では、レセプションスタッフがTCの役割を担っています。

レセプションスタッフは初診の予約をとる段階から「当院のDr.はあなたのお悩みを解決することができます。お会いになりますか?」と段取りされており、極端な場合、患者さんがDr.に初めて会うのは実際の治療がスタートする時ということもあるようでした。

また、韓国の歯科医院では、1人のDr.につきチームが組まれているそうです。各チームにはかならずTCがいて、TCがスタッフマネジメントを行い、チームのブランディングも戦略的に行っているそうです。

また、研修で訪問したハワイのデンタルオフィスでも、TCが組織マネジメント、医院マーケティングの役割を担っているといいます。むしろ、「日本はTCがいなくてどうやって医院を運営して、どうやって治療をしているの?」と驚かれるほどでした。

私自身、TCとして働きはじめた当初はカウンセリングやコンサルテーションだけを行っていました。しかし現在は、臨床面において歯科医師の通訳となり、マネジメントにおいて医院全体のコーディネートを行っています。

ちなみにこちらは、私の普段の業務内容です。

TCの役割に拡がりを感じるようになったのは、医院の体制改革を行ったことがきっかけです。

カウンセリングやコンサルテーションを行うにも、人や仕組みなどの体制が整っていなければ機能しないということを痛感したからです。

なぜ今、トータルコーディネートが必要なのか?

患者さんの「健康でいたい」という意識変革、行動変容を促すためにも、歯科医院は正しい情報提供を十分に行う必要があります。

また、自費治療の必要性や良さをご理解いただくためにも、プロセスの部分をきちんと説明しなければなりませんが、歯科医師や歯科衛生士が治療をしながらその時間を十分に確保することは難しいと思います。

加えて、歯科医院の経営・運営面においても、たとえば働き方改革や新型コロナウイルス感染拡大などの社会環境の影響によって、状況は変わってきています。

そういった中でコロナのピンチをチャンスと捉え、早くに切り替えて人材育成に力を入れたり、情報発信に力を入れたり、設備衛生管理の見直しをしたりと策を打って業績を延ばした医院もあります。

私が勤務している医院でも、ブランディング戦略と感染対策のために昨年に院内改装を行い、ビジュアル雰囲気の一掃、オペレーション導線の見直し、収納の確保などをしました。

これからの不確実性の時代を生き残っていくには、歯科医師の治療の腕一本、目の前の診療を行うだけでは、医院の存続は難しい時代になっているといえます。

しかし日本では、ほとんどの院長が患者さんを診療する施術者であり、スタッフをマネジメントするマネージャーでもあり、医院経営を行う経営者でもあるという3足のわらじを履いており、非常に忙しいのが現状かと思います。

そこでTCが代わって歯科治療の重要性、口腔ケアの重要性を通訳者としてお伝えし、医院マネジメントのサポートを行うべきだと考えます。

TCが、患者さん、歯科医師、スタッフとの間でさまざまなサポートをすることにより、医院の成長、成功につながります。

この図は、開業医が臨床以外に行っている業務です。この業務のうち、赤枠部分を私が行っています。

このように業務の一部を部下に任せることを「エンパワーメント(権限委譲)」といいます。

エンパワーメントは社員の自律性を育て成長を促進させることを目的としており、ひいては組織全体の生産性の向上に繋がるマジメント手法でもあります。

令和のTCに求められること

私がお伝えしている「プロフェッショナルなTC」とは、TC個人がカウンセリングだけを行って活躍するのではなく、すべてに関わってトータルコーディネートするTCのことをいいます。

TCがカウンセリングやコンサルテーションだけでなく、医院が円滑に運営できるようマネジメントをサポートすることで、自費率や自費の売上に限らず、メインテナンス数やケア用品の売上、離職率、求人応募者数などの数値として成果が現れます。

これからは「個の時代」といわれています。

それは個人プレーということではなく、個々の強みが結集して全体の強みになるということで、そのために個人レベルでできるのは、自分の専門性や強みを発信することです。

情報社会において、たとえばジルコニアやインプラントなどのメリットは、すぐに調べることができます。

令和のTCには、そういった「調べればわかる程度」の知識ではなく、患者さんの口腔状況に合わせたハイレベルな知識、患者さんの価値観の変容を生み出すことができるプレゼンスキルなどが求められています。

マネジメントにおいては、日々現場で起こる問題を解決していくために、情緒的ではなく、論理的に物事を考えられる思考力も必要になります。

患者さん、求人応募者、お取引業者から選ばれる歯科医院を全員で作っていくために、組織をファシリテートするリーダーシップも欠かせないでしょう。

患者さんの口腔状況に合わせてカウンセリングを行う様子
患者さんの口腔状況に合わせてカウンセリングを行う様子

次回は、業務におけるTCの活用についてお伝えします。

一緒にプロフェッショナルなTCを目指しましょう!