世界からむし歯をなくしたい!ミャンマーボランティア活動 Part.1 ボランティア団体との出会い

はじめまして。歯科衛生士の梅谷有未と申します。

私は、『歯みがきで世界から虫歯をなくす会』に所属しており、コロナ禍前まで、ミャンマーで歯みがき指導を行うボランティア活動に参加していました。

ミャンマーは、ほぼ歯みがきの習慣がありません。だからこそ、私にとってのこの活動は、歯科衛生士本来のやりがいを思い出すことができる大切な時間です。

そんなミャンマーでのボランティア活動の様子をみなさんにお届けできたらと思います。

今回は、ボランティア団体との出会いについてです。

歯みがきで世界から虫歯をなくす会
ミャンマーへのボランティア出発前の集合写真

歯科医院を飛び出したくなった私

臨床を続けて12年目のころ、国の方針の中に“オーラルフレイル予防”が盛り込まれ、メディアなどでも口腔ケアについて取り扱われることが増えていました。

そんな中で、よく耳にするようになった言葉が“予防歯科”。

多くの歯科医院が予防歯科をアピールするようになり、私の勤務先も波に乗って、スタッフ一同とある勉強会に参加。予防歯科をアピールしはじめました。

すると、患者さんの来院理由が「予防がしたいから」、求人募集で面接にきた歯科衛生士の方も志望動機に「予防がしたいから」という感じで、世間が予防に興味をもち本来なら歯科医療従事者として喜ばしい“予防歯科ブーム”が起きていました。

そんな中、あまのじゃくな私は「予防歯科ってなんだ?」という状態。

もちろん、ブーム前からしっかり予防を中心とし、歯科衛生士業務を行っている方もいましたし、そのような医院もたくさんありました。

ですが、歯科衛生士は“予防のプロ”であり、歯科衛生士の仕事そのものが患者さんの将来につながると考えている私は、ただ“予防”という言葉だけが大きくなっていることに疑問を感じていました。

個人的な考えですが、予防歯科は、歯科に通ってメインテナンスを受けるということだけではなく、患者さんのお口に対する意識と行動を変えるサポートを行い、歯科疾患を予防することで、その方の将来をより良くするためのもの。

そう考えていた私は、ふと思いました。

「来院しない人や、歯科に興味がない人はどうなるの?」「そんな人に自分からアプローチしに行きたい!」

歯科衛生士としてかかわり、わずかでもそんな方々に何かをもたらせたら…と思いを馳せていたのでした。

ボランティア団体との出会い

「じゃあ、何からはじめよう!?」

そう模索している中で、漠然と思ったことが「まったく知らない土地で、歯ブラシをメインに何かしたい。」ということ。それもできるだけ歯科医療が普及していなくて、予防なんて考えもない地域がいい。

とりあえず、辺境にて医療活動を行っている大手団体にボランティア登録をしつつ、歯科衛生士ができる活動を模索していました。

そんな中、SNSを開くと、ミャンマーを中心に活動している『歯みがきで世界から虫歯をなくす会』のページがでてきました。

歯みがきで世界から虫歯をなくす会
「歯みがきで世界から虫歯をなくす会」HP

AIのおかげか(笑)まさにこれだ!!と思い、すぐに翌日の参加説明会に申し込みました。

まさに!こんな活動がしたかった!

歯科助手時代、勤務先の歯科衛生士の方に、「歯科衛生士になったら何がしたいの?」と聞かれたときに「世界からむし歯をなくしたい!」と、とっさに答えていた私にとって、この団体の名前はとても衝撃的でした。

当時「そんなこと無理だよ」と言われたときの寂しさを思い出すとともに、同じ考えの人と出会えたことがとても嬉しかったのを今でも覚えています。

そして翌日。説明会で聞いた活動内容は、やはりとても惹きつけられるものでした。

歯みがきで世界から虫歯をなくす会
説明会の様子

その頃、すでに団体としての活動は6年目。

発足時に作った、ミャンマー語の歯みがきの歌をテーマソングに、毎年さまざまな方法で“歯みがきの必要性”を子どもたちに伝えた結果、ここ数年は、子どもたちが歯みがきの歌を歌いながらスタッフを出迎えてくれるようになったとのことでした。

ミャンマーでも歯ブラシは売っています。歯みがきを知らないわけではありません。

ただ、内戦をはじめとしたさまざまな時代背景の中で、口腔ケアに対しての意識は育たず、どうしても後回しになってしまっているのが現状です。

説明会の中で、特に印象に残っていた内容がこの5つ。

  1. 歯科治療のためではなく、予防を普及するための団体。
  2. 活動の中心は、保健指導と予防処置。
  3. 現地の人たちに、予防の大切さとその方法を伝え、少しでも彼らの将来に役立つようにする。
  4. 同じ場所にまずは10年通うこと、それによって現地の人の行動変容の確認をする。やりっ放しにしない。
  5. 何かを与えるのではなく、得るための手段と方法を教える。

私は、ますます魅力を感じ、出発まで3ヶ月を切っているのにも関わらず、その場で参加申し込みをしました。

翌日には院長に事情を話して有給をいただき、ほぼ勢いのまま、SNSで団体ページを見つけてからわずか3日でミャンマーに行くことを決定しました。

いまだに「知り合いも伝手も何もないのに、よく単身でミャンマーのボランティアに参加したよね」と言われますが、たしかに今考えると、当時の私の行動力は過去最高だったと思います。

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次回は、初めて参加したミャンマーへのボランティア活動についてお話しします。