みなさん、こんにちは。歯科衛生士の一之瀬です。
数ヶ月前まで連載させていただいておりました「チーフ歯科衛生士の流儀」に引き続き、今回より新たな連載をはじめることとなりました。
今回の連載では、歯科衛生士として長く働く中で見つけた、私の愛用品をご紹介させていただきます。
仕事に関する物品、たとえば書籍や衛生商品、器具はもちろんのこと、クリニックに置ける装飾品など。
みなさんの「学び」や快適な職場環境にお役立ちできれば嬉しいです。
おすすめアイテム No1. 『クリニカルカリオロジー』(医歯薬出版株式会社)
この書籍は私が歯科衛生士になって初めて購入したものです。
私が歯科衛生士1年目のときに出会い、先輩歯科衛生士、同期とともに入社後初めての勉強会で教本として活用した、とても思い出深い書籍です。
当時勤めていたクリニックには、スタッフの勉強用として医局の本棚に3冊ありました。現在勤務しているクリニックの本棚にも私の入社以前から置いてあります。
私の感覚では、予防に積極的に取り組んでいるクリニックにはかならず1冊は置いてある必須アイテムではないかと思っています。
新人にとっては高価な買い物でしたが、自分への投資、また歯科衛生士の仕事を続けている間はずっと必要なものになると考え、自分だけのものがほしくて購入しました。
それから20年が過ぎた今でも大切に活用し続けており、クリニックの勉強会で用いたり、後輩歯科衛生士にはかならず1回は見るようにとおすすめしています。
「予防」や「カリエスリスクテスト(CRT)」に興味のある歯科衛生士にとっては、バイブルの1冊になること間違いなしではないでようか。
『クリニカルカリオロジー』のおすすめPOINT
① カリエスリスクテスト(CRT)の全般を学べる
実際にカリエスリスクテスト(CRT)の導入を考えているクリニックだけでなく、すでに導入しているクリニックのスタッフの皆さんにとってもおすすめです。
患者さんのカリエスリスクは視診で分かるものだけではないことを理解するのに、大きな役割を果たします。
検査の内容や目的、メリットを患者さんに上手く説明できない場合などに、院内勉強で活用されることをおすすめします。
② カリエス予防をおさらいできる
新人歯科衛生士がカリエス予防を学ぶ教本として活用できます。新人同士個人で読むよりも、先輩との勉強会や院内勉強会で用いることをおすすめします。
多くの症例が写真付きで掲載されているので、新人でも見やすく理解しやすいと思います。
また、症例についてスタッフ同士で意見交換することで、クリニックにおいて見解の統一性を図ることができます。これは、たとえ担当制であってもとても重要なことです。
③ 食育や6歳臼歯への対応が学べる
食生活が口腔内に与える影響や、カリエスリスク別の6歳臼歯への対応を考えるきっかけになります。
② 同様、多くの症例が掲載されており視覚的に捉えることができるので、経験値に関係なく、どなたでも理解しやすいです。
本をおすすめするときに気をつけるべきこととは?
ここで重要なのが、決して「押し付けないこと」です。
特に書籍の場合は、価値観の共有ができるかは相手の感性に任せています。もちろん、勉強会などで教材として用いる場合は、最低限の知識の共有は必要だと思います。
が、しかし私の経験から、興味や必要性を感じない書籍は何回読んでも記憶に残りません。つまり、知識や仕事の活用へと発展しないのです。
自らその価値を感じることによって読むか読まないかを判断するべきだと考えています。
社会人として自身の行動(読む or 読まない)には責任が伴います。たとえ後輩であっても、同じ職場の同僚として相手の行動を受け入れることも時には必要です。
episode talk
以前に勤務していたクリニックでは歯科医師、歯科衛生士の数名ずつのチーム制で診療していました。
同じチーム内の勤務医の先生が新人の私に、“この付箋が付いているページのマーカーが引いてあるところを読んでおいてね。すごく大事だから。”と、『クリニカルカリオロジー』を渡してくださいました。
かなりのページ数でしたのでいつまでにお返しすればよいかを尋ねると、“この本は自分のだからいつでも良いよ。家に持って帰って読んで。”と言ってくださいました。
安堵したのと同時に、この重い−−物理的にも、内容的にも重量感たっぷりの本をもって帰るのか…と思い、パラパラとページをめくると背表紙の内側にクリニックの印が押してありました。
そうです、この本は間違いなくクリニックの『クリニカルカリオロジー』の、3冊中の1冊。どこかで取り間違えてしまったのか、勤務医の先生はクリニックの本にマーカーを引いてしまっていたのです。
そのことを先生にお伝えすると、驚くのと同時に“いいや。買い取る。この先も必要だから。”とおっしゃいました。
そのときは何とも思いませんでしたが、後に私自身も『クリニカルカリオロジー』を見た後、購入し何回も熟読するにいたった経緯から、先生のその言葉の意味を痛感しました。
結果として、その『クリニカルカリオロジー』は買い取にはならずに、勤務医の先生がご開業する際に院長先生が新しいものをプレゼントされていました。
その後、マーカーが引かれた『クリニカルカリオロジー』は、新人が教本として扱う際にかならず、“この本色々と書き込まれています。見にくくなっています。”と言われる伝説の本になっていました。
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現在は絶版となり、ソフトカバーの「普及版」が販売されています。
秋の夜長に、ぜひご一読ください。