こんにちは。歯科衛生士の梅谷有未です。
私は、『歯みがきで世界から虫歯をなくす会』に所属しており、コロナ禍前まで、ミャンマーで歯みがき指導を行うボランティア活動に参加していました。
そんなミャンマーでのボランティア活動の様子をみなさんにお届けできたらと思い、Part.1では、ボランティア団体との出会いについてお話ししました。
Part.2となる今回は、はじめて参加したときの活動内容や、さまざまな方との出会いについて紹介させていただきたいと思います。
ミャンマーの都市、モーラミャインへ出発!
ボランティア団体は総勢21名。現地では2チームに分かれます。
活動場所は、ヤンゴンという都市の孤児院が中心なのですが、過去の活動が高く評価され、日本との合同会社を運営している方の熱い要望で、前年度から新たにモーラミャインという都市での活動が新たにスタートしていました。
私は、主に小学校を中心に活動している、そのモーラミャインチームに参加することになりました。
しかしそこは、空港のあるヤンゴンからとても離れた場所にあったのです。それもなんと、バスで6時間という距離!
舗装されていない道路をひたすら進み、寝ようと思ってもクラクションの嵐とバスの揺れで起こされ、しまいには椅子から転げ落とされるという悪路からのスタートとなったことは、今でも忘れられない思い出です(笑)。
暑さとの戦いと大型扇風機
そんなバスの中で、現地で行う保健指導の内容の打ち合わせをしました。
昼過ぎに訪問先の小学校へ到着するなり、すぐに準備をはじめ、活動スタートです!
流れとしては以下の通り。
- 問診
- 口腔内チェック
- 保健指導
- 歯みがき指導
- 治療が必要な子は治療
- 予防処置(スケーリング・サホライド塗布・フッ素塗布)
問診や通訳は、現地に住んでいる日本人や日系企業の方々、日本語学校の先生方が協力してくれました。
私の担当は予防処置。得意分野ではありますが、いつもとは勝手がだいぶ違います。
ライトはヘッドライトの灯りのみ、ユニットの代わりに木の長椅子。電源は主にポータブルの発電機のみなので、手用スケーラーのみでのスケーリングです。
その上、歯石が硬い!それも大量!
すべての歯石を取ることが目的ではないので、どこの歯石を優先して除去するかを瞬時に判断し、絶対に痛みを感じさせないように終えなければなりません。後には100人以上の子どもたちが控えているので、素早さと正確さが重要です。
それに加え、最高気温は35度前後。湿度もかなり高いです。もちろんエアコンはありません。
グローブの中から大量の汗が腕をつたい、手も滑りやすくなっており、さらにスケーリングの難易度をあげていました。
そんな中ありがたいことに、ご厚意で大型扇風機が設置されていました。
しかし、風が吹くたび舞い上がるサホライドの綿球…。ついには私の顔面にも命中を食らったのでした。
診療が終わり、周りを見渡してみると、あちらこちらが真っ黒なスタッフたち。
予防処置チームの一番の敵は、間違いなく風に舞うサホライドでした(笑)。
そんなこんなで、大爆笑の中で終えたその日のモーラミャインチームの総受診者数は、270人となりました。
ミャンマーでは、電気の供給もまだ不安定な状況にあり、水道水も飲めません。
そんな環境の中、活動に必要なものをはじめ、私たちが暑い中で大変だろうと、扇風機やたくさんのミネラルウォーターを準備してくださるなど、ご協力いただいた方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいであり、今でも大切な存在です。
毎晩の白熱ミーティング
チーム全員が普段の歯科医院での勤務とは違い、みんな同じ目的をもっているためかメンバー間の壁はなく、「ドクターだから」「歯科衛生士だから」などの遠慮もありません。
毎晩のミーティングは白熱の嵐で、「もっとこうしたかった」「こうすれば良かった」などなど、意見が飛び交います。それに加えて、台風の影響で事前に集まってできなかった打ち合わせの話も…。
ですが、ボランティアはもうはじまっているのです。
「打ち合わせができなかった」「こうすれば良かった」など考えている時間があるのなら、残されたあと数日間で何をするべきか、私はもっと建設的な話がしたい!
という私の心の声は、気づいたときにはすべて吐き出した後でした。
そんな私を誰一人責めることはなく、「意見を言ってくれてありがとう!」とメンバーが声をかけてくれたうえに、「めちゃくちゃロックな女だね!かっこいいね」と、最年長で参加している技工士の方が褒めてくれたおかげか、翌日から私の代名詞は「ロック梅谷」になりました。
いまだにメンバーからは、その時のことをネタにされています。
未来に繋げる歯みがき指導
ミャンマーではここ数年、外国から輸入された甘いお菓子を子どもたちが口にする機会が増えた影響で、特に低年齢層に急速にむし歯が広がっているそうです。
実際に私が診た子どもたちも、高学年以上はむし歯が少なく、大人たちも歯周病こそ重度でしたが、むし歯はあまりありませんでした。
そのことをふまえて、子どもだけではなく、その保護者や大人への教育も重要だと考え、今回はじめて大人の方々へも歯みがきの方法を教えるという時間を設けました。
小学校での活動が終了後、ご協力いただいた現地の大人の方々に保健指導と歯みがき指導を行ったのですが、皆さん真剣に聞いてくださり、一生懸命に歯ブラシを動かしてくれて、その光景を見た私は胸が熱くなりました。
この方々がお家に帰ったあと、家族に歯みがきの話をしてほしい、そうやって少しずつ歯みがきの習慣が広がってほしい。「みんな毎日歯みがきを続けてほしい」と心から思いました。
そんな気持ちはみんな同じで、私たちが日本に帰国後もミャンマーの人々が口腔ケアに対するモチベーションが維持できるようにと、メンバーの一人が単身で再訪して日本語学校の生徒の方々に口腔ケアの講義を行うことになりました。
その計画にみんなで便乗し、モーラミャインに持っていってもらうための歯ブラシを集めたり、歯みがきの歌の歌詞とイラストをまとめたりしたのです。
私は絵で見てわかるようにと、歯みがきをしないとむし歯になることや、歯みがきの方法を書いた絵本を手作りして彼に託しました。
そんなみんなの想いがしっかり詰まった出発時の荷物は、それはそれはとても重かったそうです(笑)。
与えるよりも、自力で得る方法を伝える
チームが大切にしていることのひとつに「与えるのではなく、自力で得るための手段と方法を教える」という考えがあります。
これは歯科衛生士にとっても大切なことで、スケーリングをする、TBIをする、検査をする、PMTCをするといった処置を行うことだけではなく、それを通じて患者さん自身に自分の力で予防する手段と方法を理解させることが大切なのだと、今回の活動を通してあらためて実感しました。
また、同じ目的と想いをもつ人たちが集まると、ものすごいパワーが生まれることを体感しました。
それはチームのメンバー同士の間だけのことではなく、一緒に活動してくださった多くの人たちの思いやりや、たくさんの協力からも感じたことです。
ミャンマーでのはじめてのボランティア活動は、臨床とは違ったやりがいや魅力がありました。
可能な限り参加し続けたいと闘志を燃やした私は、「ロックな梅谷」として次回の参加を楽しみにしながら、日々の診療を頑張るのでした。
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次回は、2回目に参加したミャンマーへのボランティア活動についてお話しします。