2014年4月に小臼歯部へのCAD/CAM冠が保険適用されてから、早くも7年半が経過しました。
2020年9月には、CAD/CAM冠の適用範囲が前歯部にまで広がり、日本でもメタルフリーが当たり前の世界になる日が近づきつつあるのかもしれません。
今回は、今後ますます活用の場が広がるCAD/CAM冠について詳しく解説しますよ♪
そもそもCAD/CAMってどんなシステム?
CAD/CAMとは、Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturingの略で、「コンピュータ支援設計/コンピューター支援製造」と直訳することができます。
これを簡単に言いかえると、コンピュータを用いて製作物の設計、製造することを指します。
CAD/CAMシステム自体は、歯科よりも前から製造業や建築業などで多く活用されてきました。
それぞれが専用のソフトを用いて設計を行い、その設計をもとに工事を行ったり、3Dプリンタなどを用いて製造を行ったりします。
たとえば従来、建築の設計は、現場で働く職人が手書きで図面を書いていましたが、CADシステムが普及したことにより、コンピューターの専用ソフトを扱える人であれば、誰でも簡単に図面を作成できるようになりました。
歯科でもこのように、今まで歯科技工士が一点ずつ作製していた補綴物を、コンピューターによって設計し、製造までを行うことが可能になりました。
そして2014年、歯科用金属の価格がますます高騰している背景もあり、ついにCAD/CAMシステムを用いた補綴物が保険適用になったのです。
CAD/CAM冠の材質は?
「CAD/CAM冠」という名称自体は、診療報酬の算定項目としてでてくる専門用語で、一般的に「ハイブリッドレジン冠」のことを指します。
ハイブリッドレジン冠とは、セラミックとレジンを組み合わせて作った材料です。
ただし、オールセラミックやジルコニア、チタンなどの材料の補綴物も、CAD/CAMシステムを用いて補綴物を作製することが可能です。
また、ハイブリッドレジン冠を保険適用外の部位に、自費診療として装着する歯科医院もあります。
そのため、「CAD/CAM冠」というと、具体的にどんな補綴物のことを指すのかわからないという方もいるのではないでしょうか。
カルテ上ではあくまでも、保険適用を許可された材料で、保険適用部位に装着される補綴物のことをCAD/CAM冠とよぶということを、おさえておきましょう!
CAD/CAM冠の保険適用範囲について
冒頭でもお伝えした通り、CAD/CAM冠が初めて保険適用されたのは2014年。
当時は小臼歯部のみでしたが、その後の改定を重ね、現在は大臼歯部や前歯部にまで保険が適用できるようになりました。
CAD/CAM冠の保険適用範囲の変遷について、以下にまとめました。
年月 | 内容 |
---|---|
2014. 4 | すべての小臼歯部に保険適用となる |
2016. 4 | 金属アレルギーをもつ患者の大臼歯部に適用可能となる |
2017.12 | 第二大臼歯がすべて残存し、過度な咬合圧が加わらない場合は、下顎第一大臼歯に適用可能となる |
2020. 4 | 第二大臼歯がすべて残存し、過度な咬合圧が加わらない場合において、上顎第一大臼歯にも適用可能となる |
2020. 9 | 前歯部に適用可能となる |
CAD/CAM冠の硬さや曲げ強さといった特徴は、前歯部、小臼歯部、大臼歯部でそれぞれ異なります。
それに伴い、使う材料の種類や装着時の点数も部位によって変わります。
実際にどんな製品が使われている?
現在、さまざまなメーカーから保険適用の材料が販売されています。
中でも、CAD/CAM冠の材料としてよく使われている製品は、以下の通りです。
- カタナ®︎アベンシア®️(クラレノリタケデンタル株式会社)
- セラスマート(株式会社ジーシー)
- 松風ブロックHC(株式会社松風)
- エステライト(株式会社トクヤマデンタル)
- KZR-CAD HRブロック(YAMAKIN株式会社)
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いかがでしたか?
診療報酬改定があると、歯科医療従事者として覚えておくべき新しい用語やシステムもおのずと増えます。
歯科衛生士や歯科助手が、患者さんから補綴物の相談をされる機会は少なくないはず。
患者さんに自信をもって説明できるよう、メジャーな治療についてはしっかりと理解しておきましょう。
参考文献:保険診療におけるCAD/CAM冠の診療指針-公益社団法人日本補綴歯科学会
保険診療におけるCAD/CAM冠の診療指針 2020-公益社団法人日本補綴歯科学会