歯科医院のチーム力を高めよう!vol.2 歯科でOKRを活用するには?

みなさんが働く歯科医院には、どのような目標がありますか?

歯科医院の中には、毎日の売り上げや新患数、キャンセル率など、さまざまな情報を数値化して目標を立てるよう指示されている医院もあれば、とくにこれといった目標を立てることなく診療している医院もあるかもしれません。

一方で、目標を立てたいと考えていても、「どんな」目標を「どうやって」立てればいいかわからない方もいるのではないでしょうか。

世界的に有名な大企業やスタートアップ企業が、会社全体またはチーム、個人の目標を設定する際に使用する「OKR」。

この連載では、OKRについて詳しく解説し、歯科医院におけるOKRの活用方法をご紹介します!

前回の記事はこちら

vol.1 目標達成の方法『OKR』とは?

歯科医院のチーム力を高めよう!

歯科医院の目標はどうやって決める?

歯科医院でOKRを活用するには、まずはじめに、むこう3ヶ月で達成したい目標(Objective)を決める必要があります。

そのためには、現在歯科医院が抱える問題を把握することからはじめるのがおすすめです。

たとえば、以下のような3つの問題を抱える歯科医院があったとします。

  1. 新患は多いが、中断する人も多く、リコール率が低い
  2. 自費治療が少なく、保険治療が診療の大部分を占めている
  3. 物販の売り上げがほとんどない

それぞれの問題を解消するためには、歯科医院の「リコール率」「自費率」「物販の売り上げ」を上げる必要があります。

ただし、OKRのObjectiveには、人をワクワクさせるようなこと、そして数字で表せないことを設定しなければいけません

上記の問題を解決するためのObjectiveとしては、以下のような例が挙げられます。

  1. 地域に愛される歯科医院になる
  2. 患者さんに白くて健康な歯を手に入れてもらう
  3. 患者さんに歯科専売品の良さを広く知ってもらう

そしてこの中から、歯科医院にとってもっとも優先したい目標を選ぶとObjectiveが決まります!

Objectiveが決まれば、次はそれを実現できたかどうか判断する指標「Key Results(KR)」を決めていきます。

KRには、数字で表せることを3つ設定する必要があります。設定する際は、達成できるかどうか少し心配な、でも達成したら自分やチームがハッピーになれるような数値を考えます

たとえば、先ほどの目標の中から「① 地域に愛される歯科医院になる」を、Objectiveに設定するとします。

これを達成できたかどうかを判断するKRとしては、以下のような項目が考えられます。

  • リコール率を80%以上にする
  • キャンセル率を10%以下にする
  • 新患のうち紹介患者さんを50%以上にする

そして、毎週の振り返りでは、それぞれの項目を達成できそうかどうかについて、自分の自信度を1〜10で表します。

KRを設定した時点で、5くらいの自信度であれば良いKRです。

歯科医院のOKR ObjectiveとKey Results

はじめの1〜4週間でやるべきことは?

ObjectiveとKey Resultsが設定できたら、次は今週やるべき最重要事項を設定します。

ここでは、「やらなければいけない(must)」ことを「P1」、「るべき(should)」ことについては「P2」と表記します。P1とP2については、あわせて3〜5つ設定します。

先ほど設定したOKRを例にして考えると、以下のような項目が考えられます。

  • P1→現在のリコール率・キャンセル率を把握する、紹介患者さんへの特典について院長と相談する
  • P2→60分以上のアポイントの場合は前日に連絡する

歯科医院のOKR P1・P2

今週のP1とP2が設定できたら、来週から4週間のうちに起こってほしいことや、今後進める予定になっている最重要事項を設定します。

ここには、来週以降P1やP2に上がってくることなども含まれます。

例としては、以下のようなことが挙げられます。

  • リコールの連絡方法を増やす
  • リコールの内容をDH全員で見直す
  • 中断した患者さんのリストを作成する
  • 患者さんのセルフケア用品について問診する

歯科医院のOKR 4週間のプロジェクト

重要ポイント!健康・健全性のチェック

最後に、健康・健全性をチェックする項目について説明します。

この項目では、結果を出すための行動によって、OKRを実践している人たちの健康や、仕事の健全性が保たれているかを客観的に評価します

OKRを実践している人たちの肌感覚でジャッジするという簡単な評価方法ですが、これが非常に重要なポイントです。

健康・健全性の項目の例としては、以下の2つを挙げました。

  • スタッフの健康
  • 患者さんとの関係性

この項目が設けられていることによって、スタッフがOKRを実践する中で、無理をして体調を崩したり、精神的にしんどくなったりしていないかということを確認できます

患者さんとの関係性については、目標を追うことに必死になりすぎて、患者さんとのコミュニケーションがおろそかになっていないか、また厳しい指導が増えていないかということなどもチェックすると良いでしょう。

歯科医院のOKR 健康・健全性

他にも、院長と円滑なコミュニケーションがとれているか、歯科衛生士と歯科助手の間で連携がうまくとれているかなどを評価項目に入れても良いかもしれませんね。

健康・健全性は毎週確認するため、健康面だけでなく、コミュニケーショントラブルが起きやすい部分やを評価項目に入れておくと、トラブルを未然に防ぐことも可能になります

あとは毎週のルーティーンとして、週末にこの表を振り返り、その週に達成できたことをスタッフ全員でお祝いしましょう!

毎週のミーティングでは、以下のような順序で進めると良いのではないかと考えます。

  1. ObjectiveとKey Resultsを確認する
  2. 1週間で達成できたP1・P2について振り返る
  3. 次週のP1・P2を設定する
  4. 4週間のプロジェクトに追加する項目がないか確認する
  5. 健康・健全性を確認する
  6. 設定したP1・P2や4週間のプロジェクトに無理がないか再確認する

OKRの流れ

週末には1週間の振り返りのみを行い、週はじめにその週の予定を決定してももちろんOKです。

その場合は、① ② ⑤ と、③ ④ ⑥ に分けて行うと良いでしょう。週末に① ② ⑤ のみ行うのであれば、たった5分もあればできます!

一度のミーティングで全部済ませたいという場合でも、①〜⑥の流れに沿って進めていけば15〜20分程度で終わるはずです。

あとは、P1やP2を行うために、どういった時間を活用するか、誰ができそうで誰がサポートするかなども話し合えると、よりいっそう目標の達成に近づけるのではないかと思います。

***

来院する患者さんに安心して治療を受けてもらうためにも、歯科医院で働くスタッフがひとつのチームとなって診療に取り組むことは非常に重要です。

ぜひOKRを活用し、歯科医院の目標についてスタッフ全員で共有しましょう♪

次回は、チームや個人におけるOKRの活用方法について解説します。

参考文献:クリスティーナ・ウォドキー著, 二木夢子訳, 及川卓也解説(2018)『OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』日経BP

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