歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?
歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。
ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?
「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。
このシリーズでは、歯科衛生士さんに役立つおすすめの論文を紹介していきます!
スケーリング前に行うブラッシングの効果を研究した論文
今回解説するのはこちらの論文です。
超音波スケーラーを用いたスケーリングの前に行う、プロフェッショナルケアによるブラッシング効果
『International Journal of Dental Hygiene』
この研究は、2012年7月から9月の間に、韓国のソウル市内の歯科医院でスケーリングを受けた患者さんに実施されました。
超音波スケーラーを用いてスケーリングを行う前に、歯科衛生士がさまざまな清掃用具を用いてプラークを除去し、それによって得られる効果と、患者の満足度を調べています。
どんな方法で調べている?
研究の参加に同意した37人の被験者に、歯科衛生士が歯ブラシとフロスを用いてプラークコントロールを行ったあと、超音波スケーラーを用いてスケーリングをしました。
そして、その後、いつも通りのスケーリングを受けたそうです。
患者さんの満足度に違いは?!
今回の研究では、統計的分析システムを用いて解析されましたが、残念ながら、患者満足度についてはとくに有意差がなかったとされています。
しかし、クリーニング全体にかかる時間を比較すると、ブラッシングを行ったあとにスケーリングを行った場合は平均約16分間(うちスケーリングは約7分間)、スケーリング単体で行った場合は平均約23分間という結果に。
スケーリング前にブラッシングを行ったときの方が、超音波スケーリングにかかる時間が有意に時間が短くなることがわかりました。さらに、クリーニング全体の時間も有意に短くなることがわかりました。
そのため、超音波スケーラーを用いたスケーリング前に、歯科衛生士が歯ブラシやフロスを用いてプラークを除去することは、チェアタイムの短縮に繋がるということが示されました。
* 有意という言葉については、こちらの記事で説明しています。
(参照:歯科衛生士向けおすすめ論文 No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」)
この研究に対する考察
今回の研究によって、クリーニング全体にかかる時間には、グループ間で7分ほどの差があり、超音波スケーラーを使用している時間については、16分もの差があることがわかりました。
その理由として、超音波スケーラーはチップの先端2〜3mmほどしか動作しないため、歯面に付着したプラークを除去するには時間がかかってしまうということが考えられます。
スケーリングを行うときに、まずはじめに超音波スケーラーを手に取る方は要注意です!
また、歯ブラシなどであらかじめプラークを除去することは、スケーリングの効率が良くなるだけでなく、TBIも同時に行うことができます。TBIすることで、患者さんとコミュニケーションがとれ、信頼関係も構築しやすくなることでしょう。
残念ながら、この研究では有意差が出ませんでしたが、私個人としては、ブラッシングを含めたスケーリングの方が、患者満足度は高くなると信じたいです!
いかがでしたか?
毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。
自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです!
歯科衛生士向けおすすめ論文
No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」
No.2「ストレートVSアングル どっちの歯間ブラシを使うべき?」
No.3「スケーリングで削られてしまうセメント質はどれくらい?」
No.4「スケーリング前に行うブラッシングの効果は?」