お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?

こんにちは、お砂糖博士®︎です。おさトーークの時間がやってまいりました。

このコラムでは、皆さんの身近な「お砂糖」について、お砂糖博士®︎が自由に語ります。

「お砂糖の摂り過ぎ→むし歯」は小さな子どもだって知っていますが、もう一歩二歩深いお砂糖のお話をお伝えしたいと思います。

明日の臨床に直接役に立つかは分かりませんが、お昼休みの雑談くらいには役に立つでしょう(笑)。

一日の砂糖の摂取量を答えられない理由

〇〇さんはお砂糖の摂取量が多いかもしれません。少し減らしましょうね。

診療室でむし歯の多い患者さんとお話しをする時、このように声をかけることがありますよね。

そんな時、もし患者さんにこう切り返されたらどうしますか?

(そう言う)あなたは一日に何gの砂糖を摂っているのですか?

これを即答で、正確に答えられる人はなかなかいないと思います。

ですが、なぜ私たちは一日の砂糖の摂取量を答えられないのでしょうか?

まず第一に、忙しい毎日の中で砂糖を正確に計測して摂っている人は、なかなかいないと思います。

血糖値を気にしなければならない疾患をお持ちの方は特別とさせていただきますが、もし毎日毎食、砂糖をはかりで測っていたら家族や周囲の人に「几帳面過ぎる」と少し引かれることでしょう(笑)。

もう一つの大きな要因は、私たちは日々、自分ではない誰かが作った「加工食品」を摂取しているからです。

スーパーやコンビニなどの店舗で販売されているおにぎり、パン、お弁当、お惣菜、お菓子などの加工食品には、砂糖の使用量が記載されていません。ただし、清涼飲料は炭水化物を砂糖の量として換算できます。

また、製造メーカーに問い合わせたとしても「企業秘密です」と言われて答えてはくれないでしょう。

加工食品を食べている以上、私たちは何gの砂糖を食べているかは分からないのです。

だからこそ、自分で調理して食べるということは、砂糖摂取量の管理の観点からも重要なのです。

仮に一日三食、間食も含めすべて自分で手作りした場合、使用した砂糖の量は計測できます。

けれども働きながら家事もしてでは、どうしても調理に時間が取れず、外食や中食に頼らざるを得ない現実もあるでしょう。

むし歯の洪水といわれた時代

ここで、日本人の砂糖摂取量についてある程度の見当をつけるために統計をみてみます。

参考文献:鬼頭 宏 日本における甘味社会の成立-前近代の砂糖供給- 上智経済論集 53(1/2) 45-61 2008-03
参照:鬼頭 宏 日本における甘味社会の成立-前近代の砂糖供給- 上智経済論集 53(1/2) 45-61 2008-03

グラフを見ると、2004年の時点で一日に平均54gの砂糖を摂取していることがわかります。それに比べ、明治時代初頭は一日5.4g。

日本人は、たった150年の間に10倍もの砂糖を摂るようになったのです。

54gといえば、白砂糖で大さじ約6杯分、スティックシュガー(3g)で約18本分です。

また、1974年に特別に尖った砂糖消費量のピークがあります。

この年の一人当たりの年間消費量は約25.6kgで、一日の消費量が70.1g。この頃の6歳児は、97%が乳歯のむし歯があった(※う蝕有病者率)とされ「むし歯の洪水」といわれた時代でした。

大人も子どもも多くのむし歯を抱え、町の歯科医院には一日100人近くの患者が訪れ、一人ひとりに時間がかけられず、「3時間待ちの3分診療」なんてからかわれた時代です。

当時は、世間的にはまだ「予防」という概念が薄かった時代。リコール患者はほとんどおらず、朝から夜までむし歯治療の嵐。

毎日、戦場のような診療風景だったことでしょう。想像しただけで、夢でうなされそうなレベルです。

1974年は、2021年の現在から47年前のことですから、現在70歳あたりの先生や歯科衛生士の方は、卒後すぐにむし歯の洪水を目の当たりにされたはずです。

また、もう現役を引退されていると思われますが、以前勤めていた80歳以上の先代の大院長先生は、働き盛りの第一線で活躍されていました。

代々続く歯科医院にお勤めの方は、ぜひ先代の大院長先生に「その節はありがとうございました」と一言お礼を申しあげて、一度当時のお話を伺ってみるといいかもしれません。

減少する日本の砂糖摂取量

そんな時代を経て、1960年代には、砂糖の取り過ぎは健康のリスクが高まるという研究発表や、砂糖を控えようという風潮が少しずつ高まっていきます。

そして現在は、幸いなことに「むし歯の嵐」は過ぎ去り、6歳の乳歯のう蝕有病者率は45.5%まで減少しています。

この頃の時代の研究報告をまとめて結論した、1977年の「米国の食事目標(通称:マクガバン報告書)」はアメリカ国内だけではなく、世界にも大きな影響を与えました。

1980年あたりから、世界中で本格的に食生活と生活習慣病の関連性が取りざたされ、日本国内でもダイエットや健康ブームが盛んになりました。

平成・令和の昨今では、砂糖の摂取を控える傾向にあり、砂糖の年間摂取量の減少は続いています。

令和元年の最新情報では、砂糖の年間消費量は一人あたり14.1kg、一日の消費量は38.6gです。白砂糖で大さじ約4杯分と少々、スティックシュガー(3g)に換算すると約13本分弱ですね。

