歯科医院のチーム力を高めよう!vol.3 チームや個人でOKRを設定する方法

みなさんが働く歯科医院には、どのような目標がありますか?

歯科医院の中には、毎日の売り上げや新患数、キャンセル率など、さまざまな情報を数値化して目標を立てるよう指示されている医院もあれば、とくにこれといった目標を立てることなく診療している医院もあるかもしれません。

一方で、目標を立てたいと考えていても、「どんな」目標を「どうやって」立てればいいかわからない方もいるのではないでしょうか。

世界的に有名な大企業やスタートアップ企業が、会社全体またはチーム、個人の目標を設定する際に使用する「OKR」。

この連載では、OKRについて詳しく解説し、歯科医院におけるOKRの活用方法をご紹介します!

前回までの記事はこちら

vol.1 目標達成の方法『OKR』とは?
vol.2 歯科でOKRを活用するには?

歯科医院のチーム力を高めよう!

歯科医院全体でOKRを導入する前にすべきこと

前回は、歯科医院でOKRを活用する方法について説明しました。
(参照:歯科医院のチーム力を高めよう!vol.2 歯科でOKRを活用するには?

文章で説明すると簡単に聞こえますが、実際に歯科医院全体で共通の目標を達成しようとするには、そこで働くスタッフ全員の協力が必要です

何からはじめればいいのかわからなかったり、大規模な歯科医院だと簡単にははじめにくかったりすることもあるかと思います。

そんなときは、歯科医院全体でOKRを導入する前に、はじめは小さいチームから導入することをおすすめします。そうすると、全体で取り組んだときも失敗しにくくなるといわれています。

歯科医院でいうと、「歯科衛生士のみ」「歯科助手のみ」というようなチームです。

ベテランから新人まで幅広い層が一緒に働いている場合であれば、同期だけ、新人だけではじめるのもいいでしょう。

チームとして取り組むことがむずかしければ、一個人として取り組むのも一つの方法です。

チームとしての課題を考える

チームでOKRを活用する場合も、現在そのチームが抱える問題を把握することからはじめます。

たとえば、以下のような3つの問題を抱える歯科衛生士チームがあったとします。

  1. メインテナンス患者さんのプラークコントロールが悪い
  2. SRPに移行してから治療を中断する患者さんが多い
  3. ホワイトニングを導入したのに、受けてくれる患者さんが少ない

それぞれの問題を解消するためには、「患者さんのプラークコントロールを向上させること」や「患者さんにSRPの重要性を認識させること」、「ホワイトニング治療のPR」を行う必要があります。

これまでにも説明したように、OKRのObjectiveには、人をワクワクさせるようなこと、そして数字で表せないことを設定しなければいけません

上記の問題を解決するためのObjectiveとしては、以下のような例が挙げられます。

  1. 患者さんの口腔内の健康を守りつづける
  2. 歯周病患者さんに喜んでもらえるような治療を提供する
  3. 患者さんに白くて健康な歯を手に入れてもらう

そしてこの中から、チームにとってもっとも優先したい目標を選びます。

今回は、「① 患者さんの口腔内の健康を守りつづける」をObjectiveとして設定するとします。

Objectiveが決まれば、次は「Key Results(KR)」です。

「① 患者さんの口腔内の健康を守りつづける」というObjectiveを達成できたかどうかを判断するKRとしては、以下のような項目が考えられます。

  • リコール時のPCRを20%以下にする
  • リコール率を80%以上にする
  • 歯間清掃具の使用率を70%以上にする

そして、毎週の振り返りでは、それぞれの項目を達成できそうかどうかについて、自分の自信度を1〜10で表します。

KRを設定した時点で、5くらいの自信度であれば良いKRです。

患者さんの口腔内の健康を守りつづける

はじめの1ヶ月で取り組むこと

ObjectiveとKey Resultsが設定できたら、次は今週やるべき最重要事項「P1」と「P2」を設定します。

先ほど設定したOKRを例にして考えると、以下のような項目が考えられます。

  • P1→リコール時に染め出しを行う、患者さんのセルフケア用品を確認する
  • P2→リコールはがきにDHのコメントを書く、PCR20%以上の患者さんには必ずTBIを行う

今週のP1とP2が設定できたら、来週から4週間のうちに起こってほしいことや、今後進める予定になっている最重要事項を設定します。

例としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 物販の見直し
  • 患者さんに適切なセルフケア用品を処方する
  • リコールの連絡方法を増やす
  • プラークコントロール不良な患者さんのSRPを行う

また、健康・健全性の項目については前回と同様に、以下の2つを挙げました。

  • スタッフの健康
  • 患者さんとの関係性

毎週のミーティングの流れは、前回の記事でお伝えした通りです。
(参照:歯科医院のチーム力を高めよう!vol.2 歯科でOKRを活用するには?

以上のことをふまえてOKRの表を作ると、以下のようになります。

DHチームの目標

個人で取り組む場合はどうする?

OKRにチームで取り組むこともむずかしいと感じる場合は、個人で取り組むことを考えてみましょう。

まずは自分が3ヶ月後にどうなっていたいかということを考えます。

歯科医院の中でどのような存在になりたいか歯科衛生士としてどのようになりたいかなど、目標を立てられるならなんでもOKです!

「1年後はこうなっていたい」ということを先に考え、そこから逆算して3ヶ月後の目標を考えるのも良いかもしれません。

たとえば、私は歯科衛生士2年目になったとき、「この1年で勤務先で行っている6種類の歯周外科の術式を覚える!」という目標を立てました。

当時のことを今振り返ってみると、以下のようなOKRを設定できたのではないかと考えます。

O:歯周外科の適応症を理解し、患者さんの歯を救う!
KR:2名の担当患者さんに、適応する歯周外科を受けてもらう
KR:オペ後2ヶ月までに術部のPCRを0%にする
KR:術前術後の経過についてのプレゼンを1つ作成する

上記のKRを達成するために、1週間で行うべきP1とP2は以下の通りです。

P1→終業後30分は歯周外科の書籍を読む、適応症の患者さんに歯周外科の説明を行う、先輩のアシストを見学する
P2→先輩が過去に携わった歯周外科のケースを見る

また、4週間後のプロジェクトとしては、以下のことを挙げました。

● 歯周外科のアシストに1回つく
● 2種類の歯周外科の準備ができるようになる
● 院長にアシストについてのフィードバックをもらう
● プレゼン作成に着手する

このOKR中の健康・健全性をチェックするには、以下について評価します。

★ 体調
★ 担当患者さんの健康
★ 術部の状態

ここでは自分自身の体調だけでなく、外科処置を受ける患者さんの全身的な状態や、精神面での不安についても評価します

また、術部の状態についても、術前術後において理想的な環境が築けているか確認します。

以上のことをふまえてOKRの表を作ると、以下のようになります。

DH2年目の目標

このように自分自身の短期的な目標であれば、OKRに取り組むのが初めてでも、少し気軽な気持ちではじめられるのではないでしょうか。

毎週の振り返りは自分一人で行っても良いと思いますが、院長やチーフなどにフィードバックできる環境があると、より目標達成に近づけるのではないかと思います。

***

来院する患者さんに安心して治療を受けてもらうためにも、歯科医院で働くスタッフがひとつのチームとなって診療に取り組むことは非常に重要です。

ぜひOKRを活用し、歯科医院の目標についてスタッフ全員で共有しましょう♪

次回は、歯科医院でOKRを活用するメリットについて解説します。

参考文献:クリスティーナ・ウォドキー著, 二木夢子訳, 及川卓也解説(2018)『OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』日経BP

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