歯科衛生士向けおすすめ論文 No.21「アメリカの歯科衛生士が行うインプラントメインテナンスとは?」

歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?

歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。

ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?

「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。

このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!

歯科衛生士向けおすすめ論文

インプラントのメインテナンス方法について調べた論文

今回解説するのはこちらの論文です。

インプラントメンテナンスに関する歯科衛生士の知識:全国調査
『Journal of Dental Hygiene』

この調査は、アメリカの歯科衛生士を対象にした、インプラントのメインテナンス方法についてのアンケート調査です。

アンケート内容は、インプラントメインテナンスで評価する項目や使用器具に関するもの。

インプラントメンテナンスに関する歯科衛生士の考えや実践内容を調べるために行われました。

アメリカの歯科衛生士

どんな方法で調べている?

まずは、歯科衛生士を対象として、34の質問を含んだアンケートが作成されました。

その後、アメリカ歯科衛生士協会(ADHA)のデータベースからランダムに選択された10,000人の歯科衛生士に、メールでアンケートを送信。

回答率は21%でしたが、合計2,018人もの歯科衛生士がアンケートに参加しました。

回答者のほぼ半数がインプラント周囲のプラーク除去に苦戦!

今回の調査によると、回答者の98%がインプラント患者にメインテナンスを提供しているとのこと。

中でも、回答者のほとんどが「定期的に評価している」と答えたのは、以下の項目です。

  • インプラント周囲の出血および滲出液の有無
  • 動揺度
  • プラークや歯石の有無
  • インプラント周囲組織の色

一方で、回答者の34%はメインテナンス時、インプラント周囲の残存セメントの評価を「めったに行わない/行わない」と回答し、31%はプロービングを「めったに行わない/行わない」、54%は咬合の確認を「めったに行わない/行わない」と回答しました

さらに、回答者のほぼ半数である44%は、インプラントのクリーニングについて「天然歯と同じように効果的なプラークを除去ができなかった」と回答するという結果に。

インプラントメインテナンス時に行う評価項目(『Journal of Dental Hygiene』を元にdStyle編集)
インプラントメインテナンス時に行う評価項目(『Journal of Dental Hygiene』を元にdStyle編集)

また、インプラントに対してプラスチックスケーラーを使用している人は60%と過半数を占めましたが、効果的だと感じている人は7%しかいなかったとのこと。

反対に、エアアブレージョンを使用している人はわずか5%でしたが、その71%が効果的だと感じていました。

この研究に対する考察

今回の調査では、アメリカの歯科衛生士における、インプラントメインテナンスの実態が明らかになりました。

とってもリアルな調査結果ですよね。

中でも、約3割の歯科衛生士がプロービングを行っていないという結果には驚きました。

インプラントのプロービングについては、「行ってはいけない」という概念にはじまり、「プラスチックorチタンプローブならOK」、「ステンレスでもOK」というように、時代に合わせて変遷を遂げてきました。

そのため、ひと昔前に比べると、インプラントにプロービングを行っている歯科医院はかなり増えてきているのではないかと思います。

一方で、現在でも「上皮性付着をはがしたくない」という理由で、とくに炎症の兆候がなければ「プロービングを行わない」という方針の歯科医院もあるでしょう。

また、咬合の確認については、「主治医に確認してもらう時間がない」のか「必要だと感じていない」のか、どういった理由で半数以上もの歯科衛生士が行っていないのかが気になるところです。

いずれにしても、自分自身が納得できる理由をもった上で、患者さんからの同意や理解を得られていれば、メインテナンスの方法に正解、不正解はないのではないかと思います。

みなさんもぜひ一度、自分自身のメインテナンス方法を振り返ってみてくださいね♪

インプラントメインテナンス

***

毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。

自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです。

参考文献:Zellmer IH, Couch ET, Berens L, Curtis DA. 「Dental Hygienists’ Knowledge Regarding Dental Implant Maintenance Care: A national survey.」『Journal of Dental Hygiene』2020 Winter;94(6):6-15.

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