歯科衛生士のみなさんは、小児患者さんの臨床にどれくらい関わっていますか?
矯正歯科や小児歯科に勤めている方は、毎日のように関わる機会がありますよね。
一方で、歯周治療やインプラントに特化した歯科医院などで働いていると、小児患者さんと関わる機会はあまり多くないかもしれません。しかし、これから出産を控えている方が来院することや、メインテナンスに通っている方が、それぞれのライフステージの中で、結婚や出産を経験することは少なくないでしょう。
直接関わる機会は少なくても、保護者の方を介して、小児の正しい口腔機能を育成するサポートはできるはずです!
前回は、口腔機能発達不全が起こる原因についてお伝えしました。
(前回はこちら:知っていますか?口腔機能発達不全! vol.1 〜口腔機能発達不全はなぜ起こる?〜)
今回は、哺乳期の注意点と、離乳食をはじめる適切な時期についてお伝えします♪
母乳育児は口腔機能を発達させる!
現在、母乳には栄養素や免疫物質が多く含まれているなどの理由から、母乳育児があらゆる機関で推奨されています。中でも、口腔機能の発達に良いとされている理由はなんでしょう?
まずは、哺乳時の運動について学びましょう!
乳児は哺乳時に、舌の中央部分で乳首を保持し加圧します。それに加え、舌根部を上下運動させることによって、口腔内に陰圧と陽圧を形成し、母乳を咽頭へ流しこみます。この運動によって、軟口蓋の挙上運動が起こり、顎骨の正しい成長と舌の使い方のトレーニングが行われます。
一方で、哺乳瓶の人工乳首には、乳児が吸わなくても倒しただけでミルクが出てくるものがあります。そのような哺乳瓶を使用すると、常に出てくるミルクをせき止めるため、舌が前後にピストン運動しながら飲みこむようになります。
そうすると、大切な口腔機能を育成することができず、舌突出癖や異常な嚥下といったクセがついてしまいます。これが、将来的に開咬などの不正咬合を招いてしまうのです。
しかし、中には母乳が出ないお母さんや、仕事をしながらの育児でなかなか授乳ができないお母さんもいます。
現在は、人口乳首の開発が進められており、できるだけ母乳を飲むときと同じような舌や口腔周囲筋の動きになるように作られているものも発売されています。
哺乳瓶を使用する場合は、製品選びからしっかりと行うように指導しましょう!
正しい授乳の仕方って?
それでは、授乳はどのように行うべきなのでしょうか?
乳児は哺乳するとき、ラッパ状に上下の唇を開けて、口全体で乳首をおおいます。唇の先だけでくわえるような状態では、母乳を正しく飲むことができません。母乳の飲み方については注意して観察しましょう。
また、乳児の背骨はC字型にカーブを描いているため、背筋を伸ばすよりも背中が丸くなっている方が安定します。とくに、まだ首が座らないうちは、乳児の頭を支え、丸く抱きかかえるようにして授乳するのがベストです。
そして、夜間の授乳時によく行われる「添い寝授乳」は、体が左右どちらか一方に傾いていることで、片側性のう蝕が発生するリスクや、交叉咬合になるリスクがあります。添い寝授乳は極力避けて、お母さんは体を起こした状態で授乳するようにしましょう。
離乳食はいつからはじめる?
乳児は生後3〜4ヶ月ほどで首が座り、その後体幹がしっかりしてくると、哺乳反射がなくなっていきます。
そうすると、さまざまなことに興味を持ちはじめ、食べ物を見てよだれを出したり、手を出したりするなどの動作を行うようになります。このような動作がみられたら、離乳食開始の時期です。一般的には、生後5〜6ヶ月頃といわれています。
離乳食ははじめ、ペースト状のものからスタートしますが、その後は、口腔や全身の発育状態に合わせてステップアップしていく必要があります。
日本小児歯科学会が行った全国調査によると、乳歯の萌出時期は、切歯部において約1歳、臼歯部においては約2歳もの個体差があるとのこと。そのため、乳児一人ひとりの成長に合わせた離乳食を摂取させることが望ましいです。
次回は、そんな離乳食の進め方について詳しく説明していきます♪
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監修・資料提供:医療法人社団守徳会 とのぎ小児歯科 理事長兼院長 外木徳子先生
知っていますか?口腔機能発達不全!
vol.1 口腔機能発達不全はなぜ起こる?
vol.2 哺乳期に気をつけることとは?
vol.3 離乳食の正しい進め方とは?
vol.4 歯列不正を防ぐ食習慣&トレーニング