歯科衛生士向けおすすめ論文 No.10「電動歯ブラシと手用歯ブラシどっちが有効?」

歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?

歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。

ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?

「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。

このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!

歯科衛生士向けおすすめ論文

音波式電動歯ブラシと手用歯ブラシを比較した論文

今回解説するのはこちらの論文です。

音波歯ブラシ(SonicareⓇ FlexCare Platinum)のプラーク除去、臨床パラメーターならびに歯周ポケット内細菌に与える効果
『日本歯周病学会会誌』

今回は、日本歯周病学会の学会誌から、歯科衛生士として気になる論文を見つけてきました!こちらの学会誌は1959年に発刊されてから60年以上も続いている、歴史のある刊行物です。

この研究では、音波式電動歯ブラシの代表的な製品であるソニッケアーと、手用歯ブラシを比較し、それぞれのブラッシング効果を比較しています。

どんな方法で調べている?

歯周炎患者である20名の被験者を、ランダムに10名ずつソニッケアー群と手用歯ブラシ群に分けました。

ソニッケアー群には、ソニッケアーフレックスケアプラチナムのインターケアブラシヘッド(スタンダードサイズ)を、手用歯ブラシ群には、毛先が極細毛タイプの3列植毛の歯ブラシが割り当てられました。

研究開始時には、被験者の歯肉炎指数とプロービング値、BOP、プラーク付着量を計測し、細菌検査の結果も記録。その後、それぞれの歯ブラシを用いてTBI、歯面研磨を行った後、被験者によるセルフケアが開始されました。

研究開始から2週間後および4週間後に再度、被験者の歯肉炎指数とプロービング値、BOP、プラーク付着量を計測。また、4週間後には細菌検査も行いました。

歯肉炎指数とプロービング値、BOP、プラーク付着量を計測

音波式電動歯ブラシを使うと歯周組織が早く改善する?!

被験者の平均ブラッシング回数と、ブラッシング時間は以下の通りです。

ソニッケアー群:平均1日2.4回、6.9分
手用歯ブラシ群:平均1日2.1回、7.2分

今回の研究結果によると、ソニッケアー群と手用歯ブラシ群の間では、プラーク付着量や歯肉炎指数に有意差はありませんでした。しかし、プロービング値とBOPについては、ソニッケアー群が手用歯ブラシ群に比べ早期に改善することがわかりました。

また、細菌検査の結果、どちらの群においても、細菌の総数と歯周病原因菌数が有意に減少したとのこと。その中でも、ソニッケアー群では「タンネレラ・フォーサイシア菌(T.f菌)」、手用歯ブラシ群「トレポネーマ・デンティコラ菌(T.d菌)」の減少に有意差を認めたようです。

* 有意という言葉については、第1回の記事で説明しています。こちらをご覧ください!
(参照:歯科衛生士向けおすすめ論文 No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」

この研究に対する考察

論文の最後の考察には、ソニッケアー群が手用歯ブラシ群よりも、早期にプロービング値やBOPが改善した理由について、次の二点が述べられています。

  • 音波式電動歯ブラシのキャビテーション効果によって、歯ブラシの毛先が直接あたらない部分のプラークを除去できた
  • 音波振動によって歯肉へのマッサージ効果が相乗的に作用した

この論文の結果をみると、手用歯ブラシできれいに磨けるようであれば、かならずしも音波式電動歯ブラシを使う必要はないと感じます。しかし、歯周炎を早く治したい方には音波式電動歯ブラシの使用をおすすめするといいかもしれませんね♪

音波式電動歯ブラシ

今回の研究では、ひとつのメーカーの1種類のブラシでしか比較されていないので、一概に、音波式電動歯ブラシの方が優れているとは言い切れません。

しかし、確実に言えることは、音波式電動歯ブラシまたは手用歯ブラシのどちらを使うにしても、正しいブラッシング方法を身につけていなければ、プラークは除去できないということです。

患者さんの器用さや歯肉の敏感さなど、担当の歯科衛生士にしかわからない情報もふまえた上で、患者さんにベストな清掃用具を提案しましょう♪


毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。

自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです!

参考文献:白川哲・他(2016)「音波歯ブラシ(SonicareⓇ FlexCare Platinum)のプラーク除去、臨床パラメーターならびに歯周ポケット内細菌に与える効果」『日本歯周病学会会誌(日歯周誌)』2016年58巻3号, p.107-116, 特定非営利活動法人 日本歯周病学会

歯科衛生士向けおすすめ論文

No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」
No.2「ストレートVSアングル どっちの歯間ブラシを使うべき?」
No.3「スケーリングで削られてしまうセメント質はどれくらい?」
No.4「スケーリング前に行うブラッシングの効果は?」
No.5「歯磨剤の使用はプラーク除去に本当に効果的なの?」
No.6「プラーク除去に有効な歯ブラシの形状は?」
No.7「う蝕予防に効果がある歯磨剤のフッ化物濃度は?」
No.8「抗うつ薬服用患者はインプラントを喪失しやすい?」
No.9「ホワイトニング歯磨剤の着色に対する効果は?」
No.10「電動歯ブラシと手用歯ブラシどっちが有効?」