歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?
歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。
ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?
「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。
このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!
キシリトール製品の有効性について調べた論文
今回解説するのはこちらの論文です。
小児および成人のう蝕を予防するためのキシリトール含有製品
『Cochrane Database of Systematic Reviews』
こちらの論文は、イギリスに本部をおく「コクラン」という団体がもつ膨大なデータベースの中で、とくに信頼性が高い論文を集めて研究したシステマティックレビューです。
* システマティックレビューについては、こちらの記事で説明しています。
(参照:歯科衛生士向けおすすめ論文 No.5「歯磨剤の使用はプラーク除去に本当に効果的なの?」)
う蝕予防に効果的といわれており、スーパーやコンビニでも簡単に手に入れることができるキシリトール製品。
この論文では、キシリトール製品のう蝕予防効果について調べた研究を集め、その結果を分析しています。
どんな方法で調べている?
2014年までに発表された、小児および成人に対するキシリトール製品のう蝕予防効果を評価した研究から、信頼性の高いものだけを抽出。
その結果、計5,903名の被験者を対象とした10件の研究を選択し、詳しく分析しました。
そして、2人の著者がそれぞれの研究に対して、エビデンスの質を「高」「中」「低」または「非常に低」に分類。
一連のエビデンスの質は、研究や出版のバイアスリスクや、結果の矛盾、評価の精度などを考慮して評価されました。
キシリトールの有効性を立証するには不十分
選択された研究の中で、4,216名の被験者を対象にしたメインの研究では、10%キシリトール含有のフッ素入り歯磨材と、フッ素のみの歯磨材を比較しました。
この研究によると、10%キシリトール含有のフッ素入り歯磨材を2.5〜3年使用することで、フッ素のみの場合と比べて、う蝕を13%減少させる可能性があるといいます。
しかし、この研究結果は、同じ著者が同じ集団を対象に実施した2つの研究から得られたものであることから、バイアスリスクが高く、慎重に解釈する必要があるとのこと。
そのため、エビデンスの質としては「低」に分類され、他の研究についても「低」または「非常に低」に分類されたものばかりでした。
また、キシリトールの副作用については、10件中4件が「副作用はなかった」と示しており、残りの6件についても使用可能なデータの報告はなかったようです。
この研究に対する考察
今回の研究では、キシリトールの有効性について明確なエビデンスはないという結果が報告されました。
日々の臨床の中で、患者さんにキシリトールをおすすめしている歯科衛生士には驚きの結果だったかもしれません。
しかし、今回選択された10件の研究では、高濃度のキシリトール製品は使用されていませんでした。
一般的に、キシリトールガムやタブレットなどの食品においては、キシリトール含有率が50%以上だと効果があるといわれています。
一方で、市販品には50%に満たないものがたくさんあり、歯科専売品で「キシリトール100%」とうたっていても、実際には100%でないものも。
上記の計算式に基づいて、患者さんに本当におすすめできる製品だけを選んでみてもいいかもしれませんね♪
一般の方でも一度は耳にしたことがある成分だからこそ、今後の研究が待ち望まれます!
次回は高濃度のキシリトールの効果についても紹介します♪
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毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。
自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです。
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