歯科のお仕事完全マニュアル  第1章 歯科医療について STEP1 歯科医療の基礎と各スタッフの役割

dStyleの「歯科のお仕事完全マニュアル」では、日本の歯科医療のアシスタント能力向上を目指すために、歯科医療の基礎知識から実践的な技術までをわかりやすくまとめています。歯科助手、歯科衛生士をはじめとした歯科医療従事者の方は、ぜひご活用ください。

第1章では、まず歯科医院での仕事を理解するために、歯科医療がどのような価値を社会に提供しているのか、歯科医療の「予防」と「治療」とはどういうものかを説明します。

また、歯科医院で働くさまざまな職種の役割を紹介し、歯科衛生士や歯科助手の主要業務についても解説していきます。

*この記事は2023年2月16日に更新しました

第1章 歯科医療について

STEP1 歯科医療の基礎と各スタッフの役割
STEP2 歯科医院の一日の流れとアシスタント
STEP3 予防・治療の対象
STEP4 保険治療と自費治療

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歯科医療とは

歯科医療は、歯科疾患の予防や治療を通じて、食べる・話すなど、人々の生きる力を支える医療です。

歯科医療というと、「歯を削ってつめる」「歯の神経をとる」「歯を抜いて入れ歯をいれる」などのイメージが強いかもしれません。しかし、大切なのは予防や治療の先にある患者さんの健康的な生活です。

歯科医療に携わる私たちは、できる限り多くの人々が健康的な口腔を維持できるように働きかける必要があります。

また、寝たきりで介護が必要となった患者さんには、“自分の口で食事ができる”人生を送ってもらえることを目指します。

さらに、美しい口元は、その人の笑顔の印象を良くしたり、健康的な印象を与えたり、周囲の人々の気持ちまで明るくしてくれます。

予防と治療

歯科医療は、大きく「予防」と「治療」の二つに分けられます。

予防

予防とは、う蝕や歯周病などの病気にかかることを防ぎ、患者さんの口腔内を守っていく働きかけや処置を指します。

歯科疾患は生活習慣病としての側面が強く、患者さんのブラッシングや食生活などにより、う蝕や歯周病の進行は左右されます。

患者さんの健康的な生活を考えると、歯が痛くなってからの受診ではすでに疾患が進行しているケースがほとんどです。また、う蝕や歯周病といった口腔疾患は進行すればするほど、治療時の痛みや不快感が強まります。日常的に予防を行い、必要となったときに最小限の治療を受けてもらうことが理想的です。

治療

治療とは、歯科疾患により失われた、または失われつつある口の機能・見た目を再構築し、健康的な状態に戻していく処置を指します。

むし歯を削って、プラスチック(レジン)を詰める治療
う蝕を削って、プラスチック(レジン)を詰める治療

歯科医院で働く人々

職種 免許 特筆事項
歯科医師
歯科衛生士
歯科助手 不要
受付 不要 歯科衛生士や歯科助手が兼任する場合も多い
歯科技工士 歯科技工所・規模が大きな歯科医院に勤務していることが多い
事務 不要 規模が大きな歯科医院では配置していることが多い

歯科医師・歯科衛生士・歯科助手 それぞれの役割

多くの歯科医院では、主に歯科医師歯科衛生士歯科助手の3つの職種のスタッフが働いています。

患者さんの口に直接触れ、予防や治療を提供する歯科医師・歯科衛生士を、術者(じゅつしゃ)とよびます。一方で、免許が必要のない歯科助手は「アシスタント」とよばれることも多く、診療の介助(アシスト)をメインに術者をサポートします。

それぞれの職種ができる仕事は、次の通りです。

歯科医師・歯科衛生士・歯科助手 それぞれの役割

歯科医師の役割

歯科医師は患者さんに対する「歯科治療」や「保健指導」、「健康管理」などを行います。

治療については、「歯を削る」「詰め物やかぶせ物をいれる」といった、う蝕に対する処置だけでなく、抜歯やインプラント埋入などの外科処置まで、治療できる範囲は多岐にわたります。また、歯科治療に付随する行為であれば、全身麻酔や呼吸管理を行うことや、死亡診断書を書くこともできます。

さらに昨今では、歯科衛生士と連携して行う「予防歯科」や、高齢者向けの「口腔ケア」などの需要も高まっており、歯科医師に求められるニーズは年々広がりを見せています。
(参照:歯科医師ってどんな仕事?

歯科衛生士の役割

歯科衛生士は「歯科予防処置」や「歯科診療の補助」、「保健指導」などを行います。歯科医師は治療に専念し、「予防」に関する処置は歯科衛生士が担うことで、歯科医療における役割分担ができます。

歯科衛生士が行える予防処置としては、う蝕や歯周病を予防するための「フッ化物塗布」や「歯石の除去」などがあります。

歯科診療の補助については、患者さんの口にたまった液体を吸う「バキューム操作」や、器具の受け渡しなどをメインに行いますが、場合によっては患者さんの歯型をとったり、仮歯の調整や作製を行ったりすることもあります。

また、保健指導では、ブラッシングの方法をはじめとして患者さんに正しい歯科知識を伝えることで、患者さんの日常生活の改善を図ります。歯科疾患を予防するためには、患者さん一人ひとりのリスクに応じたセルフケアの方法を身につけてもらうことが必要です。

予防歯科が注目されている昨今、口腔ケアの専門家として保健指導を行える歯科衛生士のニーズは高まりつつあります。
(参照:歯科衛生士ってどんな仕事?

歯みがき指導の様子
歯科衛生士によるブラッシング指導の様子

歯科助手の役割

歯科助手は、主に「歯科医師の治療の介助」を行います。歯科助手は「アシスタント」とよばれることが多く、診療の介助は「アシスト」ともいいます。

診療の介助の具体的な仕事内容としては、診療で使用する器具の受け渡しや「バキューム操作」、患者さんの口腔内が見やすいようにライトを当てる「ライティング」などが挙げられます。ただし、免許をもつ歯科医師や歯科衛生士とは異なり、歯科助手は患者さんの口腔内には触れられないため注意が必要です。

また、歯科医院によっては以下のような業務を兼務することがあります。

  • 受付・会計業務
  • 診療報酬明細書(レセプト)の作成
  • 診療室の整備
  • 在庫管理
  • 待合室の飾り付けやポスター作り

実際の仕事内容は勤め先によってさまざまですが、その業務内容は多岐にわたり、歯科医院にとって歯科助手は欠かせない存在です。
(参照:歯科助手ってどんな仕事?

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STEP1 歯科医療の基礎と各スタッフの役割
STEP2 歯科医院の一日の流れとアシスタント
STEP3 予防・治療の対象
STEP4 保険治療と自費治療

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