医院のルールづくり part1.働きやすい職場環境について考える

みなさまはじめまして、歯科衛生士の一之瀬くに子です。

今回より、これまでの歯科衛生士人生の中で私なりに感じ、そして学んだエッセンスをみなさまにお伝えできればと思い、連載をさせていただくことになりました。

歯科衛生士歴22年における経験を踏まえ、円滑なクリニック運営に欠かすことのできないポイントを、シリーズ4回に分けてテーマごとに解説させていただきます。

まずは、医院のルールづくりについて。part1は、「働きやすい職場環境の選び方&つくり方」です。

チーフ歯科衛生士の流儀 医院のルールづくり part1.働きやすい職場環境について考える

プロローグ

私は今年で歯科衛生士歴22年目を迎えました。

初めての就職先であるクリニックに20年間勤務した後、異業種を2か月間ほど経験して、医療法人社団千磨会 大岡歯科医院に転職。現在のクリニックは、勤務して2年目になります。

当クリニックは私の入社半年後に増設が決まり、現クリニックの2階に歯科衛生士による予防を中心とした医療を提供する診療室「デンタルケアスタジオ」を開設しました。

2階のデンタルケアスタジオ
2階のデンタルケアスタジオ

その時すでに開院して20年以上の歴史がありましたが、これまでのクリニックの歴史を知る歯科衛生士は不在でした。

また、増設する診療室は、普段の診療所とフロアが異なるために診療中のコミュニケーションが困難になることが予測されるため、新たなシステムづくりを行うこととなりました。

働きやすい職場環境とは?

突然ですが、みなさんにとって働きやすい職場とは、どのような環境でしょうか。

私は前クリニックでも、現在勤務している大岡歯科医院でも、スタッフの採用・雇用に関する実務に携わってきました。

これまでに面接でお会いした方々は、職場を選ぶ条件として勤務時間、お給料、人間関係などに重きを置く方が多かったという印象があります。

もちろん、そのような条件も大切ということは重々承知していますが、私はこれまでの経験より、働きやすい職場環境には、他にもいくつかのポイントがあると思っています。

今回は、次の3つにポイントを絞ってお話をさせていただきます。

  1. 自分にとって本当に働きやすい職場環境とは何かを考える
  2. 人を感じ、見る力そして変える勇気
  3. 働きやすい環境をつくる

① 自分にとって本当に働きやすい職場環境とは何かを考える

最近、ふと思うことがあります。

「生活のために仕事をしているけど、仕事をしているからこそ生活(自由時間)が充実するのではないか」と...

以前に尊敬する歯科医師の先生から「人は仕事をすることで輝くことができる」と教えていただいたことがあります。

私がこれまで歯科衛生士の仕事を続けてきたいちばんの理由は、この仕事が好きだからです。

そして長きに渡り、同じクリニックに勤務できたのは、お給料などの条件が整っていたからだけではなく、私にとって魅力のある職場だったからです。

私にとっての魅力とは、志が同じであるスタッフ=「こうなりたい」と思える仲間や先輩が存在することです。

仕事には、一日の中でも多くの時間を費やします。

そのため、身体の成長と疲労を補うために必要なビタミン、自分自身の心へのビタミンとなるものが職場にあるかどうかが、重要なポイントとなります。

そして、まずはこの職場が自分に「合う」かどうかを見極める力、感性が必要です。

お給料や休暇などの「物理的欲求」は、一度満たされるとすぐに当たり前になってしまいがちです。そして次第に不満が生まれる。

一方で、心の欲求が満たされると、意欲がわいてきます。その意欲は他人への満足や感謝につながります。

ですから、職場が物理的要求を満たしてくれるかどうかだけでの選択は、おすすめできないのです。

② 人を感じ、見る力そして変える勇気

つぎに、考えや気持ちを共有できる仲間が存在する場所であるかどうか。それが自分自身にとって本当に働きやすい職場環境といえるのではないでしょうか。

しかし、そのような理想的な職場環境を最初から提供できるクリニックは、決して多くありません。

ですから、理想が揃った職場環境をただただ追い求めることに労力を費やすよりは、今は理想と違っても、そのクリニックの理想に共感し、変わろうとする勇気を持ち合わせているスタッフがいる職場を選ぶ方が大事です。

