2021年、初めての掲載になります。みなさんはどのような年末年始をお過ごしになったでしょうか。
早いもので、この連載も折り返し地点を過ぎました。
思えば、連載開始前の2019年12月は現在とはまったく違う環境、社会情勢でした。
中国での新型コロナウイルス感染がちらほらとテレビのニュースから流れてきておりましたが、私自身はまったくの他人ごととしか考えておらず、正直なところ無関心でした。
医院の感染管理を担う「滅菌技士第二種」を取得しているにも関わらずのありさまで反省しております。
そして、その後2020年になり、感染が猛スピードで世界中に拡大し「パンデミック」が起こり、日本にも緊急事態宣言が発令されました。
このことにより、大げさではなくご自身の人生が大きく変わられた方がいらっしゃるのではないでしょうか。
私の身近にも転職を余儀なくされた方、勤務体制やお給料のことなどでトラブルになってしまった方々がいらっしゃいます。
このようなコロナ禍の中、私自身が常勤として勤務している歯科医院では診療を大幅に縮小したので、かなり出勤日数が減りましたが、生活保障はほぼ変わりませんでした。
また、非常勤で勤務しております都内の歯科医院では、約1カ月半のお休みをいただくなど、とても恵まれた環境で仕事ができていることに感謝した年になりました。
現在も自粛生活は続いており、社会的には在宅ワークが推奨されています。
私自身の考えでは、歯科衛生士の実務労働内容は「接客業」だと思っています。
主な業務内容が相手(患者さん)への施し(効果・期待をしてことを行う、事態を改善するようなことを行う)だからです。
つまり、在宅では不可能な業務内容の職種であると…
ですが、今回の自粛生活により、歯科衛生士でも在宅ワークできることがあると気が付きました。
日頃、診療で忙しく手が回らない、または先延ばしにしてしまっている事務的な業務内容を見直し、遂行する良い機会なのではないでしょうか。
また、そういった事柄は定期的な見直しが継続して必要となります。
これからも自粛生活が続くと予想される中、すべてのスタッフにこの業務内容を適応することはできないと思いますが、在宅ワークの一環として歯科医院に取り入れ「働き方改革」の一役を担う可能性があるのではないかと思います。
社会に必要とされるためには、私たちの働き方を、これからもさらに変貌し続けるであろう社会情勢に少しずつ合わせていかなければならないのかもしれません。
立ち止まることができる今だからこそ、自身を、そして身を投じている環境を見つめ直すチャンスと捉えてはいかがでしょうか。
社会が様変わりした2020年、そしてこれからも色々なことがあるかと思いますが、私はこれから歳を重ね生活環境が変わっても、歯科衛生士としての仕事を続けていきたいと思っています。
これは私の人生における決意です。
仕事でしか得られないこの気持ち
以前勤務していた歯科医院の院長先生に「人は働くことで輝くことができる」と言われたことがあり、この言葉は今でも私の心に残っています。
当時は「ん?どういう意味だろう?」と思っていましたが、歯科衛生士としてのキャリアを積んでいくうちに何となくですが分かってきたことがあります。
仕事をしていると、精神的にも肉体的にも大変なことがたくさんあります。
家族や親しい友人ではない他人と一日の大半の時間を過ごし業務を行い、結果を出さなくてはなりません。
さらに歯科衛生士という職種柄、患者さんごとに適切なお話しの仕方や施術内容を選択し、実行しなくてはなりません。
そのためには、小さな変化に素早く気付き、見落としをしないよう常に360度アンテナを張り続けなければならず、かなりのプレッシャーです。
ですが、仕事をしているからこそ、この負担が自分自身の成長の「糧」となり「やりがい」に繋がるのだと、自身の経験からも確信しています。
私は現在の立場から、後輩スタッフの職務を評価することがあります。
その際に重要視するのは、ものごとに対する器用、不器用さではなく「とり組み方」で、以下のような事柄に焦点を当てて見守るようにしています。
- 自分のことよりも他者(患者さんやスタッフ)を優先して考える
- 平等ではなく公平な考え方ができる
- 期日を守るために優先順位を組み立てて進行できる
- 一緒に取り組むスタッフと一丸となって遂行することができる
- ものごとにも人にも誠実であること
上記の部分にこそ、他者への思いやりや人柄があらわれると考えています。
そのため、仕事の成果の成否に関わらず、その過程での学びや真摯的な姿勢を大切にしています。
後輩から学ぶ仕事の仕方
以前勤務していたクリニックの後輩スタッフから、仕事の仕方を学んだことがありました。
このスタッフは常に明るい笑顔の歯科衛生士で、依頼した仕事の期日をかならず守りますし、仕事の仕方がとても丁寧でした。
また、私がもっとも感心したのは、このスタッフと一緒に仕事をするスタッフはその後、必ず成長がみられるということでした。
このスタッフはいつもユニフォームのポケットに六つ折りにしたA4の紙を入れていました。
その1コマには、その一週間でやらなければいけない事柄が箇条書きにして書かれてありました。
残りの5コマには、その箇条書きした内容を業務の実日数である5日間に振り分け「どのように」「いつ」「誰とやるのか」、さらにはその仕事の見直しや最終確認日などを記入していました。
そして、業務完了ごとにチェックしていく。この作業を繰り返しながら仕事をしていました。
このような工夫が、仕事の素晴らしい成果に繋がっているのかと感銘しました。
また、一緒に仕事をするスタッフへはその目的や期日を明確にし、常に感謝の気持ちを伝える配慮を忘れませんでした。
さらに、後輩スタッフに対しては、見守るだけではなく適宜自分の経験をもとにアドバイスをしていました。
このことから後輩スタッフは仕事の仕方を学ぶだけではなく「できる」という小さな自信をつける貴重な経験を積み重ねていったのだと思います。
このような考え方や思いもまた、仕事でしか得られないものですよね。
この繰り返しから、人は「成長」し輝くことができるのではないかと、今となっては思っています。
みなさんも今だからこそ、一度立ち止まり、仕事に対するご自身の在り方を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
そこには、新たな光があるかもしれません。
チーフ歯科衛生士の流儀
series1.医院のルールづくり
part1.働きやすい職場環境について考える
part2.あったら良いな、こんなルール
part3.ルールの活用方法
series2.スタッフ育成のポイント
part1.新たな仲間を受け入れる準備はできていますか?
part2.こんな質問にどう答える?「教育システムはありますか」
part3.相手に伝わる褒め方・叱り方
series3.転職しないコツ〜長く勤められる医院とは〜
part1.職場環境に求めること
part2.仕事でしか得られないこの気持ち