こんにちは。歯科衛生士の竹下と申します。この連載ではさまざまな書籍を歯科衛生士としての視点でレビューしております。
そして、若手歯科衛生士によるスタディーグループLeafを運営しており、都内を中心に気軽な勉強会や座談会を開催しています。
みなさまの明日からの臨床にお役に立てれば幸いです。
過去のレビューはこちら
DaiGoさん著『自分を操る超集中力』
安藤俊介さん著『はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』
さて今月は、石田淳さんの著書『行動科学を使ってできる人が育つ!教える技術(2015年発行)』をレビューしていきます。
緊急事態宣言も解除され、新型コロナウイルスの感染拡大もようやく収束の見込みが立ちはじめましたが、まだまだ気を緩めることはできませんね。
各医院でさまざまな感染対策が取られていることと存じますが、ようやく「新人さんに教える」余裕が出てきた医院もあるのではないでしょうか。
突然ですが、「教える」ことを「教わった」ことはありますか?
私はありません(笑)。
見よう見まねで、なんとなく、自分が教わった経験をもとに、今まで入ってきた後輩さんたちに教えてきました(うわー恥ずかしい)。
ですが、しばらくして気がつきます。
どの業界でも、どの職種でも、この現象にぶつかりますよね。
それはズバリ、私たち教える側が「教え方」を知らなかっただけなのです。
本書には「教える技術を身につければ、人を育てることが楽しくなる」と記されており、
注目すべきは「結果」ではなく「行動」である。
つまり、望ましい行動をとるよう導くことが大切である。
と書かれています。
この本をざっくりとまとめると以下の通りです。
2.具体的な伝え方を学ぼう
3.褒めて評価しよう
1.行動科学マネジメントとは?
まず、「行動科学マネジメント」とはなんでしょうか。
行動科学マネジメントの礎となる行動分析学は、心理学の一部。本書で紹介されている内容のすべてにエビデンスがあり、「いつ・どこで・誰が」やっても、同じ行動が得られるそうです。
「やる気」イコール「モチベーション」ではない
「モチベーション」という言葉の語源を紐解くと、人が何かをする際の動機づけや目的意識、とあります。心理的なものを指す言葉のようです。
それに対して「行動」はどうでしょう。「行動」は心理的な要因に左右されにくく、常にフラットな状態で行うことができます。
つまり、心理的要素でモチベーションを強く上げるのではなく、どんな心理状態でも左右されない行動を指示することが、「教える」ということなのです。
「やる気」や「根性」は関係ない
一昔前と違い、「やる気あるのか!」「根性でなんとかなる」という指導者は少なくなりました。ですが、ついふっとその考えが頭をよぎることはありませんか?
- 何度教えても同じミスをするのはやる気が足りないからだ
- 目標を達成できないのは、根性が足りないからだ
はたして、この考え方で成果が出たためしはありますか?
「行動科学マネジメント」は、「望ましい行動」をとるように指導していく方法です。
指示した「行動」が間違っている場合→「正しい行動」へ導く
指示した「行動」が正しい場合→さらに実行させる
「やる気」を引き出すことが仕事ではなく、このシンプルな基準を「教える」ことが仕事なのです。
では具体的な伝え方についてみていきましょう。
2.具体的な伝え方を学ぼう!
マニュアルを作る
あなたの歯科医院にはマニュアルがありますか?なかったらすぐ作りましょう!
マニュアルがあることで、「望ましい行動」が明確になります。
これから作成するならば、ぜひスタッフ全員を巻き込んで作っていきましょう。ひとりで抱え込まないように(これ、私の話です)!
いろいろなスタッフに役割を分担することで、各人の責任感も生まれますし、お互いにあやふやだったところをフォローし合えますよね。
そして、マニュアルを作成する際は、「具体的な行動」で表現しましょう。
Aさんが「わかりやすい」と思っていても、Bさんにとって同じかどうかはわかりません。
「具体的に、明確な行動」を例として挙げることで、思い違いや行き違いが解消されていきます。
特に歯科医院は医療現場ですので、一つひとつの行動をスタッフ全員が細部まで共有しておく必要があります。
このチャンスを生かし、ぜひ全員であやふやなところをなくしていきましょう。
一度にたくさんのことを教えない
マニュアルができあがったら、早速その内容を伝えていきます。ここで大事なのは、「スモールゴールの設定」です。
一度にたくさんのことを伝えようとしても、頭に入りきらなかったり、本当に大事なことが伝わっていなかったりしませんか?
あれもこれもと教えたくなる気持ちはよ〜〜くわかるのですが(これも私の話)、グッと堪えて!
一度に教えるのは3つまでにしましょう。そして、劣後順位をつけて、「必ずやるべきこと」と「やらなくてもいいこと」を伝えましょう。
3.褒めて評価しよう
最後に、「褒める」ことについて。
ビジネス(仕事)のご褒美は、褒められることです。頑張りに対して成果があると、人って嬉しくなりますよね。
褒めることを強化することで、行動の頻度が上がるというのは、エビデンスに基づいている現象だと本書には記載されています。まずは確実に100点を取れる課題を出し、成功体験を積み上げましょう。
そして、大切なのは「正しく褒める」こと!
褒めるのなんて照れ臭くてできないよ!という方も多いのではないでしょうか。安心してください、そんな大層に褒める必要はないです(笑)。
褒めるべきポイントは「望ましい行動」であり、性格や人間性、外見を褒めることとは違うので、ハードルは下がるのではないでしょうか。
また、?る際にもポイントがあります。
ちなみに、「?る」と「怒る」の違いはご存じですか?この違いは、アンガーマネジメントでもよく説明されていることです。
(前回参照:安藤俊介さんの『はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』から学ぶ、仕事中のイライラを抑える方法)
「?る」は、あくまでも「行動」に対してのみ。人格や性格、過去のことまで持ち出してくるのは絶対にNGです。そして叱った後にはかならずフォローを入れること。これが鉄則です。
いかがでしたか?
私もこの本を読んでかなり目からウロコでした。
この本を読むまでは、私の心理状態も「やる気がないから覚えられないのかな?」という気持ちや、「もっと○○してほしいけれど、どう伝えたらいいかわからない」ということばかりでした。
当院でも、昨年から入ったスタッフを十分にフォローできていなかったことや、4月から新卒さんをお迎えするにあたり、一念発起してマニュアルらしきものを作成しました。
自分だけでなく、他のスタッフにもお願いして、今まであやふやだったところを見直す良い機会になっています。
この春は新型コロナウイルスという誰もが予想しなかった事態で、新人さんも、受け入れるスタッフ側も、いつもより気を遣っているのではないでしょうか。
このレビューが、少しでもみなさまのお役に立てれば幸いです。
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