歯を白くしたい!芸能人みたいにきれいな歯にしたい!
患者さんのこんな要望を叶えるために行われるホワイトニング。
年々、ホワイトニングを行う歯科医院が増えている中、ホワイトニングエキスパートやホワイトニングコーディネーターといった、それに特化した資格を取得する歯科衛生士さんも増えてきているのではないでしょうか?
(参考:ホワイトニングコーディネーターになるには?)
この連載では、これからホワイトニングをやりたいと考えている歯科衛生士さんに知っておいてほしい、ホワイトニングの知識についてお伝えしていきます。
今回は、ホームホワイトニングについて詳しく解説しようと思います♪
ホームホワイトニングとは?
患者さん自身が専用のトレーを用いて、自宅で行うホワイトニングのことです。
日本の厚生労働省が認可している製品は、すべて10%の過酸化尿素を主成分とする薬剤を使用しています。また、ホームホワイトニングは原則として、「1日1回、2時間以内で、最長2週間まで継続して行う」とされています。
ホームホワイトニングのメリットとしては、
- 通院回数が少ない
- オフィスホワイトニングよりも、透明感や自然感のあるホワイトニングが可能
- 後戻りが比較的起きにくい
- 低濃度の薬剤を使用するため、安全性が高い
などが挙げられます。
反対にデメリットとしては、
- 歯科医院でトレーの技工操作が必要
- 自宅で行うため、患者さんの協力が必須
- オフィスホワイトニングよりも、効果が出るまでに時間がかかる
- 歯列不正に対応しにくい
などが挙げられます。
ホームホワイトニングの手順
ホームホワイトニングには、診療室内で行う処置と、患者さんが自宅で行う処置があります。
それぞれについて詳しく説明していきます♪
診療室編
① 印象採得
患者さんの歯列に合わせたトレーを製作するために、全顎(場合によっては上下顎どちらかのみ)の印象採得を行います。
トレーが完成するまでに1〜2週間かかることを患者さんに伝え、次回のアポイントをとります。
※ ホームホワイトニング材を発注する場合は、次回のアポイントに間に合うよう、忘れずに行いましょう。
② トレーの試適
完成したトレーを、患者さんの口腔内に装着し、痛みや違和感がないか確認します。
③ 歯面清掃・研磨
歯石やプラークなどが歯面に付着していると、ホワイトニング効果が出にくくなります。そのため、ホワイトニングの前にはかならずクリーニングを行います。
バイオフィルムを除去したあとは、ホワイトニング材を浸透させやすくするために、フッ化物を含んでいない研磨用ペーストで歯面研磨を行います。
④ 口腔内写真の撮影、シェード確認
口腔内写真は術前と術後を比較できるように、同一倍率、同一方向から撮影しましょう。
さらに、ホワイトニング効果の確認や、「色が変わらない」というトラブルを避けるために、術前のシェードの確認はとても重要です。
患者さんに手鏡を持ってもらい、シェードガイドと歯の色調を一緒に確認してもらいましょう。
また、歯科医院に測色器があれば、使用することでより正確な測定ができます。測色器を使用する場合は、数値だけでなく測定する歯の部位も正確に記録しておく必要があります。
帯状の変色や、歯頸部の着色など、部位により色調が異なる場合は、特にしっかりと説明しておきましょう。
⑤ 注意事項の説明
ホワイトニング後の歯面は、付着していたペリクルが除去され、色素を吸着しやすく、脱灰されやすい状態です。
ホワイトニング期間中は、着色しやすい飲食物(コーヒー、紅茶、ワイン、カレーなど)や、酸性の飲食物(柑橘系の果物、炭酸飲料など)の摂取をひかえてもらうようにお伝えしましょう。
また、ホームホワイトニング中に知覚過敏が発生した場合は、使用を中断し、歯科医院に連絡してもらうことをお伝えします。強い症状が出ている場合は、知覚過敏処置を行う必要があるため、歯科医院を受診してもらう可能性も事前にお伝えしておいた方がいいでしょう。
自宅編
① ブラッシングを行う
口腔内にプラークが付着している状況では、ホワイトニングの効果が十分に得られません。また、プラークが付着したままトレーを長時間装着していると、細菌の温床になってしまう可能性もあります。
トレーの装着前には、歯ブラシや歯間ブラシ、フロスを使用して、しっかりとブラッシングを行ってもらいましょう。
② トレー内にホワイトニングペーストを注入
