今回でこの連載も4回目を迎えます。
今回からは、3回に渡り『スタッフ育成のポイント』についてお話させていただきます。
私自身、歯科衛生士としてはまだまだ発展途上にある身ですが、これまでの経験、そして現在も多くのスタッフと仕事をする上で学んだ“人の成長には欠かせないエッセンス”があります。
そのエッセンスを、テーマ別にご紹介できればと思っております。
新たな仲間を受け入れる準備はできていますか?
私がこれまで勤務させていただいたクリニックでは、基本的に毎年新たなスタッフの入職があり、それが当たり前だと思い込んでいました。
ですが、それはクリニックに新たなスタッフを受け入れる余裕と需要が伴っていたからですし、さらには医院の職場環境や診療体制が整っていたからだと、今になって実感しています。
誰もが急な退職者が出た場合は、一日でも早く人員を補充したいと考えるかと思います。
特に、少人数のスタッフがマンパワーで働いている場合は、個々が担っている役割も大きいため、一人が欠けた際、残るスタッフへの負担は計り知れません。
ですが、ここで考えなければならないのが「なぜそのような状態になったのか」ということです。
個人の特別な事情を除き、いわゆる円満退職であれば、スタッフ不足になる前に新たな人員を迎え入れ、一定期間ではあるにしても、時間と人員の余裕をもって業務の引継ぎを“直接的に”行うことができます。
これは、新たなスタッフにとっても既存のスタッフにも理想的な職場環境を維持できますし、そのような診療体制で迎え入れたスタッフこそが、大切な人財になっていくのだと思います。
一方で、突発的に必要に迫られ新たなスタッフを迎え入れるとき、その現状はスタッフの負担過多などで本当に大変な日々を送り続けており、一日でも早く人員補充をしたいときだと思います。
ですが、そんなときこそ踏みとどまり、今一度スタッフ全員で「新たな仲間を受け入れる準備はできているか」と、考えてみてはいかがでしょうか。
多忙な時だからこそ、改めて何の疑問ももたずにルーティンワークと化している各自の業務内容を見直すことで、新しい発見があるのではないでしょうか。
これは長く安定した人員の確保、つまりクリニックの人材を「人財」とする環境が整えられているかを評価する絶好のチャンスです。
職場環境の準備としましては、これまでの連載でお話させていただきました「医院のルールづくり part2.あったら良いな、こんなルール」を参考にしていただければと思います。
② 円滑な診療を行う
③ スタッフの職場環境を維持する
スタッフの準備としましては、スタッフを育成できる存在の有無がキーポイントとなります。
私が新人として入職した際には、同期スタッフと同じくらい、もしくはそれ以上に教育担当スタッフの存在が大きく欠かせないものでした。
スタッフ育成には、歯科衛生士としての知識やスキルだけではなく、社会人としての立ち振る舞いや心の在り方も含まれます。
職場ではありますが、教育担当スタッフは、家族に例えるならときには母親のように、ときには姉のように叱咤激励し、未来の道標となる大切な存在でした。
私の経験談ですが、急に職場環境が変わったことがありました。
歯科衛生士の3分の1が産休に入り、育休明けで復帰する予定だった先輩歯科衛生士がご主人の都合で退職になり、さらに既存スタッフの2分の1は非常勤という体制になったことがありました。
つまり、頼れる先輩歯科衛生士は全員が非常勤で、常勤スタッフは私と新卒や入職したばかりの既卒スタッフのみという診療体制になりました。
最初のうちは診療以外の雑務などもこれまでと同じように行っていましたが、気がつけば個々の負担が大きくなり、残業する日々が続いていました。特に、常勤スタッフの疲労は大きかったと思います。
そこで常勤、非常勤スタッフ全員で、何回にも渡りミーティングを行いました。内容は「業務改善→ムダを見つける」についてです。
人員が少なく、不安な気持ちを抱えた中で多忙な毎日を送り、通常診療を行うだけでも精一杯でしたが、お昼休みなどの時間を短縮してでもミーティングを重ねました。
② やらなければいけないこと→人員に余裕のある時間帯に行う
このミーティングから得た成果は、結果として大幅な業務改善に繋がり、職場環境は「働きやすい職場」へと変わっていきました。
この「働きやすい職場」づくりは、「新たな仲間を受け入れる準備」と共通することも多いかと思います。
前述でお話してきました環境とスタッフの準備、それは自分が新人歯科衛生士として入職した際に余計な不安を抱えずに気持ち良く働ける職場であるかどうかだと思っています。
当院では、歯科衛生士が入社した際、「DH基準書」をお渡ししています。これは新卒だけでなく既存の方にもお渡しします。
教育担当者が説明しながら渡すことで、新入社員とコミュニケーションをとることができますし、新入社員も何をすればよいか、しなければならないかが明確になります。
不足分を補うための人員ではなく、大切な仲間を受け入れる準備ができているかを考えましょう。
チーフ歯科衛生士の流儀
series1.医院のルールづくり
part1.働きやすい職場環境について考える
part2.あったら良いな、こんなルール
part3.ルールの活用方法
series2.スタッフ育成のポイント
part1.新たな仲間を受け入れる準備はできていますか?