世界からむし歯をなくしたい!ミャンマーボランティア活動 Part.3 真のプロフェッショナルを目指して

こんにちは。歯科衛生士の梅谷有未です。

私は、『歯みがきで世界から虫歯をなくす会』に所属しており、コロナ禍前まで、ミャンマーで歯みがき指導を行うボランティア活動に参加していました。

そんなミャンマーでのボランティア活動の様子をみなさんにお届けできたらと思い、Part.1、2では、ボランティア団体との出会いや初参加の様子についてお話ししました。

Part.1 ボランティア団体との出会い
Part.2 はじめての参加と熱くなる想い

最終回となる今回は、2回目に参加した時の活動内容についてご紹介したいと思います。

ミャンマーの小学校での歯みがき指導中の様子
ミャンマーの小学校での歯みがき指導中の様子

2回目の参加は、母とともに

今回から、現地にてヤンゴンチームとモーラミャインチームに分かれるのではなく、日程を別々にして、希望者は両チームへ参加できるようになりました。

本当は両日程に参加したかったのですが、有休の都合で断念。前回に引き続き、モーラミャインチームに参加しました。

そして今回はなんと、私の母(69歳 現役保育士)も参加しました!

前回のボランティア参加後、私の話を聞いてすごく興味を持っていた母。軽い気持ちで「一緒に行く?」と誘ってみた結果、参加が決定しました。

母は若い時をブラジルで過ごし、日本に帰国後、児童養護施設の立ち上げに参加。私が物心ついた頃から、休むことなく保育士として働いているとてもパワフルな人です。似た者同士の性格なので、度々衝突することも(笑)。

そんな母との参加を喜びながらも、1週間行動をともにすることに一抹の不安を覚えつつ、2回目のミャンマーボランティア活動の幕開けとなりました。

保育士の母とミャンマー モーラミャインにて
保育士の母とミャンマー モーラミャインにて

「きっかけ」を与える周知活動の大切さ

今回は、前回課題だった「大人への口腔ケアの浸透」「現地の人へ口腔ケアの方法を伝える」を踏まえて、ボランティア1日目は、ショッピングモール横の広場でイベントを開催しました。

現地へ到着した頃には、前回協力してくださった日系企業の方々、日本語学校の先生方が会場の設営やイベントのお知らせなど準備をしていてくださり、立派な舞台が設置されていました。

今回のプログラムは、

  1. 集まった方々とチーム対抗のりんご早食い競走
  2. 歯ブラシを配布し、歯みがき指導
  3. 歌を通して、歯みがきの大切さを伝える

でした。お祭りごととあって、たくさんの人が集まってくれました。

私はりんご早食い競走に、日本チームとして出場しました。

「子ども達に花をもたせるために、本気で勝ちにいかない」という“お約束”を無視して本気で走ったにもかかわらず、ぼろ負けでした(笑)

普段の運動不足を感じるとともに、現地のちびっ子達の足の速さを甘く見ていた結果です。

そんなこんなで、りんご早食いどころか、走る時点ですでに惨敗の日本チームでした。

イベントに参加してくださった方々の目的は、“歯みがき”ではなく「イベントをやっていたから」「楽しそうだから」だったかもしれません。

ですが、みんなで一緒に歯みがきをした時、最前列にいたちびっ子たちと親御さん、おじいさんの姿はとても印象的で、今でも心に残っています。

これまで、今回のような周知活動の大切さに気づくことはなく、活動をしている方々の苦労を考えたこともありませんでした。

またひとつ、新しい発見ができたなと感じました。

りんご早食い競走の様子
りんご早食い競走の様子

魚を与えるのではなく釣る方法を伝えることの重要性

イベント後は、翌日協力してくださる方々を交えて夕食を兼ねたミーティング。主に日本語学校の生徒たちと日系企業の社員の方々です。

仕事内容の確認と、事前練習も行いました。

活動の流れと内容は前回と大きく変わりませんが、今回は現地の方にも保健指導や歯みがき指導に参加してもらうことになりました。

そして私は今回も予防処置の担当。「歯石って何?」「どんな字を書くの?」「歯みがきは1日何回するの?」「どうして歯みがきが大切なの?」などを伝えます。

みなさん日本語は話せますが、専門用語や難しい言葉だとどうしても伝わりません。

まず、そもそも「歯石」の存在を知らないというのですから、“歯石がどうやってできるか“というところから説明することもありました。

他にも、歯みがき指導の方法を教える時も「血が出ても大丈夫」「では、なぜ大丈夫なのか?」「そもそもなぜ血が出るのか」という風に流れに沿って深掘りするように説明したり。

