『FACT FULNESS(ファクトフルネス)』から学ぶ、歯科衛生士キャリアの考え方

こんにちは。歯科衛生士の竹下と申します。この連載ではさまざまな書籍を歯科衛生士としての視点でレビューしております。

そして、若手歯科衛生士によるスタディーグループLeafを運営しており、都内を中心に気軽な勉強会や座談会を開催しています。

みなさまの明日からの臨床にお役に立てれば幸いです。

過去のレビューはこちら

DaiGoさん著『自分を操る超集中力』
安藤俊介さん著『はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』
石田淳さん著『教える技術』
スペンサー・ジョンソン著『チーズはどこへ消えた?』

先月に引き続き、ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランドによる共同著書『FACT FULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣(2019年発行)』をレビューしていきます。

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ハンス・ロスリング著『FACT FULNESS(ファクトフルネス)』前編

ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著『FACT FULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』へ
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前回の記事にたくさんの反響ありがとうございました。

有名なビジネス本なので、気になっていた方もたくさんいらっしゃったようです。

この機会に読んでみた!というお声もいただき、このレビューがお役に立ったようで嬉しいです。

さて今月は、人間が持つ10の本能のひとつである「焦り本能」について、歯科衛生士としての目線を活かしたレビューをしてみました。

思い込みを引き起こす10の本能

この本には、人間は誰もがつぎの10の本能を持っていると書かかれています。

  1. 分断本能
  2. ネガティブ本能
  3. 直線本能
  4. 恐怖本能
  5. 過大視本能
  6. パターン化本能
  7. 宿命本能
  8. 単純化本能
  9. 犯人探し本能
  10. 焦り本能

この中のひとつ「焦り本能」とは、目の前に危機が迫っていると感じると、すぐに動きたくなる本能のことをいいます。

たとえば「今すぐ手を打たないと、取り返しのつかないことになる!」などといった言葉によって引き出されます。

問題なのが、焦り本能によってその他の本能も引き出されてしまい、その結果冷静な判断力は奪われ、批判的に考える力も失われてしまうということです。

これを防ぐには、まず一呼吸おいて自分の焦りに気づくことです。

そして冷静に、極端な予測に惑わされず、時間をかけて正確なデータや情報を収集し、分析に努める必要があります。

焦り本能にとらわれないためには?

歯科衛生士としてこの「焦り本能」を考察すると、

「このままで良いのだろうか・・・今すぐもっといい環境に移った方がいいのかな」
「このままずっと○○ができないままなのかな」
「歯科衛生士に向いていないんじゃないかな」

といった、仕事(環境)に関する漠然とした焦りなのかな、と思いました。

歯科衛生士としてこの「焦り本能」

では、仕事に関する漠然とした焦りとはなんでしょう。

「もっとやりたい治療があるのに今の環境だからできない」
「教えてくれる先輩がいないから、自分は上達できないのではないか」
「SRPとシャープニング、せっかく高額なセミナーに参加したけれど、ちゃんとできているか自信がない。私は歯科衛生士に向いていないのではないだろうか」

などなど、あげたらキリがありません。

ですが、ここで冷静に考えてもらいたいことは

医療に携わる私たちには「正解」も「終わり」もない。

ということです。

これに気がつくと、スッと力が抜けるのではないかと思っています。

環境に関しては、ある程度は変えられないこともあるでしょう。院長先生の性格を変えることはかなり難しいと、誰しもお分かりかと思います(笑)。

ですが、自分から自発的に行えることはたくさんあります。

このデジタルの時代においては、職場の先輩やドクターでなくても教えてもらうチャンスはたくさんあるのです。

また、手技に関していえば、ある程度の経験年数を経ないと習得できないのは当たり前!と思考を変えてみました。

私は今2年目ですが、10年以上のベテラン歯科衛生士と同じ手技ができるとはまったく思っていません。

開き直っているのではなく、単純に経験してきた患者さんの数、症例、教わったことなどなど、圧倒的に経験不足だからです。

ですが、そこで終わらず、自分としてできることを精一杯やろうと努めてきたつもりです。

どんなにスタートが遅かったとしても(私自身、歯科衛生士の資格を取得したのは30代になってからです)、気にする必要はまったくないと思います。

その分ほかのことでカバーする、努力を惜しまない姿勢を見せていれば、周囲も協力してくれるはずです。

これは自分にも言い聞かせていることですが、「あれもこれもできない」と焦るより、「今日はこれができた」「今月はこれができた」と、できたことに目を向けるようにしましょう。

「前回より短い時間で施術できた」、「患者さんからの質問に答えられた」など、どのレベルまで許容するのかは医院によって必要ですが、「ベストを尽くす」という気持ちで臨むことが大事なのかなと思います。

決して失敗していい、開き直っていい、とはいっておりません。

反省すべき点、努力することがあるのならば勉強する。誰かに教えてもらう。

自ら行動していく人、そんな熱意のある歯科衛生士にベテランは弱いはず!

『FACT FULNESS(ファクトフルネス)』から学ぶ、歯科衛生士キャリアの考え方

いかがでしたか?

歯科衛生士の離職率の高さや定着率の低さが叫ばれる中、多様な働き方が求められているのではないかと感じています。

パートやフリーランス、派遣など、選択肢の幅は確実に広がっています。歯科衛生士として実際に稼働しているコア層は30代くらいかな?と予想しますが、ライフスタイルの変化が大きい年代でもあります。

自分としてはバリバリ働きたい。キャリアも積みたいけれど、家庭や子供のこともきちんとやりたい。そんな真面目な方々こそ、「焦り本能」にとらわれてしまっているのかな、とも感じています。

働き方の選択肢が広がったからこそ、別の歯科医院で仕事をした時に、自分のスキルに気がつくことも多いと思います。

ですが、焦り本能にとらわれず、自分で築いてきたこと、積み上げてきたことを誇りに思ってほしいです。

無駄なことなんて何一つなくて、すべて自分の糧になっている。

ないものをほしがるのではなく、今あるものに積み上げていく。

それを大切に、日々の臨床に向き合ってもらえたらな、と思っています。

医療現場だから、医療従事者だから、という「焦り」を手放してみませんか?

このレビューが少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。

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