マウスピース矯正研修講師の穴沢有沙と申します。
第4回の今回は、インビザライン治療における役割とやりがいについてお話します。
前回までの記事はこちら
第1回 矯正治療に対する患者のイメージ
第2回 矯正治療のネガディブイメージを払拭するには
第3回 チーム医療の要
1.チーム医療での主役とは
インビザライン治療において、スタッフの力は偉大です。
もちろん歯科医師がいなくては成り立ちませんが、今までのコラムでも述べたようにインビザラインの成功には患者コンプライアンスが重要です。
一説には治療成功の鍵は、クリンチェックの立案が40%、患者コンプライアンスが60%ともいわれます。
患者コンプライアンス、そこを担うのがスタッフです。
先生が治療計画の立案に専念するためにも、そのほかの物事がスタッフ主導で進めばどれほど円滑か。
私が年間400症例以上のインビザラインを手がけていた、大手医療法人で学んだことです。
では具体的に、インビザラインにおける治療ステップには、どのようなものがあるのでしょうか。
2.インビザライン治療の流れと役割分担
- 矯正相談
- 資料採得
- クリンチェック治療計画立案
- 診断
- 契約
- 矯正治療開始
- アタッチメント付与
- IPR(ディスキング)
- モニタリング・チェック
- 動的治療終了・保定開始
- 定期検診
(症例により多少の前後あり)
この中で、③ クリンチェック治療計画立案、④ 診断、⑧ IPR(ディスキング)は歯科医師が行います。
他のステップは、歯科医師による事前&最終確認こそ必要ですが、ほとんどはスタッフ主導で進めることができます。
クリニックや先生の考え方にもよりますが、インビザラインのプロフェッショナルスタッフがいれば、安心して任せられるでしょう。
インビザライン治療はスタッフの認定資格などがまだありませんので、スタッフのレベルを第三者的に測ることはまだ難しいのが現状です。
しかし、海外ではスタッフ教育プログラムがすでに進んでおりますので、将来的に日本でも同じ流れが来ることになると思います。
例えば定期検診やメンテナンス時に、歯科衛生士から患者さんの微細な変化について報告を受けることがあると思います。
インビザラインにおいても同じです。
スタッフが患者さんのライフスタイルの変化に気付いたり、日常ケアに対して的確なアドバイスをしたりと、いなくてはならない存在です。
歯科医師が患者さんの心理面や社会面などのすべてに目を行き届かせ、常に把握することはなかなか容易なことではありません。
患者さんに近いスタッフだからこそわかる、一見小さな兆候は、とても大きな治療結果の違いに結びつくことがあります。
3.気持ちの距離が近いからこそできるヒアリング
例えば、治療途中で結婚が決まった方がいらっしゃったとします。結婚式までには、気になる前歯を綺麗にしたい。と思われるでしょう。
インビザラインの場合、クリンチェックというシュミレーションで、いつくらいにどのあたりの位置まで動いているかが確認可能です。
結婚式までに治療が終わらないのであれば、今の治療計画で患者さんの満足するところまで持っていけるのか。
治療計画の変更をするために、追加アライナー(もう一度印象を採り、治療計画を立て直すこと)が必要になるのか。
- 結婚式の時期はいつ?
- 前撮りはするの?
- ホワイトニングの要望はある?
などなど、「結婚式」というワードひとつでも、ヒアリングする内容は多岐に渡ります。
また、留学が決まった方ではどうでしょうか。
- いつから、どこへ留学するのか?
- どれくらいの期間?
- 帰国の頻度は?
- 患者コンプライアンス(装着時間を守れているか)?
- 口腔清掃の状態は?
長期的に来院できない場合でも、インビザラインなら決められた期間ごとにマウスピースを交換していくことで、歯は動きます。
しかし、マウスピースの装着時間が短ければ治療が進まないどころか、あらぬ結果を招くことがあります。また、IPR(ディスキング)のタイミングをどこに持っていくのかも重要です。
十分なヒアリングを行うことで、クリンチェック治療計画に反映できます。そのためには患者さんに近いスタッフひとりひとりが、治療の理解度を深め、“自分が主治医だ”と思うくらいの責任感が必要です。
4.クリニックでのスタッフの位置付け
歯周病治療では歯科医師と連携の下、歯科衛生士が主役で活躍していることと思います。
インプラント治療では、アシストワーク、在庫管理など歯科衛生士・アシスタントが責任感を持って業務に励んでいるでしょう。
矯正治療、とりわけインビザライン治療は、さらにスタッフの介入が可能です。クリンチェックシュミレーションにより治療計画が可視化され、携われる部分が非常に多いからです。
「ただやらされる」仕事ではなく、スタッフひとりひとりが主役として携われば、これほどやりがいと価値ある仕事はないのではないか、と思うほどです。
それに気付きスタッフへ伝えられるのは、院長先生であり歯科医師の先生であってほしいと願います。
マウスピース矯正のチーム医療とは?
第1回 矯正治療に対する患者のイメージ
第2回 矯正治療のネガディブイメージを払拭するには
第3回 チーム医療での要
第4回 インビザライン治療における役割とやりがい
第5回 光学印象と医院マネジメント
第6回 現代のSNS影響力について