実際にプラークの染め出しをして、歯みがきの方法を一人ひとりチェックもしました。

歯みがき練習中の様子
歯みがき練習中の様子

このように「なぜ」を分かりやすく伝えることの難しさに改めて気づき、頭をフル回転させながら、簡単でイメージのつきやすい日本語を選んで説明をすることに少し苦労しました。

しかし、初めて知る知識にとても貪欲に一生懸命、目を輝かせながらいろんな質問をしてくる若者たちの顔が本当に素敵でした。

その子たちが記入したカルテをみると、「フッ素」が「クッ素」と書いてあったりしてめちゃくちゃツボにはまりましたが、私、フッ素について教えていないんですよね。

おそらく一連の流れを見て、考えて、教えていなくても自ら覚えて書いてくれたその字に、一生懸命さを強く感じ、心から感動しました。

そんな彼らは、翌日にはドクターのアシスタントをこなし、子どもたちに歯みがき指導を行い、メンバー一同、目を見張るほどの活躍ぶりでした。

これが予防を広げることなんだ!これがやりたかったことだ!とひしひしと感じ、同時にライセンスを持つ者として、正しい知識を伝えることへの責任を再確認しました。

歯みがき指導を行う日本語学校の生徒さん
歯みがき指導を行う日本語学校の生徒さん

想いがつながったとき

活動2日目の朝。活動場所の小学校に到着した私たちが目にしたのは、豪華な朝食と金ピカなホール。そして、保護者の方々や学校の先生方、地元の有力者たちのあたたかい歓迎でした。

私たちのことを知ったミャンマーの大臣が朝一番で出迎えてくれ、歓迎の言葉と記念品を贈呈してくれるという予想外の展開に、メンバー一同挙動不審でした(笑)。

地元の有力者がこうして予防に対する意思表示をしてくれた、ということがどれだけ嬉しかったか、言葉では言い表せません。

赤十字の看護師の方々も加わり見学いただいたりと、少し緊張する1日でしたが、小学校の先生方にも歯みがき指導ができたり、生徒たちと暗くなるまで遊んだりと充実した時間が過ごせました。

前回の記事にも書きましたが、同じ思いを持つ仲間が集まると、とても大きな力が生まれることを改めて感じ、チーム医療の大切さを実感しました。

歓迎会での記念写真
歓迎会での記念写真

そしてもう一つ、このボランティアで毎年行っていることが現地の方々との文化交流です。今年は縁日をやろう!と計画していました。

最終日、協力企業の方々が浴衣を用意してくださり、日本語学校の方々は邦楽とダンスの振りを練習されていたらしく、縁日と、盆踊り大会が実現しました!

まさかミャンマーで、恋するフォーチュンクッキーを踊ることになるとは夢にも思っていませんでした(笑)。

盆踊り大会の様子
盆踊り大会の様子

プロフェッショナルに必要なこと

ミャンマーでのボランティア活動は、歯科衛生士としてどのように働きたいのか自分は何がしたいのか?という、日々の生活に追われ見失っていたことを見つめ直すきっかけとなりました。

今までは単純に歯科衛生士の仕事が好きで、お口の大切さを伝えたい、広めたいと思っていました。

今回の活動を通じて、私たちが発する言葉や行動を一つひとつ逃さないように受け取ってくれる人たちを目の当たりにし、その方々のお手本であるという責任をとても感じました。

そのためにライセンスがあるんだ、好きなだけで突進するのではなく、ライセンスを持つ者として一人ひとりのその先の未来に責任がもてるようになること。

そのために常に努力し、向上し続けること。それがプロフェッショナルであることだと決意しました。

コロナが終息し、ミャンマーでのクーデターが終息した時、予防を伝えるプロとして胸をはって仲間たちに再会できるように、これからも知識と技術を日々磨き続けたいと思います。