歯科衛生士向けおすすめ論文 No.17「新型コロナウイルスにクロルヘキシジンやポピドンヨードの洗口は有効？」

歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか？

歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。

ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか？

「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。

このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます！

歯科衛生士向けおすすめ論文

新型コロナウイルスに対する2種類の洗口剤の有効性について調べた論文

今回解説するのはこちらの論文です。

唾液中の新型コロナウイルスに対するクロルヘキシジンおよびポビドンヨード洗口剤の殺ウイルス効果におけるin vivo評価－無作為化対照臨床試験の結果
『The journal of evidence-based dental practice』

新型コロナウイルスの感染拡大にともない、口腔内に存在する細菌やウイルスを減少させることを目的に、治療前の患者さんに対して洗口を促す歯科医院が増加しました。

この研究は、そういった対応が本当に必要かどうか、すなわち唾液に含まれる新型コロナウイルスに対して、クロルヘキシジンやポピドンヨードの洗口剤は有効であるかということについて調べています。

ちなみに、「in vivo」とは「生体内」と直訳され、生きた人間の体で行われる研究のことを指します。これに対して「生体外」と直訳される「in vitro」は、人工的に作られた環境の中で行われる研究のことを指します。

この研究では、新型コロナウイルスの陽性患者61名を被験者とし、3つのグループに分けました。

それぞれのグループに、蒸留水・0.2％クロルヘキシジン・1.0％ポピドンヨードを割り当て、30秒間洗口を行うよう指示。その後、洗口前と洗口5分後に被験者の唾液を採取し、リアルタイムPCR検査を行いました。

新型コロナウイルスにクロルヘキシジンやポピドンヨードのうがいは有効？

今回の研究結果によると、0.2%クロルヘキシジンと1.0％ポピドンヨードで洗口した2つのグループは、蒸留水で洗口したグループに比べると、新型コロナウイルスの量が有意に少ないことがわかりました。

また、洗口前後の比較についても、2種類の洗口剤ともにウイルスは有意に減少。

蒸留水においては、洗口前後でウイルスの量に有意差はなかったといいます。

＊有意という言葉については、前回の記事で説明しています。こちらをご覧ください！
（参照：歯科衛生士向けおすすめ論文 No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき？」）

今回の研究では、クロルヘキシジン、ポピドンヨードともに、唾液中の新型コロナウイルスを減少させる効果があるということがわかりました。

よって、0.2％クロルヘキシジンおよび1.0％ポビドンヨードは、歯科治療前において効果的な洗口剤であるということが示されています。

日々の臨床において、新型コロナウイルスの院内感染防止策としては有効な方法であるため、現在処置前の洗口を促していない歯科医院は、導入を検討してもいいかもしれません。

しかし、現在日本で販売されているクロルヘキシジン含有洗口剤の濃度は0.05％。使用時にはさらに水で希釈するため、0.01％程度の濃度になってしまうといわれています。

今回の研究に用いられているクロルヘキシジンとは濃度が大きく異なるため、1.0%ポピドンヨードを使用した方が院内感染を防止できるかもしれません。

一方で、どちらの洗口剤を使用しても唾液中のウイルス数は減少するという結果は出ているものの、全身のウイルス量が減少するということはまだ実証されていません。

患者さんの咳やくしゃみからの飛沫感染にはくれぐれも注意しましょう。

飛沫感染に注意

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毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。

自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです。