ライフステージ別、口腔ケアのポイントと歯ブラシの選択 乳児期〜小学校期編

こんにちは。歯科衛生士の岡崎と申します。

近年、お口の健康への意識が高まり、歯科医院だけでなく薬局にもたくさんの口腔清掃用具が並んでいるのを、みなさんもよくご覧になっていると思います。

一人ひとりの顔が違うように、お口の中もそれぞれ違います。

それぞれの特徴にあった口腔清掃用具の選択は、清掃時間の短縮や効率アップにつながります。

今回は、ライフステージごとに見られるお口の中の特徴をもとに、セルフケアとプロフェッショナルケアのポイント、そして参考にしていただきたい歯ブラシの特徴をまとめました。

前半では、生後5ヶ月の乳児期から10歳ごろの小学校期までの特徴とポイントをお伝えいたします。

① 乳児期(生後5~8ヶ月頃)

個人差がありますが、下顎前歯の生えはじめる時期は、おおよそ生後5~8ヶ月です。

家庭でのケアのポイント

乳児は唾液分泌量も多く、洗浄効果が高い時期です。

そのため、この時期の歯みがきは、口腔清掃を行うというよりは、お口の中に触れるということに慣れさせることが重要です。

おすすめ歯ブラシの特徴

この時期の乳児には、ガーゼやシリコンタイプなどの柔らかい素材の歯ブラシといった、お口の中を傷つけない素材の口腔清掃用具をおすすめします。

例:プロスペック プラス〈ミニ〉(ジーシー)

プロスペック歯ブラシプラス〈ミニ〉(ジーシー)
プロスペック プラス〈ミニ〉(引用:Amazon)

② 乳児期(10ヶ月~1歳)

一般的に、10ヶ月頃から乳歯の萌出が増えてきます。

家庭でのケアのポイント

乳歯が生えた時点から家庭でのケアが必要ですが、この時期も引き続き、口腔清掃としての歯みがきというよりは、お口の中に触れることに慣れるための歯みがきということを意識して行いましょう。

そのため、子どもの小さなお口の中でも保護者が操作しやすいコンパクトな歯ブラシの選択がおすすめです。

歯みがきが苦手なようなら、好きなキャラクターが描かれた歯ブラシや、おもちゃ型の歯ブラシを使用するなどの工夫をするといいです。

また、う蝕の原因菌は唾液を介して保護者からうつることが多いため、親が噛んだものを与えたり、箸やスプーンなどを共有しないようにしましょう。

プロフェッショナルケアのポイント

1歳頃からは歯科医院に慣れることを重視して、子どもの状態に合わせて口腔清掃などを行いましょう。

  • 1歳6ヶ月検診の実施
  • 保育所などでの歯科検診
  • フッ化物の歯面塗布

おすすめ歯ブラシの特徴

ヘッドが小さく小回りがきくもの、お口の中が見やすいように、頸部が細長い歯ブラシがおすすめです。

また、キャラクターや動物などの柄がついているものや、おもちゃ型など、子どもが好きなデザインのものを使用することで、歯みがきに興味を持ってもらい、習慣づけましょう。

例:クリニカKid’s ハブラシ 0~2才用(ライオン)

クリニカKid’s ハブラシ 0~2才用(引用:ライオン公式HP)
クリニカKid’s ハブラシ 0~2才用(引用:ライオン公式HP)

③ 乳幼児期(2~3歳)

2歳から3歳は、乳歯が生えそろう時期です。

乳歯は永久歯と比較すると、エナメル質が薄く硬度が劣るため、一度う蝕になると進行が早いので注意が必要です。

家庭でのケアのポイント

2歳になると内臓機能の発達が進むことにより、食事量や補食としてのおやつの頻度も増えてくるので、う蝕リスクもだんだんと上がってきます。

食事やおやつは可能なかぎり決まった時間にとることを意識し、糖分の摂取量にも気をつけましょう。

口腔清掃については、保護者の目の届くところであれば、本人みがきをはじめられる時期なので、積極的に行ってもらいます。

この時期になると、仕上げみがきをいやがりはじめる子どもも出てきますが、まだ慣れない本人みがきだけでは、十分な口腔清掃ができません。

本人みがきのあとには、保護者によるチェックと仕上げみがきが必要なので、よく褒めながら仕上げみがきをするなど、工夫が必要です。

ケアのポイントとしては、本人みがき用と仕上げみがき用で歯ブラシを変える方が、よりみがきやすくなります。

プロフェッショナルケアのポイント

乳歯のう蝕が重症化すると、永久歯の成長や歯列不正に影響するため、早期発見と早期治療に努めることが大切です。

経過観察の乳歯にも気をつけましょう。

  • 歯科医院が苦手にならないように、無理をせずにできるところまで口腔清掃を行う
  • 保護者の悩みや不安もカウンセリングし、仕上げみがきの指導も行う
  • 短時間での診療を意識し、定期的に検診する
  • フッ化物の歯面塗布
  • 3歳児歯科検診の実施

おすすめ歯ブラシの特徴

本人みがき用は、柄が太く、子どもが持ちやすいものを選ぶようにしましょう。

また、力加減がまだ難しい時期なので、歯肉を傷つけない先丸毛を選択するといいです。

例:クリニカKid’s ハブラシ 3~5才用(ライオン)

仕上げみがき用は、柄が長細く、ヘッドがコンパクトなものを選びましょう。

④ 幼児期から小学校期(4~11歳)

5歳~7歳ごろに第一大臼歯が萌出し、乳歯と永久歯が混じる混合歯列期に入ります。

特に第一大臼歯の生えはじめは奥歯で段差が生じるので、みがき残しが多くなりやすく、よごれが溜まりやすい箇所になります。

家庭でのケアのポイント

みがき残しが増えやすい奥歯まで届くような、コンパクトな歯ブラシが好ましいです。

怪我が増える時期でもあるので、転倒による歯の損失を確認するためにも、本人みがきは保護者の目の届くところでしてもらいましょう。

プロフェッショナルケアのポイント

歯列矯正が必要かどうかも、この時期から見定めることができるので、定期検診の際には歯列矯正のメリットとデメリットの説明を行います。

歯列不正は将来の口腔清掃の難しさや、う蝕・歯周病・顎関節症リスクにもつながってくるので、その点も保護者や本人に伝えることが大切です。

  • 4歳頃からフッ化物洗口開始。可能な子には家でのフッ化物洗口をおすすめする
  • 保育所や幼稚園等での歯科検診
  • 歯科衛生士による本人みがきと保護者みがきのチェック
  • う蝕予防のシーラント処置
  • 定期的なフッ化物の歯面塗布

おすすめ歯ブラシの特徴

お口の中の大きさや歯列の成長に合わせて、デザイン性よりも機能性を重視して歯ブラシを選択しましょう。

例:タフト17(オーラルケア)プチソフト(オーラルケア)

タフト17(引用:オーラルケア公式HP)
タフト17(引用:オーラルケア公式HP)

また、6歳頃になると歯ブラシの持ち方をペングリップに変更しはじめます。

持ちやすい柄のものを選択するようにしましょう。

ペングリップ
ペングリップ

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乳期〜小学校期の口腔ケアや食生活は、永久歯の成長や歯列不正に影響することがあります。

ぜひこの機会に、患者さんやご自身のお子さんの口腔ケアの方法や歯ブラシの選択について考えてみてはいかがでしょうか。

後編では、12歳ごろの中学生から65歳以上の老年期までの、お口の中の特徴と口腔ケアのポイント、おすすめ歯ブラシをお伝えいたします。

お楽しみに!