歯科のお仕事完全マニュアル 第6章 予防・治療の知識 STEP13 歯を抜く治療

う蝕や歯周病が進行し、治療のほどこしようがない場合、歯を抜くことがあります。歯を抜くことを抜歯(ばっし)といい、抜歯にいたる原因はさまざまです。

STEP13では、抜歯の原因や種類、また抜歯と同時に行う治療について説明します。

1.抜歯の原因

重度のう蝕や歯周病により、歯を残すことができない場合

具体的には、以下のような場合を表します。

  • 重度の根尖病巣(C3 per)
  • 重度のう蝕(C4)
  • 重度の歯周病
  • 歯周病と重度の根尖病巣をもつ歯(P-per)
重度のう蝕や歯周病により、歯を残すことができない場合
重度のう蝕や歯周病により、残すことができない歯

咬合力や事故により歯が割れてしまった場合

う蝕や歯周病といった病変がなくても、さまざまなトラブルによって抜歯になることがあります。具体的には、以下のような場合を表します。

  • 以前根管治療した歯が割れた
  • 交通事故などで歯が割れた
  • 患者さんの咬合力が強く、歯が割れた
咬合力や事故により歯が割れてしまった場合
咬合力や事故により割れてしまった歯

必要に応じて

また、以下の場合は 必要に応じて抜歯を行います。

  • 乳歯の抜歯
  • 智歯(親知らず)
  • 矯正歯科治療において歯列をきれいにするために邪魔な歯
必要に応じて
必要に応じて抜歯する歯

2.抜歯の手順

抜歯の手順

抜歯

歯を抜く治療のことを抜歯(ばっし)といい、EXT(エキスト)ともいいます。抜歯には次のような種類があります。

抜歯は、歯の種類や状態によって分類されます。たとえば、同じう蝕が原因の抜歯でも、破壊の程度によって、「③ 普通抜歯」の扱いになることもあれば、「④ 残根抜歯」の扱いになることもあります。

抜歯後は、必要に応じて鎮痛剤や抗生物質を処方します。

① 乳歯抜歯

永久歯へ生えかわるとき、乳歯の歯根は吸収されてグラグラしてきます。グラグラしている歯があると、食事がしづらくなってしまうため、抜歯を行うことがあります。

乳歯抜歯

② P抜歯

Pは歯周病(ペリオ)を意味し、P抜歯(ピーばっし)は重度の歯周病にかかった歯の抜歯を指します。

P抜歯

③ 普通抜歯

一般的な抜歯。普通=難易度も普通という意味ではなく、むずかしい抜歯も含まれます。

普通抜歯

④ 残根抜歯

う蝕で歯が崩壊し、歯根のみになっている歯の抜歯を残根抜歯(ざんこんばっし)といいます。抜歯用の器具が引っかかりにくいため、難易度が高いことがあります。

残根抜歯

⑤ 埋伏抜歯

顎の骨の中に、歯が埋まっており、骨を削るなどをしないと抜けない歯の抜歯を埋伏抜歯(まいふくばっし)といいます。

歯が半分骨に埋まっている半埋伏(はんまいふく)の場合もあり、埋伏歯、半埋伏歯ともに、智歯によくみられます。一般的に難易度が高いとされています。

埋伏抜歯

SP

抜歯後の状態をみて消毒を行う治療をSP(エスピー)といいます。傷の治りが心配な患者さんなどに行われることが多く、予後(よご)洗浄OBS(オブサーベション)などといいます。

SP

抜歯だけでなく、フラップ手術(FOP)歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)の後にも行われます。

抜糸

抜歯後、口の中にできた傷口を縫った場合、傷口がふさがった後、縫った糸をとる治療を抜糸(ばついと)といいます。また、縫うことをナートともいいます。歯科では「抜歯(ばっし)」と区別するために、「抜糸(ばっし)」ではなく、“ばついと”とよびます。

抜歯だけでなく、フラップ手術(FOP)歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)の後にも行われます。

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第6章 予防・治療の知識

STEP1 予防
STEP2 投薬
STEP3 歯周病の治療
STEP4 知覚過敏の治療
STEP5 小さなう蝕の治療
STEP6 歯の神経をとる治療
STEP7 かぶせ物を作る治療
STEP8 感染根管の治療
STEP9 TeCを作る治療
STEP10 ブリッジを作る治療
STEP11 義歯を作る治療
STEP12 義歯の調整
STEP13 歯を抜く治療
STEP14 小児患者さんの治療
STEP15 その他の治療