こんにちは。歯科衛生士の岡崎と申します。
近年、お口の健康への意識が高まり、歯科医院だけでなく薬局にもたくさんの口腔清掃用具が並んでいるのを、みなさんもよくご覧になっていると思います。
一人ひとりの顔が違うように、お口の中もそれぞれ違います。
それぞれの特徴にあった口腔清掃用具の選択は、清掃時間の短縮や効率アップにつながります。
後編では、12歳ごろの中学生から65歳以上の老年期までの、お口の中の特徴と口腔ケアのポイント、おすすめ歯ブラシをお伝えいたします。
前編はこちら
ライフステージ別、口腔ケアのポイントと歯ブラシの選択 乳児期〜小学校期編
⑤ 中・高等学校期(11~19歳)
永久歯が生えそろう時期です。
本人みがきは丁寧に行うことができる年代ですが、生活習慣の乱れやホルモンの影響で、歯肉炎などが多発しやすい時期です。
家庭でのケアのポイント
歯列や口腔内状況にあった歯ブラシの選択が重要です。
また、よく噛んで食べることも習慣づけましょう。
ゆっくりよく噛んで食べることで唾液分泌量が増加し、う蝕予防につながるうえ、顎骨の発達にも良い効果があります。
そのために、食材や調理法を工夫することも大切です。
プロフェッショナルケアのポイント
中・高等学校期は、歯科医院への定期検診の習慣化にも重要な時期です。
また、転倒や部活動による口腔への外傷を予防するため、必要に応じてマウスピースを作成しましょう。
- 定期検診の重要性を伝え、習慣づける
- 口腔内の変化や現状を説明した上でTBIを行う
- 染め出しを行うなど、可視化や数値化でわかりやすく説明する
おすすめ歯ブラシの特徴
歯列の状態に応じて、ヘッドの形状や大きさを選択します。
歯ブラシの毛先が柄よりもはみ出たら交換するようにしましょう。
また、部活動や勉強で時間がなく十分な清掃時間を確保できない場合は、ヘッドを大きめのものにするといいです。
例:ルシェロ B-20 M/S ピセラ(ジーシー)、クリニカアドバンテージNEXT STAGE ハブラシ(ライオン)
⑥ 成人期(20~29歳)
生活習慣が乱れることや、保護者の管理下から外れることによる口腔清掃状況の変化がおきやすい時期です。
生活スタイルに対応した歯ブラシなどの口腔清掃用具の選択が必要となってきます。歯周病の対策も、この時期から必要です。
家庭でのケアのポイント
だらだら食べやだらだら飲みをしないことや、歯みがきをしないで寝ることがないように、規則正しい生活を意識することが重要です。
特にお酒や炭酸飲料といったpH5.5以下の酸性の飲食物は、摂取するタイミングに気をつけましょう。
プロフェッショナルケアのポイント
二次う蝕や歯周炎の多発時期なので、注意して検査を行います。
歯間部の大きさに合わせてフロス、歯間ブラシの選択を行い、指導しましょう。
必要に応じて、禁煙指導や食生活指導、妊婦歯科検診も実施していきます。
おすすめ歯ブラシの特徴
歯ブラシだけでなくフロスや歯間ブラシ、歯磨剤、フッ化物洗口剤など、口腔内の状況に合わせた口腔清掃用具の選択が基本です。
時間のあるときだけでも、歯ブラシの他にワンタフトブラシやフロス、歯間ブラシを併用するようにしましょう。
例:システマハブラシ(ライオン)、TePe セレクトコンパクト ミディアム
⑦ 壮年期(30~65歳)
自覚症状のほぼない歯周病予防が、特に重要となってくる年代です。
定期検診を基本とした口腔衛生管理が必要となってきます。
家庭でのケアのポイント
歯間部の広さや歯列の状況に応じて、口腔清掃用具を選択することが大切です。
家庭では、歯周病予防に特化した歯磨剤の選択や洗口剤の使用がおすすめです。
また、よく噛んで食べることは肥満予防にもなり、それは生活習慣病の予防にもつながります。一口につき30回ほど噛むことを意識しましょう。
プロフェッショナルケアのポイント
歯の喪失数や全身疾患を持つ方が増加する年代なので、口腔衛生と全身の関わりについての知識付けや、それに伴う行動変容を促します。
年齢層が高くなるにつれて根面う蝕も増加傾向にあるので、歯周ポケットの確認と併せて症状の聴取を行い、見落とさないようにしましょう。
- 定期検診に加えて、必要な方にはPMTCをおすすめする
- 全身疾患と歯科との関連性についての説明を行う
- 妊婦歯科検診の実施
- 歯周病検診の実施
おすすめ歯ブラシの特徴
可能な方は一つひとつの歯の特徴に合わせて、口腔清掃用具を使い分けることもおすすめです。
たとえば、特定の臼歯部が歯肉退縮していれば、そこには毛の先がやわらかいもの、咬合面の裂咬が深ければ毛の先が長いものやワンタフトブラシを使用するなど、時間のあるときだけでも、ケアを行うようにしましょう。
例:ガム歯周プロケア デンタルブラシ #518(サンスター)
⑧ 老年期(65歳~)
歯の喪失数の増加や嚥下機能の低下が見られやすい年代です。歯肉退縮も起こりやすく、それに伴い根面う蝕も増加します。
特に臼歯部を喪失すると、踏ん張りがきかなくなり、転倒リスクが増加したり、会話に支障が出てくることもあります。
家庭でのケアのポイント
オーラルフレイルを予防し、健康寿命を伸ばすためにも、この時期にはお口の体操を取り入れるようにしましょう。
また、ゆっくりよく噛んで食べることを意識して食事をしましょう。
よく噛むことで、唾液分泌が促されたり、誤嚥性肺炎のリスクを下げられたり、内臓の消化吸収の負担を軽減させることができるなど、さまざまなメリットがあります。
プロフェッショナルケアのポイント
オーラルフレイルを避けるために、お口の体操や、検査を定期的に行います。
- 根面う蝕の早期発見に努める
- 後期高齢者医療歯科検診の実施
- 8020の達成に努める
おすすめ歯ブラシの特徴
だんだんと筋力が衰えてくるため、持ちやすいようにグリップの太いものを選択しましょう。
例:Ci800 ハイアダルト用 超先細+フラット毛 M ふつう(Ciメディカル)
細かい動きがしにくいようなら、ヘッドの大きなものを選択し、口腔清掃効率を下げないように工夫しましょう。
歯間部の大きさによって、歯間ブラシを選択することも大切です。
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みなさんの現在のライフステージはどこでしたか?
自分にあった口腔清掃をすることは、健康寿命を伸ばすことにつながります。
ぜひこの機会に、現在の自分のお口の中の特徴やケアの方法、歯ブラシの選択について考えてみてはいかがでしょうか。