お久しぶりです、歯科助手の松田由紀子です。
昨年は歯科助手の私がそれまでに取得した認定資格と経験から、クリニックコンシェルジュ目線をまじえた歯科医院の整理収納の連載を持たせていただきました。
歯科助手は国家資格を持たない歯科医療従事者です。
だからこそ色々なことに挑戦してモチベーションを上げていくことで、この仕事にやりがいを感じ、長く楽しく続けることができると思っています。
今回は、新たに取得しました「第二種歯科感染管理者」についてのレポートをいたします。
令和3年4月25日(日)、東京都の3回目の緊急事態宣言初日に、NPO法人日本・アジア口腔保健支援機構(JAOS)主催の第二種歯科管理感染管理者検定を受験しました。
JAOSや第二種歯科感染管理者の資格については以前より知っていましたが、昨年12月のdStyleの記事やセミナー情報を見てから、受験を前向きに考えるようになりました。
その理由としては、平成30年度の診療報酬改定と、これまで自分が勤務してきた医院や講師としてお伺いした医院様での院内感染対策の意識や、処理方法の違いを見聞きしたという経緯があります。
また、新たな感染症が世間を騒がせている今、自分の知識の再確認と軌道修正、更新をしたかったからです。
施設基準とは
皆さんは「施設基準」という言葉をご存じでしょうか?
診療行為の中には、保険医療機関が一定の人員や設備を満たし、その旨を地方厚生局に届け出て初めて点数を算定できるものがあります。
この満たすべき人員や設備を「施設基準」といい、点数表とは別に厚生労働省告示が定められ、また細かい取扱いが通知で示されています。
平成30年度診療報酬改定にて示された、歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準(歯初診)によって、歯科初診料および再診料が引き上げられました。
そのため、多くの歯科医院が、この「施設基準」の届け出をしているかと思います。
歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準(歯初診)とは
- 口腔内で使用する歯科医療機器等について、患者ごとの交換や、専用の機器を用いた洗浄・滅菌処理を徹底する等十分な院内感染防止対策を講じていること。
- 感染症患者に対する歯科診療に対応する体制を確保していること。
- 歯科外来診療の院内感染防止対策に係る研修を4年に1回以上、定期的に受講している常勤の歯科医師が1名以上配置されていること。
- 職員を対象とした院内感染防止対策にかかる標準予防策等の院内研修等を実施していること。
などが挙げられます。
私たちスタッフもその内容を理解し、院内感染防止対策をおこなう一員としての自覚が必要です。
第二種歯科感染管理者資格取得レポート
さて、受験に先立ち、あらかじめ検定事務局より送られてきたテキストやレジュメには目を通しておいた方が賢明です。
自院でおこなっていることとそうでないこと、また間違って認識していたことなどをチェックしておくと、講義内で答え合わせができますし、しっかりと聴く(学ぶ)ポイントを事前に把握できるのではないでしょうか?
私の場合は、合格だけが目的ではなく「知識の再確認」も重要でしたので、テキストやレジュメの他に、これまでに参考になった院内感染対策の資料などを読み返したり、dStyleの感染管理でタグ付けされた記事も読みました。
ここまで書くと、何も不安がないまま受講にいたったように思われるかもしれませんが、実は大きな不安がありました。
それは…オンラインということでした。
これまでたくさんのセミナーへ出かけてきましたが、リアルのセミナーあれば、そこで出会う歯科医療従事者の方々と過ごす時間も、貴重な学びになります。
そのような考えであったので、オンラインセミナーは置き去りにならないか?また、Zoom未経験であったので、パソコンの設定や視聴が問題なくできるか?など、多々不安がありました。
しかし、主管のA.R.メディコム・インク・アジア・リミテッドの担当者様からのわかりやすいご案内や個別のメール対応で、無事に当日を迎えることができました。
当日の流れは以下の通りです。
11:45〜 検定事務局からのお知らせ
12:00〜13:00 昼休憩
13:00 午後の部の講義開始
14:30 講義終了
講義後、Zoomのチャット機能にて質疑応答
試験についての説明(午後の講義中に、検定問題のURLがメールにて届く)
15:00 検定試験開始
16:00 検定試験終了
※ 以上は4月25日のスケジュール
講義のプログラムは以下の通り。
- 感染対策の要求事項
- 感染対策の基本
- 手指消毒と手荒れ予防
- 診療施設への感染対策
- 医療従事者の感染対策と注意する感染症
- 器財の洗浄・消毒・滅菌
- インプラント手術時の感染対策
現在は“コロナ禍”ということもあり、院内における新型コロナウイルス最新対策についても、講義内容に加わっていました。
残念ながら、教育体制の整っていない歯科医院では、「標準予防策(スタンダードプリコーション)」という言葉も知らない方や、洗浄・消毒・滅菌の違いも理解していない方もいらっしゃいます。
この講義ではそのような基礎の内容はもちろん、先に挙げた施設基準や医療法で義務付けられた項目から、手洗いや環境整備なども解説がありました。
歯科医療従事者として患者さんや一緒に働く仲間、そして自分自身にとって安心安全な医院を作り、継続していくための内容を基本から学ぶことができました。
また、オンライン講義内に、Zoomのチャット機能でリアルタイムに質問ができます。
講義中に質問ができなかった場合も、アンケートにて質問内容を記載すると、後日メールで返信していただけました。
対面のセミナー同様に、疑問を疑問のままで終わらせないための工夫がされています。
検定から3週間ほどで、合否通知と、個人の「認定カード」と所属する歯科医院の「歯科感染管理施設認定書」登録のお知らせが届きます。
その後、認定カードの発行が完了すると、晴れて有資格者となります。
また、第二種歯科感染管理者を取得すると、歯科感染管理施設として登録することも可能です。
歯科感染管理施設の登録により、JAOSの公式HPに医院名が掲載されますので、来院される方々へ安心な歯科医院であることもアピールできます。
医院のホームページやスタッフブログでお知らせすれば、患者さんの医院を選ぶ選択肢のひとつになるかもしれませんね。
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歯科医院の院内感染対策はルーティンワークであることから、「当たり前のこと」を当たり前におこなっていると思います。
何でもそうですが、一度習慣になってしまうと、間違いを疑わなくなり改善が難しくなります。
定期的に「これは何のためにやるのか?」を考え、話し合う機会を設けることは大切だと思います。
私も認定資格取得を経て、今後さらに気を引き締めて院内感染の予防に取り組みます。