歯科管理栄養士のいろは 第1回 予防歯科の必需品!?歯科管理栄養士の仕事とは?

はじめまして、萱島駅前歯科クリニックで働く前絵理です。

口腔が全身の健康に及ぼす影響については、近年さまざまな研究がなされています。

全身の健康を守るためには、その入口である口腔を診ることができる歯科で、患者さんの意識、認識を変える必要性があります。

そこで重要な役割を担うのが、歯科で働く管理栄養士だと考えています。

この連載では、歯科管理栄養士の役割や実際の業務について、臨床現場のエピソードをまじえながらお伝えしたいと思います。

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歯科ではたらく管理栄養士の仕事って?

目次

1.歯科で働く管理栄養士ってどんな役割?
2.実際に1日の仕事を覗いてみよう!
3.case① 炭酸ジュースやコーヒーを常飲する患者さん

1.歯科で働く管理栄養士ってどんな役割?

口腔が全身の健康に及ぼす影響については、近年さまざまな研究がなされています。

歯の喪失と咀嚼能力低下の関係性はもとより、噛めなくなることによって軟食傾向になり、生活習慣病やその要因ともいわれるメタボリックシンドロームを招くことになります

また、歯を失うことで、栄養の偏りや食欲低下による低栄養を招くなど、口腔内の問題がいつしか全身の健康へと大きく影響する結果となっています。

全身の健康の入口である口腔、その口腔を診ることができる歯科で、いかに患者さんの全身の負のスパイラルを止められるか、もしくは負のスパイラルに入らないようにするかが重要です。

今のままで本当に健康を維持できるのか、患者さんはどんなお口や身体の理想を持っているのかなどしっかり聞き取りをし、患者さんの行動変容を促します。

患者さんが自身の口腔内に関心を持つことにより、口腔内の環境が良くなれば、自然と食事や生活習慣にも変化が見られます。

そうすれば、全身の健康へも大きく貢献できるのです。

予防歯科の必需品!?歯科管理栄養士の仕事とは?

2.実際に1日の仕事を覗いてみよう!

現在の業務は、患者さんへのカウンセリングの他、パーソナル健康サポート、小児患者さんや保護者への食育を含んだアドバイス、受付業務、アシスト業務(一般・矯正歯科)、スタッフ教育、管理栄養士の育成など、多岐に渡ります。

カウンセリングだけでなく、アシスト業務を通じて、患者さんの治療の進捗状況を把握しておくことも大切です。

チェアーサイドで少しお話しをしたり、コミュニケーションを取ることも多々あります。

当院では治療を進めていく前に、患者さんに口腔内写真の撮影やだ液検査など、詳しい検査を実施しています。その中に、食事や生活習慣の聞き取りも含まれます。

食事や生活習慣は、一見すると口腔や主訴と関係なさそうですが、実はむし歯や歯周病のリスクと大きく関係してきます。

そのため、患者さんにアンケートを記入してもらい、その内容を元に管理栄養士がカウンセリングをします。

食生活アンケート
食生活アンケート

このカウンセリングでは、患者さんへ検査結果を元に現状を伝え、今のお口の状態を認識してもらいます。

そして食生活、生活習慣の聞き取り内容から今後予防していくために必要なプログラムを提案していきます。

お口の状態、全身の状態、食生活、生活習慣は誰一人として同じ方はいらっしゃらないため、パーソナルに対応していくことの難しさはあります。

しかし、歯科で働く管理栄養士がこの役割を担えるようになると、予防歯科の役割や価値は大きく変わると感じています。

パーソナル健康サポートの提案をする様子
パーソナル健康サポートの提案をする様子

3.case① 炭酸ジュースやコーヒーを常飲する患者さん

case① 炭酸ジュースやコーヒーを常飲する患者さん
実際の食生活アンケートの一部

この患者さんは日々の生活習慣の中で、炭酸ジュースやコーヒーといった嗜好飲料をたくさん飲まれている方でした。

初診時は欠損歯も多く、カリエスの治療箇所も多数、リスクが非常に高い状態。

患者さんへ現在の状況を伝え、検査結果を元に、このままいくと将来どういう状況になってしまうのか、そうならないためにどうしていけばいいかをお伝えしました。

この患者さんは、ご自身が「今回で治療を最後にしたい、しっかり予防していきたい!」と仰ったため、リスクの高い食生活や生活習慣の改善サポートを開始しました。

まずは、事前に書いてきていただいた食生活アンケート(アンケート「1回目」参照)を元に、どの食事がリスクが高いのか、どれぐらいのお砂糖がお口や体に入っているか、現状を知っていただきます。

その際、決してこの食生活だめです!というような否定は一切しません。

大切なのは、何が原因で、何がリスクが高いのか、現状をしっかり認識し、理解していただいた上で、そこからどうしていくかを考えていただくことです。

結果として、この方は3ヶ月後にはジュースを飲まなくなりました(アンケート「3回目」参照)。

こちらから飲むのをやめてくださいと指導した訳ではありません。

患者さん自身が現状をきちんと理解し、気づき、行動をした結果です。

知っていると知らないとでは、将来大きく差が出てきます。そこを患者さんに理解してもらうことで、行動変容に繋げていきます。

お口と食のアドバイザー 歯科管理栄養士のいろは

痛みが出たから、被せ物が取れたから、むし歯になったから・・・

歯科には、症状が出てから来院される方が圧倒的に多いと感じます。

しかし、症状が出て治療しての繰り返しは、歯を喪失してしまう悪いスパイラルに巻き込まれることに。

歯科は予防の時代です。ご自身のお口と体の健康維持のために歯科へ通う、そんな時代へと変わってきているのです。