『歯科医師&歯科衛生士のためのマウスピース矯正入門』dStyleおすすめ歯学書レビュー

ここ数年で、矯正治療の新たなスタンダードとなりつつある「マウスピース矯正」。

従来のワイヤー矯正に抵抗があった方でもはじめやすい矯正治療のひとつで、一般の患者さんだけでなく、歯科医療従事者やアスリート、芸能人で行っている方も多くみられます。

しかし、歯科衛生士学校では深く学ぶ機会がない分野であり、就職後もマウスピース矯正を行っていない歯科医院で働いていると、勉強する機会にはなかなか恵まれません。

そこで今回は、マウスピース矯正の研修講師として全国で活躍する歯科衛生士 穴沢有沙さんの著書『歯科医師&歯科衛生士のためのマウスピース矯正入門』をご紹介します!

「アタッチメント」「クリンチェック」「IPR」って何のこと?

といった疑問をかかえる、マウスピース矯正初心者の方や、


患者さんがマウスピースの装着時間を守ってくれない。
予定通りに治療が進まない。

と、すでに勤務先でマウスピース矯正を行っているけど、悩みが尽きない!という方にもおすすめの一冊です。

歯科医師&歯科衛生士のためのマウスピース矯正入門

マウスピース矯正の基礎から応用までを一気に学べる一冊!

こちらの書籍では、マウスピースの利点や欠点といった基礎知識や、矯正中に起こりやすいトラブルへの対処法、コンサルテーションの方法などを、13章にわたってわかりやすく解説しています。

内容を大きくわけると、このような3つの構成になっています。

  1. マウスピース矯正についての基礎知識と患者心理(1〜3章)
  2. マウスピース矯正治療の流れと治療時における注意点(4〜9章)
  3. マウスピース矯正応用編(10〜13章)

今回は、上記の構成に沿って、内容をお伝えしていきます♪

① マウスピース矯正についての基礎知識と患者心理

はじめに、マウスピース矯正の特徴やワイヤー矯正との比較について説明し、治療の流れについても簡単に紹介。

冒頭にでてきた「アタッチメント」「クリンチェック」「IPR」といった、マウスピース矯正ではおなじみの専門用語についても詳しく説明されており、初心者でも理解しやすくなっています。

そしてこの本では、マウスピース矯正のメリットとして挙げられる「取り外しができる」ということは、最大のデメリットにもなり得ると書かれています。

マウスピース矯正の成功には患者さんの協力度が非常に重要となることから、患者さんとの信頼関係を構築させるための説明や指導のポイントについても、たくさん紹介されています。

さまざまな患者さんの症例が登場するため、「こんな患者さんにはどういった説明をするべきか」「どうやって患者さんの本音を引き出すか」など、臨床ですぐに実践できる内容が豊富です!

患者さんの本音を引き出す

② マウスピース矯正治療の流れと治療時における注意点

つづいでは、マウスピース矯正治療の流れについて詳しく紹介されています。

資料収集や印象採得といった最初のステップから、保定やメインテナンスまでのステップについて細かく説明し、各治療時における注意点や歯科衛生士の役割について解説。

それぞれのステップにおける歯科衛生士の役割が明確で、患者さんへの声かけのポイントなども具体的に記載されています。

アライナーを交換するタイミングは夜にしてもらう」「アライナー装着スケジュールを作成して1枚は患者さんに渡し、1枚はカルテに保管する」など、マウスピース矯正治療をスムーズに進めるための、さまざまな工夫を知ることができます。

アタッチメントの付与やIPRを行うタイミングについては、歯科医師だけでなく歯科衛生士も把握しておくことで、患者さんへの説明やアポイントの管理が行いやすくなるとのこと。

すでにマウスピース矯正を導入している歯科医院で勤務している方には、ぜひ熟読していただきたい内容です。

③ マウスピース矯正応用編

最後のセクションでは、マウスピース矯正中によく起こるトラブルへの対処法や、患者さんの矯正治療に対する意識の低下を防ぐ説明方法などを紹介。

マウスピース矯正を行う患者さんが増えてくると、どうしてもトラブルが起こってしまうケースもでてきます。

マウスピース矯正特有のトラブルについては、事前に対処法を学び、どんな時も落ち着いた対応ができるといいですね。

この本ではさらに、マウスピース矯正とセットで導入する歯科医院が多い、口腔内スキャナーの取り扱いや活用方法についても詳しく説明されています。

口腔内スキャナーを導入している歯科医院に勤務する方は、こちらもしっかりとチェックしておきましょう!

口腔内スキャナー

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ワイヤー矯正とはまた違った魅力をもつ、マウスピース矯正。

患者さんの中には、マウスピース矯正のメリットだけを追い求めて治療を希望する方もいますが、歯科医療従事者としてはデメリットも正しく理解しておくことが非常に重要です。

歯科衛生士学校では詳しく学べない分野だからこそ、卒後どれだけ勉強するかで、知識や技術の差が大きくでてしまう分野でもあります。

歯科医院で導入していなくても、患者さんにマウスピース矯正について質問される機会は増えてきています。

どんなことも自信をもって患者さんに説明できるよう、歯科医師や歯科衛生士だけでなく、歯科助手やトリートメントコーディネーターの方々にも一度は目を通しておいてもらいたい一冊です。

歯科医師&歯科衛生士のためのマウスピース矯正入門
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