歯科医療というと、「歯を削ってつめる」「歯の神経をとる」「歯を抜いて入れ歯をいれる」などのイメージが強いかもしれません。しかし、患者さんがう蝕にならないように予防することも、治療と同様に重要な歯科医療の役割の一つです。
STEP3では、歯科医療における予防・治療の対象をお伝えします。
*この記事は2023年3月14日に更新しました
第1章 歯科医療について
STEP1 歯科医療の基礎と各スタッフの役割
STEP2 歯科医院の一日の流れとアシスタント
STEP3 予防・治療の対象
STEP4 保険治療と自費治療
「歯科のお仕事完全マニュアル」目次一覧はこちら
歯科医療における予防
予防歯科とは
予防歯科とは、歯に問題が起こる前に来院してもらい、検査や治療、生活指導などを積極的に行うことです。歯科治療はう蝕や歯周病になってから処置を行うのに対し、予防歯科では歯科疾患にかかる前に予防処置をとり、罹患リスクを減らします。
日本ではまだ馴染みのない方も多いですが、予防歯科の重要性は徐々に広まっており、需要も高まりつつあります。
歯科医療における「予防の対象」
歯科医療における予防の対象は、主としてう蝕(むし歯)と歯周病です。う蝕と歯周病は、口腔内の二大疾患とよばれ、歯を失う最大の原因といわれています。
全身的な健康を維持するためにも、歯科疾患の予防は大切です。今後ますます予防の重要性は高まっていくと考えられています。
歯科治療の対象となる症状の種類
一方で、歯科治療とは、歯科疾患にかかった患者さんに対して治療処置を行うことを指します。
ここでは、一般的な歯科治療で対象となる、代表的な以下の症状について説明します。
- う蝕
- 歯周病
- その他の病気
粘膜の病気、外傷、智歯(親知らず)、見た目、歯列不正
① う蝕
う蝕は、歯科医療において予防の対象であると同時に、治療の対象でもあります。
患者さんが歯科医院に来院するきっかけの中の大部分を占め、う蝕になると冷たいものや甘いもの、温かいものがしみるようになります。
進行したう蝕を長期間放置しておくと、何もしない状態でも痛みが出るようになってしまうため、早期に治療することが重要です。
う蝕の部分を削って、プラスチックの材料で補ったり、型をとって銀歯を入れたりします。
② 歯周病
う蝕と同様に、歯周病も治療の対象になります。
う蝕に比べると自覚症状が少なく、歯肉(歯ぐき)からの出血や、歯ぐきの腫れがみられます。歯周病が進行すると、歯槽骨(歯を支える骨)まで溶かしてしまい、歯がグラグラと揺れてきます。
歯周病の治療では、ブラッシング指導や、歯の周りについた汚れ(プラーク)や歯石の除去を行います。
③ その他の病気
粘膜の病気
う蝕と歯周病に加えて、口内炎などの粘膜の病気も、治療の対象となります。薬剤の塗布や処方などを行います。
外傷
事故やスポーツなどで顔面を打ち、歯がグラついていたり、抜け落ちたりしてしまった場合も、治療の対象になります。
外傷は、初期対応の早さによって予後が変わります。急患で外傷の患者さんが来られたときは、焦らずに的確な対応をしましょう。
歯が失われたスペース
う蝕や歯周病、外傷などによって歯を失うと、話すことや食事などがしづらくなったりします。
また、歯が失われたスペースを長期間放置しておくと、隣の歯が傾斜してきたり、上の歯が挺出(ていしゅつ)してきたりします。それを防ぐために、ブリッジや入れ歯、インプラントなどの方法で、失われたスペースを補う必要があります。
智歯(親知らず)
親知らずの生えている方向によっては、周りの歯に悪影響をおよぼす場合があります。また、歯ブラシが届きにくいため、う蝕や歯周病にかかりやすく、歯肉に炎症があると、上の歯と咬み合わせたときに痛みを感じる場合もあります。
周りの歯に悪影響が出る前に、親知らずの治療または抜歯を行う必要があるでしょう。
見た目
歯科疾患にかかっていなくても、患者さんに「口元の見た目を改善したい」という意思がある場合は、見た目をきれいにする治療(審美歯科治療)が行われます。
※ 医療では、治療前のことを術前(じゅつぜん)、治療後のことを術後(じゅつご)といいます。
歯列不正
患者さんに「歯並びを綺麗にしたい」という意思がある場合は、矯正治療が行われます。
歯列不正があると、歯ブラシが届きにくい部分にう蝕ができたり、歯周病にかかりやすくなったりします。う蝕や歯周病を予防するためにも、歯の矯正は効果的です。
このように、歯科医院では歯にまつわるさまざまな治療が行われます。
う蝕がきっかけで来院された患者さんであっても、他の治療が必要な場合や、今後う蝕にならないための指導やメインテナンスが必要です。
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第1章 歯科医療について
STEP1 歯科医療の基礎と各スタッフの役割
STEP2 歯科医院の一日の流れとアシスタント
STEP3 予防・治療の対象
STEP4 保険治療と自費治療
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