チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩 第1回 歯を守るための栄養指導

こんにちは!歯科衛生士の山本典子です。

皆さんは今、自分は健康だという自信はありますか?

日々の生活の中で、疲れがなかなか取れなかったり、お天気が悪くなると頭痛がしたり、貧血ぎみであったりしませんか?

私たちの体は、私たちが食べた物でできています。

目の前にいる患者さんに「体調が悪そうだな?」とか「疲れていそうだな?」と思われたら、健康のお手伝いをする医療従事者として説得力がありませんよね。

私は、歯科衛生士として働いている皆さんが、まず健康であってほしいと思っています。

今回の連載では、患者さんへの栄養指導に必要な知識だけでなく、ご自身の健康にも役立つ情報をお伝えしていきます。

むし歯や歯周病を予防するための栄養指導

皆さんは、患者さんの口腔内にプラークがべったりついているのにカリエスがなかったり、反対に清掃状態はあまり悪くないのに、すぐにカリエスを作ってしまったりする人がいることを不思議に思ったことはありませんか?

これは歯周病にも言えることで、清掃状態が悪いのに骨がほとんど吸収されていない人もいれば、清掃状態が比較的良いと思うのに骨吸収が大きい人もいます。

最初は、「今日だけしっかり磨いてきたのかな?」と思っていましたが、それだけでは説明できない状態の人がたくさんいました。

そんなとき、患者さんの栄養状態に目を向けてヒアリングをすると、納得できることが多くありました。

先述した通り、私たちの体は、私たちが食べた物でできています。その食べ物はまず口腔内に入り、咀嚼されます。口腔内の唾液の中には消化酵素(アミラーゼ)が含まれており、糖質を分解していきます。

そして、胃に進むと胃液の中に含まれるタンパク質を分解する消化酵素(プロテアーゼ)や脂質を分解する酵素(リパーゼ)が働き、それぞれタンパク質、脂質を分解し腸に運ばれ、主に小腸で栄養が吸収されます。

つまり、栄養をしっかり体に届けるためのスタートは、口からはじまっているのです。

このスタートで何かしらのつまずきがあると、体にしっかり栄養を届けられなくなるリスクが高くなってしまいます。

たとえば唾液の分泌が少ないと、それだけ唾液に含まれる消化酵素の分泌も少なくなり、消化が不十分になります。

胃液には糖質を分解する消化酵素がありませんから、結果として、未消化のまま小腸に運ばれてしまいます。これでは、体が栄養素として糖質を十分に吸収することができません。

では、どうすれば消化酵素の量を増やせるでしょうか?

実は、消化酵素はタンパク質でできています。つまり、体の中にタンパク質が不足していると、作られる消化酵素の量が減ってしまいます。

それでは、歯は何でできているでしょう?歯肉は何でできているでしょう?

こうして考えていくと、材料がなければ、必要なものを作ることができないことが分かりますよね!

歯科衛生士として、患者さんへ「むし歯や歯周病にならないためにブラッシングをしっかりしましょう。」と伝えたり、スケーリングやSRPを行ったりしていると思います。

しかし、違う視点から見ると、細菌が出す酸に負けない強い歯質や、歯肉に炎症を起こさせない免疫力をつければ、患者さんの口腔内はさらに健康に近づくと思いませんか?

「栄養指導」と聞くと、サプリメントを売らなければならないのかな?と不安に思う方もいるかもしれませんが、サプリメントを売ることが目的ではありません。

栄養指導の延長線上にはサプリメントを使った方が良いこともありますが、まずは、私たちが患者さんの口腔内の変化に気づき、患者さんにそれをお伝えすることからはじめましょう!

次回は、口腔内を診るときのポイントをお伝えします。