歯周病に関する分類をおさらいしよう!No.4 〜根分岐部病変の分類〜

歯科衛生士のみなさんは、患者さんの口腔内診査を行うとき、どのようなことに注意して観察していますか?

口腔内にはたくさんの情報があふれており、プラークの付着状況や歯肉からの出血、根面の粗糙感、咬合の状態など、他にもさまざまなことに気をつけながら診査する必要があります。

この連載では、そんな中でも歯科衛生士の方にはかならず覚えておいてほしい、歯周病に関する分類についてお伝えします♪

これまでの記事はこちら

No.1 メイナード(Maynard)の分類
No.2 ミラー(Miller)の分類
No.3 シーバー(Seibert)の分類

今回は、根分岐部病変の分類について解説します。

根分岐部病変の分類には2種類ある?!

根分岐部病変には、「リンデ(Lindhe)とニーマン(Nyman)の分類」と、「グリックマン(Glickman)の分類」があります。

リンデとニーマンの分類は、根分岐部病変を1〜3度の3段階に分類したもので、「リンデ(Lindhe)の分類」と表記する場合もあります。

歯周組織の水平方向におけるアタッチメントロスの程度を分類する方法で、一般的によく使われている分類です。

リンデ(Lindhe)とニーマン(Nyman)の分類

1度:水平的な歯周組織のアタッチメントロスが歯の幅径の 1/3 以内

2度:水平的なアタッチメントロスが歯の幅径の1/3以上あるが、プローブは根分岐部を貫通しない

3度:完全に根分岐部の付着が破壊され、頬舌的または近遠心的にプローブが貫通する

一方で、グリックマンの分類は、根分岐部病変を1〜4級の4段階に分類したものです。こちらは根分岐部にプローブが貫通するかどうか、根分岐部が歯肉で覆われているかどうかという点に着目した分類です。

グリックマン(Glickman)の分類

1級:根分岐部に病変があるが、臨床的かつX線的に異常を認めない

2級:根分岐部の一部に歯槽骨の破壊と吸収が認められるが、プローブは根分岐部を貫通しない

3級:根分岐部の頬舌的または近遠心的にプローブが貫通するが、根分岐部は歯肉で覆われている

4級:根分岐部が口腔内に露出しており、プローブが貫通する

根分岐部病変の原因は?

根分岐部病変が起こる代表的な原因は、以下の通りです。

  • 歯周炎
  • う蝕
  • 歯根破折
  • 咬合性外傷 など

歯周炎には、歯肉辺縁からはじまる辺縁性歯周炎だけでなく、根尖性歯周炎も含まれます。歯周病菌によって歯周組織が破壊され、その炎症が根分岐部まで進むと、根分岐部病変ができてしまいます。

また、根分岐部の歯槽骨は、平滑な部分に比べるともともと血液供給が悪いため、咬合性外傷の影響を受けやすくなります。咬合性外傷が単独で原因になることはありませんが、根分岐部病変に歯周炎を認める場合、進行を早めてしまうおそれがあります。

根分岐部に入り込んだプラークや細菌をセルフケアで除去することはむずかしく、一度根分岐部病変に罹患してしまうと、簡単に進行を止めることができません。

根分岐部病変が起こる原因

根分岐部病変の治療方法とは?

では、根分岐部病変には、どのような治療を行えば良いのでしょうか?

ここでは、リンデとニーマンの分類を用いて、解説します。

根分岐部病変 1度の場合

  1. スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
  2. フラップ手術
  3. ファーケーションプラスティ
    * 根分岐部に発生しやすいエナメルプロジェクションなどを除去し、歯根面の形態を修正する治療。清掃しやすい形態にすることで、プラークや歯石がたまりにくくなります。

1度の場合、水平的な歯周組織のアタッチメントロスが歯の幅径の3分の1以内であるため、SRPで対応できる症例が多いのではないでしょうか。

SRPを行っても改善が見られず、患者さんの自覚症状や要望がある場合には歯周外科を行います。

根分岐部病変 2度の場合

  1. フラップ手術
  2. ファーケーションプラスティ
  3. 歯根分割(セパレーション)
  4. 分割抜歯(ヘミセクション、トライセクション)
  5. 抜歯
  6. 再生療法

2度になると、治療方法の選択肢が多くなります。そのため、根分岐部病変の状態だけでなく、歯牙の動揺度や隣在歯の状態など、さまざまな視点から状況を判断し、治療方法を選択する必要があります。

とくに歯根分割については、該当する歯が有髄歯の場合、抜髄から根管充填までを行って、最終的には補綴物を装着する必要があります。治療期間や費用がかかるだけでなく、有髄歯を無髄歯にしてしまうリスクや、天然歯を補綴歯にしてしまうリスクなども考慮しましょう。

また、分割抜歯において抜歯する歯根を選択する際には、隣在歯との関係や抜歯後の補綴物のデザイン、歯牙の解剖学的特徴についても理解しておく必要があります。

主治医の診断内容を患者さんにしっかりと説明できるよう、さまざまな治療プランを考えられるようにしておきましょう。

根分岐部病変 3度の場合

  1. 歯根分割(セパレーション)
  2. 分割抜歯(ヘミセクション、トライセクション)
  3. トンネリング
    * プローブが貫通する部分に歯間ブラシを通せるようにし、根分岐部の清掃性を高める方法
  4. 抜歯

3度になると、治療方法の選択肢が減り、根分岐部を清掃しやすい形態に修正するか抜歯という方法しかありません。

患者さんによるセルフケアのテクニックが大きく影響するため、歯牙の動揺度や歯周組織の破壊の程度とあわせて、患者さんの協力度なども考慮するようにしましょう。

患者さんによるセルフケア

いかがでしたか?

今回は、リンデとニーマンの分類1〜3度における治療方法をそれぞれ説明しましたが、かならずしもこの通りの治療が行われるわけではありません。

根分岐部病変3度を認め、歯牙が大きく動揺していても、患者さんのレベルの高いセルフケアによって、何年も保存できるような症例もあります。

歯周治療をもっとも困難にする原因のひとつともいわれる「根分岐部病変」。

根分岐部病変に対して、私たち歯科衛生士が行える治療はSRPしかありません。

しかし、罹患した原因の考察や、患者さんにその他の治療方法を提案することは可能です。また、患者さんの技術力やパーソナリティを理解している歯科衛生士だからこそ、考えられる方法もたくさんあるはずです。

歯周病に関する正しい知識を身につけ、一人でも多くの患者さんに適切な治療を提供できるよう心がけましょう。

参考文献:特定非営利活動法人日本歯周病学会『歯周治療の指針2015』
小野善弘・宮本泰和・浦野智・松井徳雄・佐々木猛(2013)『コンセプトをもった予知性の高い歯周外科処置 改訂第2版』クインテッセンス出版株式会社

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