歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?
歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。
ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?
「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。
このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!
ウエスト部が屈曲した形状の歯間ブラシの効果を調べた論文
今回解説するのはこちらの論文です。
ウエスト型歯間ブラシの試験管内における清掃能力
『Swiss Dental Journal』
この研究では、ブラシのウエスト部が屈曲した新しい形状(ウエスト型)の歯間ブラシと、従来の円柱型の歯間ブラシの清掃効果を比較しています。
どんな方法で調べている?
ブラシの直径が2〜9 mmである3種類の歯間ブラシを4つのグループにわけ、2つの異なる装置を使って清掃効果を試験しました。
使用した歯間ブラシの種類は、以下の3つです。
- 円柱型細いサイズ
- 円柱型太いサイズ
- ①と②のサイズを組み合わせたウエスト型
グループの内訳は、以下の通りです。
- グループ1:① 直径2mm、② 4mm、③ 4-2-4mm
- グループ2:① 直径4mm、② 7mm、③ 7-4-7mm
- グループ3:① 直径5mm、② 8mm、③ 8-5-8mm
- グループ4:① 直径6mm、② 9mm、③ 9-6-9mm
※ 歯間ブラシはすべて同じメーカーのものを使用
これらの歯間ブラシを、表面を酸化チタン溶液でコーティングした装置や模型に使用し、それぞれ1、5、10回ストロークを行ったときの値を記録しました。その後、溶液の除去量を平面的に評価しました。
ウエスト型歯間ブラシの方が清掃効果は高い?!
今回の研究結果によると、どの装置を使用した場合でも、ウエスト型の歯間ブラシを使用した方が、清掃効果が有意に高いということがわかりました。
さらに、模型上における測定の場合、円柱型の歯間ブラシを5ストロークしたときの清掃効果は、ウエスト型の歯間ブラシを1ストロークしたときの効果と有意差がないということがわかりました。同様に、円柱型10ストロークの場合は、ウエスト型5ストロークと清掃効果が変わらない結果に。
よって、ウエスト型の歯間ブラシは、より少ないストロークで、プラークを除去できる可能性があるということを示しています。
この研究に対する考察
今回の研究では、新しい形状のウエスト型歯間ブラシの清掃効果が、従来のスタンダードな形状の歯間ブラシよりも高いということがわかりました。
おそらく、歯間ブラシを挿入するときと、引き抜くときに、ブラシの先端と根元部分の太い部分が、歯牙の隅角部にあたりやすいのではないでしょうか。従来の形状の歯間ブラシでは、隅角部のプラークは除去しづらいため、このような違いが測定結果に影響したのかもしれません。
ただし、この研究はあくまでも生体外で行われたものであり、まだまだ生体内における研究も進めていく必要があります。
一方で、この論文以外にも、ウエスト型歯間ブラシの有効性が示されている論文はいくつか発表されているため、日本での実用化も遠くはないかもしれません。
日本で販売されたときは、ぜひみなさんも一度お試ししてください♪
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毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。
自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです!
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