歯科衛生士向けおすすめ論文 No.13「効果が高いクロルヘキシジン含有洗口剤の濃度とは?」

歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?

歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。

ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?

「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。

このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!

歯科衛生士向けおすすめ論文

さまざまな濃度のクロルヘキシジンの効果を比較した論文

今回解説するのはこちらの論文です。

0.06%、0.12%、0.2%クロルヘキシジンにおけるプラークや歯肉からの出血、副作用に対する効果の比較
『BMC Oral Health』

この研究では、3つの濃度のクロルヘキシジン含有洗口剤における、プラークや歯肉炎を抑制する効果と、その副作用について調べています。

どんな方法で調べている?

まず、歯学部や医学部、歯科衛生士学部の学生ボランティア60人を3つのグループにわけました。研究開始時には、すべての被験者に対してPMTCを行い、口腔内のプラークを徹底的に除去しました。

そして、以下の3種類の洗口剤をそれぞれのグループに割り当て、1日2回60秒間洗口してもらいました。

  1. 0.2%クロルヘキシジン含有洗口剤
  2. 0.12%クロルヘキシジン910ppmフッ化ナトリウム含有洗口剤
  3. 0.06%クロルヘキシジン250ppmフッ化ナトリウム含有洗口剤

また、1日2回のブラッシング時には、上顎右側のみプラスチック性のマウスガードを装着させ、ブラッシングできない状態にしました。マウスガードの装着前後には水道水によるうがいを30秒間行い、これを21日間続けました。

よって、21日間は以下のような口腔内の状態であったといえます。

上顎右側:洗口剤(1日2回) + 水道水による洗口(1日4回)

その他の部位:洗口剤(1日2回) + ブラッシング(1日2回)と水道水による洗口(1日4回)

研究開始から7、14、21日後には、被験者に上記手順の確認と副作用についてのインタビューを行い、21日後にプラーク指数(PI)と歯肉炎指数(GI)を記録しました。

もっともプラークの抑制効果があるクロルヘキシジン濃度は0.2%!

今回の研究結果によると、0.2%クロルヘキシジン含有洗口剤が、他の濃度のものに比べて有意にプラークスコアを減少させることがわかりました。

0.12%と0.06%の洗口剤を使用した際のプラークスコアには有意差がなく、歯肉炎指数においては、どの濃度においても有意差はありませんでした

また、副作用については、0.2%と0.12%の洗口剤を使用したグループにおいて、「味覚の喪失」や「舌や口のしびれ」を訴えた被験者が有意に多いことがわかりました。

* 有意という言葉については、前回の記事で説明しています。こちらをご覧ください!
(参照:歯科衛生士向けおすすめ論文 No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」

味覚の喪失、舌や口のしびれ

この研究に対する考察

今回の研究では、0.2%クロルヘキシジン含有洗口剤のプラーク抑制効果が、他の濃度に比べて高いことがわかりました。

一方で、ブラッシングを行っていた上顎右側以外の部位については、プラークスコアに有意差がなく、歯肉炎指数についても有意差は認めませんでした。

したがって、ブラッシングができない環境においては、0.2%クロルヘキシジン含有洗口剤は有意にプラークの付着を抑制しますが、ブラッシングできる環境では、とくに濃度間の差はないということになります。

そのため、歯周外科処置やインプラント手術後などで、ブラッシングできない部位がある場合、0.2%クロルヘキシジン含有洗口剤の効果はより高く発揮されるのではないでしょうか。

しかし、現在日本で販売されているクロルヘキシジン含有洗口剤の濃度は0.05%。使用時にはさらに水で希釈するため、0.01%程度の濃度になってしまうといわれています。

欧米で販売されている洗口剤に比べると、はるかに低い濃度ではありますが、洗口剤を使用することで口腔内の爽快感が増します。また、しっかりと時間をかけて洗口することで、歯面のぬめりの元となる浮遊性細菌なども除去しやすくなるのではないでしょうか。

よって、ブラッシング後の爽快感を得たい方や、しっかりと洗口できておらず、歯面にぬめりがみられる方、ブラッシングできない部位がある患者さんには、効果的な薬剤と考えられます。

クロルヘキシジン含有洗口剤

どんな製品においても、むやみやたらにおすすめするのではなく、「どういった効果があるのか」「なぜ使ってもらいたいのか」という明確な根拠があると、患者さんに納得して使ってもらいやすくなります。

今回解説したクロルヘキシジン含有洗口剤についても、ぜひ一度、おすすめする理由などを振り返ってみてください♪

参考文献:Maliha H, Ayse GB, Odd CK, Anne MA, Leiv S, Hans RP(2017)「Comparing the effect of 0.06% -, 0.12% and 0.2% Chlorhexidine on plaque, bleeding and side effects in an experimental gingivitis model: a parallel group, double masked randomized clinical trial」『BMC Oral Health』2017 Aug ; 17 (1), 118. BioMed Central

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