お砂糖博士

ただし、ここにはジュースに含まれる「異性化糖液糖」は含まれていません。

令和元年の異性化糖液糖の一日の消費量は一人あたり17.5gとなっているので、これを足すと56.1g。まだまだ油断できない値です。

異性化糖糖液糖については、また後日に解説しますね。

ちなみに、お砂糖消費大国アメリカでは、一日に一人当たり67.5gの砂糖を摂取しています。※ 米国保健福祉省、米国農務省2016年公表

ネットの情報では、実際のところは一日に100g以上摂っているとされています。

そのため、アメリカでは糖尿病患者および予備軍の患者が一億人を超え、人口の1/3を占めているほどです。

いずれにしても、摂取量が多いことは想像がつきますね。

一日の砂糖摂取量の世界的な基準

WHOは、各種生活習慣病とう蝕予防のために、2014年から一日25gを砂糖摂取量として推奨しています。
(参照:WHO 2015 Guideline:Sugars intake for adults and children

25gというと、炭水飲料を1缶飲んだだけで摂り過ぎになってしまいます。日本人は、砂糖の摂取量をまだまだ減らして問題ないということですね。

もし患者さんに「砂糖の摂取は、1日に何gを目標にしたらいいですか?」と聞かれたら、

現在、世界的な基準は25gとされていて、この基準値以内ではむし歯も、その他の生活習慣病も発生しにくいといわれています。

と答えれば、大きな間違いはないと思います。

今回は意外と意識していない、また意識しても計測することが難しい、一日の砂糖の摂取量のお話をしました。

患者さんも自ら好き好んで大量の砂糖を摂取し、むし歯を作っているわけではありません。

加工食品の普及により「食べることが気軽で便利になった社会」の中で生きている以上、砂糖をどのくらい摂取しているのか、ただ分かりづらいのです。

読者の皆さんも、ぜひご自身の一日の砂糖摂取量を意識して過ごしてみてください。

その計測の難しさや摂取の実感の薄さが分かり、患者さんの気持ちに近づけるかもしれません。

教えて!お砂糖博士®︎Questionコーナー

なぜお砂糖博士®︎をはじめたのですか?

自己紹介をしていませんでしたね(笑)。

筆者の私は、静岡県で歯科医院を開業しております。新美寿英と申します。

歯科医療従事者である私自身が、むし歯の三大要因である砂糖について何も知らないこと、また砂糖に関する情報が少ないことにある時ふと気づき自学自習で学びはじめました。

その後、学んだ情報をせっかくなら多くの方にお伝えしようと思ったことがきっかけです。

「お砂糖博士®︎」は、2015年に取得した商標登録で、2016年頃から「お砂糖と上手に付き合うにはどうしたらよいか?」をテーマに、一般市民の方に向けて、ネットや講演活動にて情報をお伝えしています。

もしよろしければ、こちらのお砂糖博士®︎HPをご覧ください。

砂糖摂取量の世界的な基準である「25g」を、患者さんにより分かりやすく説明するには、どうお伝えするのがよいでしょうか?

まず砂糖だけでたとえると、スティックシュガー(3g)で8.3本白砂糖で大さじ2.7杯、小さじ8.3杯です。

具体的な食品でたとえると、

  • ケーキ1切れ:約20~25g
  • 菓子パン1個:約15~20g
  • 板チョコ1枚(50g):約25g
  • コーラなどの清涼飲料:約50~60g

です。代表的な食品の砂糖含有量の大体のイメージを伝えられるようにしておくことが重要ですね。

甘い加工食品の砂糖の多さに、患者さんは驚かれるかもしれません。

***

次回は砂糖の摂取量を減らすために、清涼飲料、パン類、菓子類などの「加工食品との付き合い方」をテーマに、おさトーークしたいと思います。

Webセミナー開催!お砂糖博士®︎が教える 保健指導に役立つ“砂糖”の雑学

10月18日(月)19:00より、姉妹サイトWHITE CROSSにて、お砂糖博士®︎によるライブセミナーの配信が決定しました!

砂糖の歴史や、加工食品の実態、患者さんが実践可能な食事指導が学べる今回のWebセミナー。

保健指導をするなら、一度は受けておきたい「お砂糖観」が180°変わる講座です!

また、配信後は、11月19日(金)23:59までの録画視聴期間も予定しています。当日仕事がある、院内のみんなで見たい、という方にもおすすめです!

この機会にぜひ、お砂糖について学んでみてくださいね♪

お砂糖博士
お申し込みはこちら(無料会員登録が必要です)