1歯につき米粒2つ分を目安に、ホワイトニングペーストをトレーに注入します。
③ トレーの装着
正しい向きでトレーを装着します。
ホワイトニングペーストがトレーからはみ出たまま放置していると、はみ出た部分の歯肉が白色化してしまいます。はみ出てしまった場合は、素早くティッシュでふきとってもらうように注意しましょう。
④ トレーをはずし、うがいとブラッシングを行う
トレー装着から2時間が経過したら、トレーをはずし、十分にうがいを行ってもらいます。
その後は、研磨剤による歯面の損傷をさけるため、歯磨剤をつけずにブラッシングを行うようにお伝えしましょう。
⑤ トレーの清掃
トレーは、口腔内で使用したブラシとは別のブラシで清掃します。その際、食器洗い用の中性洗剤や石けんを使用すると、トレーを清潔に保つことができます。
40度以上のお湯は、トレーを変形させてしまうおそれがあるため、かならず常温以下の流水下で清掃してもらうことをお伝えしてください。
⑥ 専用ケースに保管
専用のケースに、トレーを乾燥させた状態で保管します。
ホワイトニング直後は、エナメル質表面のペリクルが除去されるため、この状態でフッ化物を作用させると、歯面に取り込みやすくなります。
清掃後のトレーに、高濃度のフッ化物入り歯磨剤(1450ppm)を注入し、さらに30分ほど装着してもらうと、歯質強化と知覚過敏の予防が一度にできます。
知覚過敏の症状が出やすい患者さんにはオススメの方法です!
⑦ 歯科医院でホワイトニング効果の確認、歯面清掃
患者さんがホームホワイトニングを開始してから、可能であれば1週間、もしくは2週間で歯科医院に来院してもらい、ホワイトニング効果の確認を行います。
このとき、歯面清掃・研磨を行い、口腔内写真を撮影して術前の状態と比較します。
患者さんへの注意事項
海外製品も含めると、ホームホワイトニング材にはたくさんの種類があります。
中には、高濃度の過酸化尿素が含まれている製品であっても、ウェブ上で簡単に購入することができてしまいます。
しかし、海外のホームホワイトニング製品は日本人向けに作られていないため、日本人にとっては刺激を強く感じてしまう製品も多く存在しています。
日本人は欧米人に比べエナメル質が薄く、知覚過敏の症状が出やすい人種です。そのため、患者さんがむやみに購入しないよう注意する必要があります。
患者さんの満足が得られないときは?
1日2時間、2週間のホームホワイトニングで患者さんの満足が得られない場合、トレーの装着時間をのばしたり、期間を延長したりすることを検討します。
ただし、知覚過敏が発生しないかどうか確認しながら慎重に行う必要があるため、まずは装着時間を1時間ずつのばしていくことから提案してみるといいでしょう。
海外のホームホワイトニング製品の多くが、オーバーナイト(睡眠時の8時間程度)でトレーを装着することをすすめています。
そのため、患者さんの自己責任であることを前提に、知覚過敏などのリスクも説明した上であれば、時間や期間をのばすことは可能ではないかと私は考えます。
また、ホームホワイトニングとオフィスホワイトニングを併用することで、歯が白くなるスピードが上がり、効果も実感しやすくなります。ホームホワイトニングで患者さんの満足が得られない場合は、オフィスホワイトニングの提案もしてみましょう。
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自費治療であるホワイトニングを受ける患者さんは、口腔の健康に対する意識が高い方が比較的多いように思います。
そんな患者さんだからこそ、「かならず白くなりたい」という気持ちだけでなく、「歯を白くするにはどうすればいいのか」、「自分の歯は白くなるのか」といった、さまざまな疑問をお持ちです。
歯科衛生士として、患者さんのあらゆる疑問に答えられるよう、ホワイトニングの基本となる知識を身につけておきましょう。
次回は「ホームホワイトニング材の種類」について詳しく解説します♪
参考資料:東光照夫・古川匡恵(2011)『ホワイトニングに強くなる本』久光久監修,クインテッセンス出版株式会社
『ホワイトニングコーディネーター講習会テキスト(第9版)』日本歯科審美学会
ホワイトニングの基礎知識
vol.1 ホワイトニングとは
vol.2 オフィスホワイトニングとは
vol.3 オフィスホワイトニングの種類
vol.4 ホームホワイトニングとは