歯科のお仕事完全マニュアル 第6章 予防・治療の知識 STEP14 小児患者さんの治療

乳歯はう蝕になりやすく、一度う蝕になると早く進行してしまいます。しかし、小児患者さんは自分でブラッシングを十分に行ったり、定期的に歯科医院に通ったりすることができません。

そのため、小児患者さんの歯は、周囲の大人が守らなければいけないと考えられています。

STEP14では、小児患者さんの治療について詳しく説明します。

小児患者さんの治療について

1.保護者への働きかけ

保護者が小児患者さんの歯を守ることの重要性について理解できるように、歯科医院側から働きかけることが大切です。具体的には、以下のようなことを働きかけます。

  • 子どものころから食後や寝る前などに歯ブラシを持ち、ブラッシングする生活習慣を身につけられるようにしてもらう
  • 保護者には、正しい仕上げ磨きの仕方を習得してもらう
  • 大きなう蝕にならないように、早期発見・早期予防を心がけ、定期的に歯科医院に通ってもらう

保護者への働きかけ

2.乳歯う蝕による永久歯への悪影響

乳歯の治療については、永久歯に生えかわることから、ブリッジやインプラントなどが行われることはありません。

しかし、永久歯への生えかわりがあるからといって、乳歯のう蝕を放置しておいてはいけません。乳歯の歯根の先の骨の病気は、後で生えてくる永久歯にも悪影響を与えることがあります。

乳歯う蝕による永久歯への悪影響

3.小児患者さんの治療

小児患者さんの治療

フッ素塗布

フッ素入りのジェルを歯に塗ることで、歯の再石灰化を促進します。生えてきて間もない歯に対して行う方が、効果が高いといわれています。

歯科衛生士によるフッ素塗布
歯科衛生士によるフッ素塗布

シーラント

う蝕予防のために、臼歯咬合面にある溝を専用のレジンで埋める治療。小児の歯は、歯の溝からう蝕になりやすいため、歯の溝を事前に埋め、う蝕を予防します。

シーラント
溝をシーラントで埋めた歯

CR(シーアール)

う蝕を削って、レジンで埋める治療。レジン充填(レジンじゅうてん)レ充(レじゅう)などといいます。

CRの手順
CR治療の手順

インレー

インレーはInと表記します。う蝕を削り、印象をとり、部分的な金属をつける治療。

インレーをセットする手順
インレーをセットする手順

乳歯冠

大きなう蝕にかかった乳歯を台形に削り、既製の金属を調節して装着する治療を乳歯冠(にゅうしかん)のセットといいます。

乳歯冠(にゅうしかん)のセット
乳歯冠をセットする手順
乳歯冠
実際の乳歯冠

生活歯髄切断法・抜髄

う蝕の細菌で汚染された歯髄をとる治療。術後は、鎮痛剤を処方します。

乳歯の歯髄を部分的にとる治療を、生活歯髄切断法(せいかつしずいせつだんほう)といい、歯髄をすべてとる治療を抜髄(ばつずい)、あるいは麻抜(まばつ)といいます。

生活歯髄切断法・抜髄
乳歯の生活歯髄切断法

根管充填

生活歯髄切断法や抜髄が行われた歯に、ペースト状の薬(成人は固体)をつめる治療を根管充填(こんかんじゅうてん)といいます。

生活歯髄切断法の場合

生活歯髄切断法の場合

抜髄の場合

抜髄の場合

充填された後は、CR治療を行うか、乳歯冠を装着します。

充填された後は、CR治療を行うか、乳歯冠を装着します。

感染根管治療

以前治療した乳歯において、再度う蝕になり進行すると、歯髄を殺しながら根管をつたって、歯根の先の骨まで感染することがあります。この場合、根管内を掃除し、液体状の薬をつめる感染根管治療(かんせんこんかんちりょう)を行います。

術後は、鎮痛剤や抗生物質を処方することがあります。

抜歯

抜歯が必要な乳歯には、以下のようなものがあります。術後は、鎮痛剤や抗生物質を処方することがあります。

  • 自然な生えかわりより早い時期に、う蝕などによって残すことができなくなった乳歯
  • 自然な生えかわりの時期に入り、グラグラしてきた乳歯(日常生活の中で自然に抜けることもある)
  • 後続永久歯が生えてもまだ抜けない乳歯

クラウンループ

う蝕などによって、自然に生えかわる時期よりも早くDを失った場合、Eが前に倒れこんでくることがあります。その結果、本来永久歯が生えてくるスペースがなくなり、歯列がくるってしまいます。

それを防止するため、Eにクラウンループとよばれるものを装着することがあります。

クラウンループ
クラウンループを装着したE

クラウンループのように、抜歯してできたスペースを維持する技工物を保隙装置(ほげきそうち)といいます。

保隙装置には、クラウンループのほかにも、Eを予定より早く抜歯した時にDにかぶせるものや、義歯のようなものがあります。

やってみよう!知識チェック

姉妹サイト『WHITE CROSS』では、今回学んだ内容について、理解度チェックを行うことができます。ぜひご活用ください♪

クリックして回答
クリックして回答

第6章 予防・治療の知識

STEP1 予防
STEP2 投薬
STEP3 歯周病の治療
STEP4 知覚過敏の治療
STEP5 小さなう蝕の治療
STEP6 歯の神経をとる治療
STEP7 かぶせ物を作る治療
STEP8 感染根管の治療
STEP9 TeCを作る治療
STEP10 ブリッジを作る治療
STEP11 義歯を作る治療
STEP12 義歯の調整
STEP13 歯を抜く治療
STEP14 小児患者さんの治療
STEP15 その他の治療