歯科のお仕事完全マニュアル 第6章 予防・治療の知識 STEP8 感染根管の治療

細菌に感染してしまった根管のことを、感染根管といいます。感染根管になるには、さまざまな原因があります。

STEP8では、感染根管になる原因や治療方法について説明します。

1.感染根管になる原因

歯髄が死んでしまった場合

う蝕や歯に入った亀裂から唾液中の細菌が侵入すると、歯髄を殺しながら歯根の先まで到達し、その先の骨の中に入りこんで炎症を起こすことがあります。

歯髄が死んでしまった場合

以前抜髄した歯が再度感染した場合

以前抜髄した歯において、唾液中の細菌が補綴物コアのすき間から歯の中に侵入することがあります。

根管充填でつめた薬のすき間をつたって歯根の先まで到達した細菌は、その先の骨の中に入りこんで炎症を起こします。

以前抜髄した歯が再度感染した場合

2.感染根管に関連して知っておくべきこと

per(ペル)

歯根の先の骨の病気のことを、根尖病巣(こんせんびょうそう)といいます。

患者さんは、食事などで歯を咬み合わせるたびに根尖病巣が押され、痛みなどの不快感を感じます。この状態をC3 per (ペル)ともいいます。

根尖病巣ができた状態
根尖病巣ができた状態

サイナストラクト(フィステル、瘻孔)

ペルの状態で歯を放置すると、膿が骨をつきやぶり、粘膜まで出る場合があります。その場合、歯肉にニキビのようなものができます。これをサイナストラクトといい、フィステル瘻孔(ろうこう)ともよびます。

サイナストラクト(フィステル、瘻孔)

P-per

ペルと歯周病の両方にかかった状態を、P-per(ピーペル)またはエンドペリオといいます。これは非常に治りづらいため、抜歯になることもあります。

P-per

3.perにかかった歯の治療法

C3 perの治療には、以下の方法があります。

3.ペルにかかった歯の治療法

切開排膿

歯根の先の骨で膿がどんどんたまってくると、強い痛みを生じることがあります。そして、行き場のない膿が骨を突きやぶり、歯肉が腫れることがあります。

歯根の先の骨で膿がたまる様子
歯根の先の骨で膿がたまる様子

そのような場合は、粘膜を切って歯肉の下にたまっている膿を排出し、痛みをやわらげます。これを切開排膿(せっかいはいのう)といいます。

切開排膿(せっかいはいのう)

感染根管治療

抜髄と同じように、歯の中から細菌を取りのぞく治療を感染根管治療(かんせんこんかんちりょう)といいます。術後は、鎮痛剤や抗生物質を処方することがあります。

① 歯髄が死んでしまった場合

アシスタントスタッフの目からは、抜髄とほぼ同じ治療を行っているように見えます。ただし、歯髄は死んでいるため、基本的に麻酔は必要ありません。

歯髄が死んでしまった場合の感染根管治療
歯髄が死んでしまった場合の感染根管治療

② 以前抜髄した歯が再度感染した場合

補綴物やコア、薬を含め、細菌をすべて取りのぞく治療が必要となります。細菌を取りのぞいた後は、再度薬をつめ、コアや補綴物を作っていきます。

治療自体が数回で終わり、病気の原因である感染根管がきれいになったとしても、実際に歯根の先の骨が回復してくるには、長い時間がかかります。

以前抜髄した歯が再度感染した場合の感染根管治療
以前抜髄した歯が再度感染した場合の感染根管治療

③ J-Open

歯根の先の骨の中で大量の膿がたまっていても、切開排膿が不可能なことがあります。

この場合は、根管をあけた状態で次回の治療までの時間をかけて膿を外に排出するJ-Open(ジェイオープン)という治療法が選択されることがあります。

J-Open(ジェイオープン)

歯根端切除術

根尖病巣が大きく、感染根管治療のみで治ることが期待できない場合、骨に穴をあけ、感染している部分を外科的に除去することがあります。これを歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)といい、apico(アピコ)とよぶ歯科医院もあります。

術後は、鎮痛剤や抗生物質を処方します。

④ 歯根端切除術
歯根端切除術

4.感染根管治療とセットで行われる治療

感染根管治療とセットで行われる治療

除去

以前抜髄を行った歯を感染根管治療する際に、古い補綴物やコアなどを取りはずす治療のことを、除去といいます。除去は、生活歯のCRやインレー、クラウン、ブリッジに対して行われることもあります。

失活歯のクラウンを除去する様子
失活歯のクラウンを除去する様子

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第6章 予防・治療の知識

STEP1 予防
STEP2 投薬
STEP3 歯周病の治療
STEP4 知覚過敏の治療
STEP5 小さなう蝕の治療
STEP6 歯の神経をとる治療
STEP7 かぶせ物を作る治療
STEP8 感染根管の治療
STEP9 TeCを作る治療
STEP10 ブリッジを作る治療
STEP11 義歯を作る治療
STEP12 義歯の調整
STEP13 歯を抜く治療
STEP14 小児患者さんの治療
STEP15 その他の治療