歯周治療の予後に大きく関わる!禁煙外来を徹底調査

歯周病と大きな関わりを持つ「喫煙」。

年々日本人の喫煙率は減少しているものの、「2018年全国たばこ喫煙者率調査」によると、男性の平均喫煙率は27.8%、女性は8.7%ということがわかりました。

最近では、医科の「禁煙外来」を受診する患者さんも増えてきています。

私たち歯科衛生士が、患者さんに禁煙または減煙指導を行う際に、禁煙外来の受診をすすめることも指導のひとつとして有効です。そのためには、禁煙外来で行われる治療内容や費用について、正しい知識を持つ必要があります。

今回は、そんな禁煙外来について詳しくお伝えします♪

禁煙外来について

禁煙治療に健康保険が適用される条件とは?

2006年4月より、喫煙者のニコチン依存症は病気であるということが厚生労働省に認められました。そのため、一定の条件を満たす場合は、健康保険が適用され、禁煙治療を受けることが可能です。

健康保険が適用される条件は、以下の通りです。

  • 「ニコチン依存症の判定テスト」が5点以上
  • 35歳以上については、1日の喫煙本数に喫煙年数をかけた数が200以上
    例:1日20本のたばこを10年吸い続けている人
    20(本)× 10(年)= 200→保険適用
  • ただちに禁煙をはじめたいと思っている
  • 禁煙治療を受けることを文書で同意している

ニコチン依存症テスト」とは、WHOやアメリカ精神医学会の資料をもとに開発された、精神医学的な見地からニコチン依存症を診断するテストです。10個の質問に対して、「はい」と答えると1点、「いいえ」と答えると0点が加算されます。

テストの内容は、以下の通りです。

  1. 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くたばこを吸ってしまうことがありましたか?
  2. 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか?
  3. 禁煙や本数を減らそうとしたときに、たばこが欲しくて欲しくてたまらなくなることがありましたか?
  4. 禁煙したり本数を減らそうとしたりしたときに、次のどれかがありましたか?
    (イライラ・神経質・落ち着かない・集中しにくい・憂鬱・頭痛・眠気・胃のむかつき・脈が遅い・手のふるえ・食欲または体重増加)
  5. ④ で該当した症状を消すために、またたばこを吸いはじめることがありましたか?
  6. 重い病気にかかったときに、たばこは良くないとわかっているのに吸うことがありましたか?
  7. たばこのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?
  8. たばこのために自分に精神的問題(※)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?
    ※ 禁煙や本数を減らした時に出現する禁断症状ではなく、喫煙することによって神経質になったり、不安や抗うつなどの症状が出現している状態
  9. 自分はたばこに依存していると感じることがありましたか?
  10. たばこが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか?

また、過去に健康保険を使って禁煙治療を受けたことのある場合は、前回の治療の初診日から1年以上経過している必要があります

禁煙治療に健康保険が適用される条件

禁煙治療の内容について

基本的な禁煙治療は、初診から最初の1ヶ月は2週間ごとに2回、その後1ヶ月ごとの診察を2回と、計5回の通院を3ヶ月にわたって続けます。

治療では、診察や禁煙についてのアドバイスだけでなく、呼気に含まれる一酸化炭素濃度の測定を行い、たばこの有害物質をどのくらい取り込んでいるかということや、禁煙の効果について調べます。

それに加え、禁煙補助薬の選択や処方も行います。禁煙補助薬には、内服薬と外用薬があります。

内服薬「バレニクリン」

脳の中のニコチン受容体に作用し、禁断症状を緩和するだけでなく、喫煙による満足感を抑制する作用があります。

禁煙開始日7日前から食後に服用し、徐々に服用量を増やします。服用後8日目から禁煙をはじめ、通常12週間服用し続けます

外用薬「ニコチンパッチ」

ニコチン成分を含む貼るタイプの外用薬で、薬局でも購入することができます。禁煙外来では、薬局で販売されていない大きいサイズを処方されます。

1日1回、上腕や腹部、背中などに貼るだけなので簡便です。ただし、皮膚がかぶれるおそれがあるため、毎日貼る場所を変えることをおすすめします。通常は8週間使用を続けます

禁煙治療の内容

禁煙治療にかかる費用はどのくらい?

健康保険を使って8〜12週間の禁煙治療を受けると、3割負担の場合、自己負担額は13,000〜20,000円程度といわれています。

たばこを1日1箱(20本)吸う人の同期間のたばこ代は、約24,000~36,000円。つまり、たばこ代の約2分の1の費用で治療が受けられます。

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いかがでしたか?

歯科医院で勤務していると、医科で行われている治療などについて詳しく学ぶ機会は多くありません。

しかし、喫煙は歯周治療に大きく関わる分野であり、私たちが患者さんに対して禁煙または減煙指導する機会も多くあります。

すべての喫煙患者さんに禁煙治療を受けてもらうことはむずかしいと思いますが、積極的に禁煙したいと考えている患者さんに対しては、具体的な治療内容を紹介することで、より現実的に考えてもらえるきっかけになるのではないでしょうか。

ぜひ参考にしてみてください♪

参考文献:厚生労働省「最新たばこ情報」
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「TDSニコチン依存度テスト」
ファイザー「すぐ禁煙.jp」