歯周病に関する分類をおさらいしよう!No.2 〜ミラー(Miller)の分類〜

歯科衛生士のみなさんは、患者さんの口腔内診査を行うとき、どのようなことに注意して観察していますか?

口腔内にはたくさんの情報があふれており、プラークの付着状況や歯肉からの出血、根面の粗糙感、咬合の状態など、他にもさまざまなことに気をつけながら診査する必要があります。

この連載では、そんな中でも歯科衛生士の方にはかならず覚えておいてほしい、歯周病に関する分類についてお伝えします♪

前回は、歯肉退縮のリスクを示す「メイナード(Maynard)の分類」についてお伝えしました。
(前回はこちら:歯周病に関する分類をおさらいしよう!No.1 〜メイナード(Maynard)の分類〜

今回解説するのは、「ミラー(Miller)の分類」です。

ミラーの分類とは?

ミラーの分類には2種類あります。どちらの分類も、プレストン・ミラー先生が提唱したものです。

ひとつは、歯牙の動揺度を示す分類で、もうひとつは、歯肉退縮と周囲組織の状態から根面被覆の可能性を評価するための分類です。

どちらの分類も歯科衛生士にとっては非常に重要な知識のため、今回は2種類とも紹介していきます♪

歯牙の動揺度を示す「ミラー(Miller)の分類」

こちらの分類では、歯牙の動揺度を0〜3度の4つに分類。動揺度が大きくなるにつれ、抜歯のリスクも上昇します。

0度:生理的動揺(0.2mm以内) 

1度:軽度の動揺(唇舌的に0.2~1mm)

2度:中等度の同様(唇舌、近遠心的に1~2mm)

3度:高度の動揺(唇舌、近遠心的に2mm以上、または垂直方向の舞踏状動揺)

歯牙の動揺の原因はさまざまです。重度の歯周炎や咬合性外傷、歯牙の破折、補綴歯であれば補綴物の脱離など、考えられることはたくさんあります。

診査の際には動揺度を計測するだけでなく、プロービング値やX線写真といった資料とあわせて、なにが原因で動揺しているのかということまで考えましょう。

X線写真

根面被覆の可能性を評価する「ミラー(Miller)の分類」

もうひとつのミラーの分類では、歯肉退縮と周囲組織の状態から、根面被覆の可能性を評価します。

評価するポイントとしては、以下の2点が挙げられます。

  1. 歯肉歯槽粘膜境(MGJ:Muco Gingival Junction)に達する歯肉退縮かどうか
  2. 隣接歯間部の歯槽骨や軟組織の有無

これらを評価し、Class1〜4の4つに分類します。

Millerの分類

Class1:歯肉退縮がMGJに達しない。隣接部の骨や軟組織の喪失がない。 

Class2:歯肉退縮がMGJに達する、または越える。隣接部の骨や軟組織の喪失がない。

Class3:歯肉退縮がMGJに達する、または越える。隣接部の骨や軟組織の喪失、歯牙の位置異常がみられる。

Class4:歯肉退縮がMGJに達する、または越える。隣接部の骨や軟組織の著しい喪失、歯牙の位置異常がみられる。

Class1では、「完全な根面被覆が期待できる」とされ、Class2・3では、「部分的な根面被覆が期待できる」とされています。一方で、Class4になると、「根面被覆はほとんど期待できない」と評価されてしまいます。

根面被覆を行うには?

現在、根面被覆を行うために、もっともよく用いられる術式は、結合組織移植術(CTG:Conective Tissue Graft)です。

CTGによる根面被覆は、移植片が生着しやすく、審美性にも優れているという特徴を持ちます。また、広い範囲の歯肉退縮や、多数歯にわたる歯根露出部位へも適応可能です。

ほかにも、歯肉弁側方移動術や歯肉弁歯冠側移動術、遊離歯肉移植術(FGG:Free Gingival Graft)といったさまざまな術式がありますが、歯肉退縮の再発や組織壊死のリスク、審美的な問題が懸念されています。

歯肉退縮

根面被覆を行う理由は?

根面被覆を行う理由としては、歯肉退縮による弊害を防ぐということが挙げられます。

歯肉退縮が生じると、以下のことが起きやすくなると考えられます。

  • ブラッシング時の疼痛
  • 象牙質知覚過敏症(Hys)
  • 根面カリエス
  • 補綴歯の二次カリエス
  • 歯頸ラインの不ぞろいによる審美的な問題 など

よって、根面被覆を行う必要性がでてきます。

歯肉退縮の原因としては、おもに歯周炎によるものや、過度なブラッシング圧などが考えられますが、歯列不正によるものについては、根面被覆が適応でない場合もあります

主治医と相談して、適切な治療を提供できるようにしましょう!

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いかがでしたか?

歯周病に関する分類について、聞いたことはあっても正確に理解できていなかったり、忘れていたりする部分がある方は、ぜひこの連載で一緒に復習していきましょう♪

次回は、「シーバー(Seibert)の分類」についてお伝えします!

参考文献:特定非営利活動法人日本歯周病学会『歯周治療の指針2015』
瀧野裕行・岩田光弘・小野晴彦・大川敏生・金子潤平・平山富興(2018)『驚くほど臨床が変わる!こだわりペリオサブノート』クインテッセンス出版株式会社

歯周病に関する分類をおさらいしよう!

No.1 メイナード(Maynard)の分類
No.2ミラー(Miller)の分類