時間と労力のかかる長い道のりですが、そのような仲間がいれば、自ら行動し、働きやすい職場環境に変えていくことが可能です。私は圧倒的に後者の方をおすすめします。なぜなら、同じ苦労をすることでスタッフ間に強い絆が生まれるからです。

働きやすい職場環境について考える

③ 働きやすい環境をつくる

複数人で働く職場には、職種や年齢など、立場の異なるさまざまなスタッフが存在します。

そのようなスタッフがひとつの空間で円滑に働くためには、2つのポイントがあるかと思います。1つ目は「自分の役割を理解し確実に果たす」こと、2つ目は「お互いを思いやる心をもつ」ことです。

1つ目の「自分の役割を理解し確実に果たす」について。

ではまず、クリニックでのご自身の役割を理解されている方は、どのくらいいらっしゃるのでしょうか。

私が初入社した20数年前は「仕事は自分で探すもの、指示を待ってから動くのでは遅い」などとよく言われました。

そもそも、クリニック内での自分の仕事や、その中での役割を探すこと自体が難しいですし、それを確実に果たすというのはさらにハードルが上がります。

なぜならそれは、自分自身が設定したゴールを達成するのではなく、相手が求めていることを理解し、それ以上の役割を果たす必要があるからです。

このようなことは、阿吽(あうん)の呼吸にかなり近いものがあり、現代社会には当てはまらないでしょうし、ある程度の大人数が在籍するクリニックで行うには限界があります。

そして、2つ目の「お互いを思いやる心をもつ」については、1つ目がクリアできて、自分自身の心と時間に余裕があるからこそできるものではないでしょうか。

もともと日本にはおもてなしの文化があり、自分のことを差し置いてでも他人を助ける風習のようなものがあります。ですが、このことは一部の人にだけ負担過多になりやすいために注意が必要です。

このようなことから、各々が立場をわきまえ、同じ理念の下で働くためには、感情だけではなくいくつかのルールが必要になります。

次回はこれまでの経験をもとに、働きやすい環境をつくるために必要なルールをご紹介させていただきます。

エピローグ;忘れられない一言

汝(なんじ)なんのためにそこにありや

長きにわたり青年教育や社会教育に携わった、鈴木健次郎の言葉です。

「自分はなにをしているのか」
「なんのためにそこにいるのか」
「今、なにをしなくてはならないのか」

人や社会との関係で自分を省みるべし。

これを自分に問いかけると言葉が出ません。ですが、今はゴールに向かう過程と言い聞かせ、常に心に留めておくことが大事ですね。

院内改革ワンポイントadvice♪

このコーナーでは、日頃クリニックで行っていることや、私のおすすめ商品や書籍、セミナーなどをご紹介していきます。ぜひクリニックでお役立てください。

当クリニックは、政府からの緊急事態宣言発令により令和2年4月13日より診療を縮小し、通常の1/4の体制で診療を行っています。

新型コロナウイルスによる感染対策として、スタッフは在宅ワークでさまざまな業務を行っています。その一部をご紹介させていただきます。

院内掲示物

患者さんに安心して診療を受けていただけるよう、院内での感染管理に対する取り組みをまとめて掲示しました。

クリニックのみんなで作成した掲示物
クリニックのみんなで作成した掲示物

防護衣

防護衣の在庫がなくなってしまったため、スタッフが在宅ワークでビニール袋を使って防護エプロンを作製してくれました。

スタッフお手製の防護エプロン
スタッフお手製の防護エプロン

患者さんへのハガキ

今回、急遽診療の縮小を決めたために、多くの患者さんにお約束を変更していただきました。その感謝と謝罪の気持ちを、担当歯科衛生士からハガキを出してお伝えしました。

患者さんへのハガキ
患者さんへのハガキ